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大阪府立中央図書館 国際児童文学館 資料展示「絵本の国の赤ずきん~グリム童話出版200周年記念」 解説

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更新日:2017年11月1日


「赤ずきん」とは?

「赤ずきん」は昔話です。いろいろな国や地方で語り継がれてきたものがありますが、フランスのシャルル・ペローの再話(17世紀)とドイツのグリム兄弟の再話(19世紀)が有名です。
おばあさんのお見舞いに行くために森を抜けた赤ずきんは、狼に出会います。狼はおばあさんの家に先回りをしておばあさんを食べ、赤ずきんを待ち受けます。ペロー作品では赤ずきんが狼に食べられて終わりますが、グリムの昔話では、赤ずきんが食べられた後、猟師がやってきて赤ずきんとおばあさんを救います。また、グリムの昔話では、冒頭でお母さんが、寄り道をしないようにと言います。
一方、ペローが影響を受けたとされる元の話では、女の子は、おばあさんの肉を食べ、小さな動物にそのことを教えてもらいます。また、女の子は赤いずきんはかぶっておらず、狼に排泄をしたいと言って逃げ出します。

世界の「赤ずきん」

「赤ずきん」は、世界中で知られており、さまざまな画家が絵本化をしています。多くの作品はペローまたはグリムを原作としていますが、『かわいいサルマ』のようにアフリカの赤ずきん話も絵本化されています。また、オオカミから逃れる3人の娘の物語である中国の昔話『ロンポポ』もあります。
今回は、ドイツ、スイス、イギリス、フランス、ロシア、アメリカ合衆国、韓国などの作品を紹介しています。国や地域、時代によって赤ずきんの年齢や表情、狼の描かれ方に違いが見られ、「赤ずきん」の多様な解釈となって現れています。例えば、バーナデット・ワッツが描く幼い赤ずきんであれば、かわいい赤ずきんが猟師の助けを得られて助かった喜びが、ツヴェルガーが描く10代の赤ずきんであれば、あの手この手で誘うオオカミにだまされた真面目な少女が陥る危険が描かれます。

日本の画家による「赤ずきん」

日本で最初に紹介された「赤ずきん」は明治初期(19世紀後半)の英語の教則本と言われていますが、現在発見できている日本で最初の翻訳作品は、1902(明治35)年、女性向けの雑誌「女鑑」に掲載された「ロテケツペン」(佐藤天風訳)で、グリムの翻訳です。そして、それ以降、グリムやペローの再話が何度も紹介されました。1960年ぐらいまでは赤ずきんが西洋の娘であるということを強調する絵が多いことが特徴的ですが、1960年以降の作品では、画家が自由に赤ずきん像やオオカミ像を解釈して絵で物語を語ろうとしている様子が読み取れます。ポップアートの手法を使ったり、ペローとは別のフランスの昔話からの再話を絵本化したり、新しい「赤ずきん」像を紹介しようという意欲が感じられます。

「赤ずきん」のパロディ

昔話が心理学的に分析される研究が進み、そのメッセージ性が強く意識されることによって、メッセージを現代的な意味に移し替えたり、逆転させたりする試みの作品、つまりパロディ作品が多く生まれました。
「赤ずきん」では、ペローが生み出したともいえる「赤」がお話の中で強く印象に残ります。「赤」には、太陽、血、初潮、ワインの色などさまざまな象徴が読み取れるからです。そこで、パロディの中には、ロダーリの『黄色ずきん』のように、ずきんの色を変えた主人公の本も出版されています。
また、オオカミより頭のよい少女像を描き、昔話の教訓を生かしてオオカミをやっつける『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』やロアルド・ダールの「赤ずきん」があります。加えて、怖いオオカミ像を転換させた『赤ずきんのほんとうのお話』や、オオカミに襲われるのは女の子ばかりではないとばかりに、主人公を男の子にした『こわがりハーブ えほんのオオカミにきをつけて』やThere Are No Scary Wolvesもあります。


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