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「はらっぱ」 No.31 国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.31 国際児童文学館 イベント紹介

掲載日:2018年3月31日更新

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

 平成29年、国際児童文学館では、子どもの本に関する講演会や貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催した。ここでは、その中からいくつかをとりあげて紹介したい。これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページに掲載している。併せてご覧いただきたい。
【大阪府立中央図書館 国際児童文学館 イベント情報】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

アフリカを知ろう! 国際児童文学館 絵本原画展・講演会・ワークショップ

 平成29年の夏は、子どもの本を通してアフリカに出会うイベントを実施した。

●愛しきアフリカ ―絵本『ニジェール物語』原画展―

 平成29年7月4日(火)~8月6日(日)、国際児童文学館室内小展示コーナーにおいて、絵本『ニジェール物語』の原画展を、一般社団法人ニジェール物語製作委員会との共催で開催した。絵本の各場面の文章と共に、原画を計15点展示。ニジェールに滞在経験のある作者フクダヒデコさんによる文章と、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展2015入賞作家イヌイマサノリさんの原画は、ニジェールの美しい大地をイメージさせた。8月6日(日)には、フクダヒデコさんによるギャラリートークを実施し、11人の参加者がニジェールでのエピソードや絵本を製作した思いに聞き入った。
 会期中はアフリカ関連の所蔵資料を「アフリカのおはなし」「アフリカはどんなところ?」「現地の言葉の本」等の4つのテーマに分け、室内の各所で展示した。また、こども資料室や小説読物室でもアフリカをテーマに関連展示を行い、図書館全体でイベントを盛り上げた。

●タンザニアの絵本作家キラカさんがやってくる!

 ティンガティンガ・アートの手法を使って絵を描き、多くの国で翻訳出版されている、タンザニアの絵本作家ジョン・キラカさんを招き、講演会とワークショップを一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団(以下、「大阪国際児童文学振興財団」)との共催で開催した。

▼国際講演会「タンザニアの絵本作家ジョン・キラカ自作を語る-バオバブの木の下で」

 7月29日(土)の講演会(通訳 松下宏子さん)では、83人の参加者を得た。絵を描くのが好きだった幼少期について、ティンガティンガ・アートとの出会い、近代化が進んで失われていく口承文学への思いなどが語られた。参加者の「ティンガティンガ・アートを学ぶ前はどんな絵だったか」「なぜ絵本を書こうと思ったか」等の質問にも熱心に回答され、最後に最新刊『ごちそうの木』のストーリーテリングがフィパ語で行われた。

▼ワークショップ「タンザニアの絵本作家ジョン・キラカさんと絵本を作ろう」
タンザニアの絵本作家ジョン・キラカさんと子どもたちが絵本を製作している様子の写真

 7月30日(日)、小学生を対象にワークショップを開催し、25人が参加した。自作絵本『いちばんのなかよし』のスワヒリ語によるストーリーテリングから開始。子どもたちが自由に2匹の動物を選び、「ケンカをして仲直りをする」等の筋書きで3場面の絵本を製作した。参加者はキラカさんにティンガティンガ・アートの手法の説明を聞いた後、動物を自由にデフォルメした絵を描き、一人一人が全員の前で発表した。

街頭紙芝居イベント むかしの紙芝居を楽しもう!

 平成29年9月2日(土)、大阪国際児童文学振興財団と共催で多目的室にて開催し、55人の参加者を得た。

●街頭紙芝居実演

 塩崎おとぎ紙芝居博物館の紙芝居師である大塚珠代さん・古山千賀子さんに、街頭紙芝居を実演していただいた。会場に、自転車やのぼり、紙芝居のオリジナルテーマソングなどが持ちこまれ、にぎやかに「クイズ」から始まった。紙コップで作られたニワトリ人形が鳴き声で登場した『ブレーメンの音楽隊』、「関西マンガ界の伝説」とされる酒井七馬(左久良五郎)の作品『女忍者』、『原子怪物ガニラ』、ほのぼのとした『チョンちゃん』、臨場感あふれる『わんわん物語』と続いた。大人の方はなつかしそうに、子どもたちもうちわ太鼓で参加するなど街頭紙芝居の世界を楽しんでいた。
街頭紙芝居を楽しんでいる様子の写真

●展示

 実演1時間前に開場し、会場内に塩崎おとぎ紙芝居博物館作成の紹介パネルと当館所蔵街頭紙芝居のレプリカも展示し、自由にご覧いただいた。街頭紙芝居の歴史などもわかる展示となり、会場内の紙芝居師のお二人に質問される姿も見られた。
塩崎おとぎ紙芝居博物館作成の紹介パネルと当館所蔵街頭紙芝居のレプリカの展示の様子の写真

ワークショップ 「大人も絵本で考えよう!子ども部屋って何をするところ?」

 国際児童文学館では、児童文学・児童文化に関する高い専門性を有する外部の研究者等に、当館資料を活用しつつ運営にも協力していただく「専門協力員」制度を実施している。
 本イベントは平成29年12月2日(土)、「専門協力員」である住まいの絵本館(NPO法人子どもと住文化研究センター)の協力のもと、多目的室にて開催し、8人の参加を得た

●ミニ講義

 専門協力員の北浦かほるさんから、欧米と日本の親子関係の文化の比較を中心に、実際に外国に滞在し、研究された子ども部屋に関するスライドや絵本の中の具体的な例を基にご講義いただいた。
講義の様子の写真

●ワールドカフェ

 住まいに関する絵本を「自律」「信頼関係(親子)」「共生」の3つの分野に分けてテーブルに置き、参加者はそれぞれのテーブルにつき、「店主」のリードで絵本を読み、活発な議論が行われた。各班での議論が終わると、他の班のテーブルに移動し、様々な意見に耳を傾け、また、本来の自分の席に戻ってくる。次の段階になかなか移れないグループもあるくらい、自身の経験や考えを発言され、議論は熱心に繰り広げられていた。最後に全員が発言してのまとめとなった。
 前日からのキャンセルが多数あり、参加者は少なめだったが、楽しんでいただけたようだった。

小展示 「マンガを楽しもう! ウェブサイト「マンガのひみつ大冒険!」公開記念」

 平成29年4月1日(土)~6月28日(水)、室内小展示コーナーにおいて開催した。
 「マンガを楽しもう!」をテーマに、大阪国際児童文学振興財団が企画作成したウェブサイト「マンガのひみつ大冒険! おすすめマンガがいっぱい!!」(平成28年度子どもゆめ基金助成活動)に掲載のマンガの中から国際児童文学館所蔵作品を展示した。
 古くは、横山隆一『フクちゃん部隊』(昭和13年)から、新しいものは、あおきてつお『学習まんが 日本の歴史』(平成28年)まで81点を展示した。主な資料は、手塚治虫『鉄腕アトム』、武内直子『美少女戦士セーラームーン』、チャールズ M.シュルツ『スヌーピーのラッキーデイズ』、青山剛昌『名探偵コナン』、佐々木マキ『怪盗スパンコール』、池田理代子『ベルサイユのばら』など、いずれもマンガ史上の記念碑的な作品である。
 また、サイト内で紹介している作品の一部は、国際児童文学館内で自由に読めるようにした。懐かしそうに手に取る方が多く見られた。
 展示関連イベントとして5月31日(水)に、こども資料室おはなしのへやで、長新太、高野文子などマンガ家が描いた絵本のおはなし会を行った。その後、国際児童文学館内でギャラリートークを行い、実際にウェブサイトも体験してもらった。
国際児童文学館所蔵作品の展示の様子の写真

資料展示  茂田井武原画展<『きつねのおつかい』にみる物語絵の魅力>と関連イベント

 童画家・茂田井武(もたいたけし)の童話原画展と関連講演会を、中央図書館指定管理者 長谷工・大阪共立・TRCグループとの共催で開催した。

●資料展示

 平成29年8月22日(火)~9月18日(月・祝)、中央図書館1階展示コーナー及び国際児童文学館室内小展示コーナーにて開催した。
 茂田井武は、昭和31年に48歳で亡くなるまで多くの子ども向け雑誌や子どもの本に挿絵を描き、装丁も手がけた人物である。本展では、原画とあわせて当館所蔵資料から茂田井の業績を振り返るとともに、同時代に活躍し、茂田井が高く評価したと伝えられる絵本作家・小山内龍(おさないりゅう)にもスポットをあてた。
茂田井武原画展の様子の写真
 主な展示資料は、新美南吉童話『きつねのおつかい』(福地書店 昭和23年)の原画と未刊行原画(『新美南吉幼年童話集』昭和23年制作)から62点、国際児童文学館所蔵の貴重な刊行当時の絵本や絵雑誌等126点、茂田井、小山内が挿絵を発表した青年向け雑誌「新青年」の復刻版や貸出できる関連図書等81点である。
 なお、小山内の資料展示については内容を拡充し、「絵本作家・小山内龍 コグマとムシとそして海」と題して、室内小展示コーナーで10月31日(火)まで継続実施した。漫画家出身らしいコミカルな絵で動物たちの姿を描いた26作品のパネル展示の一角は、戦時中の作品であっても、見る者の気持ちを明るくする力があった。

●講演会「茂田井武の物語絵」(第1回府民講座)

 茂田井に関する編著書が多数ある、絵本研究家で作家の広松由希子さんの講演会を、平成29年8月26日(土)に、大会議室で開催し、87人が参加した。
 茂田井が最も活躍した時代は、童画の黄金期と言われる1920年代~30年代と、絵本の黄金期と言われる1960年代~70年代の谷間にある戦中・戦後の10年間であり、この時期に描いた物語絵(挿絵・物語を描く絵)に茂田井の神髄があると述べられ、時代をおって茂田井の代表作の特徴やエピソードを紹介された。茂田井の絵は尽きない言葉を今も語りかけてくるため、時代を越えて現在でも多くの絵本作家たちに影響を与えている、と具体的に絵を示しながら、茂田井の色褪せない魅力について話された。参加者は、茂田井の熱心なファンである人も、今回のイベントにより茂田井を知った人も、共感した様子で聴講していた。

資料展示 「ドイツの子どもの本の魅力-翻訳者 上田真而子の仕事-」と関連イベント

●資料展示

 平成29年11月10日(金)~12月28日(木)、中央図書館1階展示コーナーにて開催した。大阪国際児童文学振興財団に展示作品選択、解説執筆の協力をいただいた。
 上田真而子(うえだまにこ)さんは、『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ)、『あのころはフリードリヒがいた』(ハンス・ペーター・リヒター)など多数のドイツの子どもの本を翻訳し、日本の子どもの本にも影響を与えてきた。
 上田真而子さんから大阪府立中央図書館にご寄贈いただいた約500冊の中の貴重な本を紹介するとともに、上田真而子さんのこれまでの仕事を振り返る展示となった。
 主な展示資料は、『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ)の翻訳に使用されたエンデのサイン入り原書、絵本『マクスとモーリツのいたずら』(ヴィルヘルム・ブッシュ/文・絵 上田真而子/訳 岩波書店 1986)の草稿複製版をはじめ、翻訳本と原書をあわせて展示する中で、翻訳の過程の書込みなどもご覧いただいた。さらに同時代のドイツ児童文学翻訳者たちを代表的な作品とともに紹介し、国際児童文学館が新たに収集したドイツの子どもの本も展示した。また、中央図書館所蔵の関連資料も展示し、貸出にも供した。展示を見て、アンケートにご協力いただいた方には特製ブックカバーをプレゼントした。さらに、関連イベントとして、大阪国際児童文学振興財団主催の講演会が11月12日(日)に、おはなし会が11月26日(日)に実施された。

●講演会「ドイツの子どもの本の魅力-ブッシュ、エンデから現在まで-」

 大会議室にて、前半は「ドイツの子どもの本の魅力-翻訳を通して出会った作家・作品たち-」と題して、上田真而子さんより、後半は「ドイツの子どもの本-過去から未来へ-」と題して酒寄進一さん(翻訳家、和光大学教授)よりご講演いただいた。参加者は109人だった。

●おはなし会:ドイツのおはなし

 大こども資料室おはなしのへやで、おはなしポッポ(大阪国際児童文学振興財団ボランティア)の出演で実施し、10人の参加者を得た。
 なお、上田真而子さんは、本展示期間中12月17日に逝去されました。感謝の意を表しますとともに、謹んでお悔み申し上げます。
ドイツの子どもの本の魅力の資料展示の様子の写真


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