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「はらっぱ」 No.31 大阪府立中央図書館における調べ学習支援自由研究応援団について

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.31 大阪府立中央図書館における調べ学習支援自由研究応援団について

掲載日:2018年3月31日更新

大阪府立中央図書館 こども資料室

はじめに

 大阪府立図書館では、平成20年度より「大阪府立図書館の基本的役割と重点目標」を定め、平成22年度には「大阪の未来をつくる図書館を目指して」として、運営の柱となる5つの基本方針を定めた。児童へのサービスについては基本方針3に「大阪府立図書館は、府域の子どもが豊かに育つ読書環境づくりを進めます。」と定めた。また、レファレンスサービスについては、基本方針2「大阪府立図書館は、幅広い資料の収集・保存に努め、すべての府民が情報・知識に到達できるようサポートします。」のもとに、重点目標「図書館資料と検索技術に精通した職員(司書)の専門性を生かし、レファレンスや資料提供サービスを充実させます。」を掲げた。これらの基本方針の遂行と重点目標の達成のため、館内各課横断的な「レファレンス検討チーム」において、レファレンスサービス強化の取組みを検討した。その結果、こども資料室では、子どもたちが自ら調べようとする機運が高まる夏休みに「自由研究応援団」として、調べ学習支援のためのイベントを平成23年度から実施し、以降毎年継続してきたので、ここで報告する。なお、上記の基本方針は現在もほぼ同様に引き継がれている。

自由研究応援団以前のこと

 自由研究応援団の取組み以前にも、調べ学習支援のためのイベントはあった。平成20年度の夏休みには「図書館を使いこなそう!」として、7月25、26、31日の3日間、こども資料室の書架の案内やOPACを使った検索方法の説明などを行い、平成21年と22年度の春休みには、図書館クイズとして実施してきた。これらの取組みを元に「自由研究応援団」へと発展させていった。

ニーズの把握(アンケートの実施)について

 夏休みの宿題として、自由研究はどれぐらいの割合で出されているかなどを調査するため、平成24年度の夏休み期間中、平日の10時30分と14時にこども資料室の利用者に聞き取りによるアンケートを実施し、107名から回答を得た。結果は次の通り。
<学年別調査人数>
学年別調査人数の表

<自由研究(調べもの)の宿題の有無>
 工作なども含めると、96人(89%)が宿題として自由研究が出されたと回答。調べ学習支援の需要は高いことが伺えた。
 上記96人のうち、図書館の資料を使ったのは、31人(約32%)。司書に聞いたのは、34人(約35%)。図書館以外では、他施設での体験を宿題に活かすケースや、工作キットなどの利用が多いようだった。図書館の資料を使った例では、戦争や平和に関すること、動物や天体などの自然に関することが多く、また、近隣中学校の宿題で出された、47都道府県に関する調査も多かった。

自由研究応援団の内容について

 平成23年度は、全学年対象とした構成だったが、理解度の面から1年生から6年生までを一度にまとめて実施するのは難しいことがわかった。そこで、平成24年度からは、学校で辞書引きを学習する3年生を区切りとし、1・2年生対象と3年生から6年生対象に分けて実施することにした。以下が各年度の内容である。
 なお、実施日は、利用者が参加しやすい土曜日、日曜日に設定した。

<平成23年度>
全学年対象(2部構成)
第1部:
・百科事典の引き方の説明を行った後ワークシートで実際に子どもたちに百科事典を引いてもらい、回答と解説を行う。
・分類クイズ(「ハムスターの飼い方の本はどこにある?」など)
・こども資料室のフロア探検とOPACの検索方法の説明。
第2部:子どもたちの個々のレファレンスに応える質問コーナーを設置。

<平成24年度>
小学1・2年生対象「辞書引きにチャレンジ!」
・紙芝居『百科事典のひきかた』(赤木かん子/文 きしらまゆこ/絵 埼玉福祉会商品事業部 2011.3)を読み、百科事典について理解を深める。
・辞書引きにチャレンジ!…国語辞典の引き方をワークシートにそって解説、壁面に掲示した言葉から気になる言葉を選んで実際に引いてもらう。(辞書引きをサポート。辞書の言葉を写してもらう。)
辞書引きにチャレンジ!の様子の写真
・目次をマスターしよう!…絵本『くだものなんだ』(きうちかつ/さく・え 福音館書店 2007.4)読み聞かせ後、『くだもの王国』(さとうち藍/文 松岡達英/絵 岩崎書店 1987.8)とワークシートで目次について解説。
・さくいんをマスターしよう!…絵本『やさいのおなか』(きうちかつ/さく・え 福音館書店 1997.1)読み聞かせ後、『やさいのずかん』(小宮山洋夫/作 岩崎書店 1989.8)とワークシートで索引について解説。
・こども資料室内で目次と索引のある本を探し、ワークシートに記入してもらう。

小学3~6年生対象「『調べる本』をいっぱい紹介!」
・調べる本にはどんな種類があるの?…国語辞典、漢字辞典、百科事典、図鑑などを、現物を見せながら紹介。
・どんな本で調べる?…どのタイプの本で調べるか、三択クイズを解いてもらう。
・実際に調べてみよう!…準備した7つの問題を、実際に本を使って解いてもらう。

<平成25年度>
小学1・2年生対象「本について知ろう!(辞書引きにもチャレンジ)」
・色々な種類の本に触ってみよう!…本の歴史について解説し、巻物、豆本や超大型本など、当館で所蔵している珍しい本を紹介し、実際に触ってもらう。
・調べる本について知ろう!…国語辞典や百科事典、図鑑など、自由研究に役立つ調べるための本を紹介し、実際にみてもらった後、「目次」や「索引」について説明し、ワークシートに自分で選んだ本の目次の情報を記入してもらう。
・国語辞典を使ってみよう!…国語辞典の見出しの並び方等について解説した後、いくつかの言葉を提示し、その言葉を実際に辞書で引いてもらう。

小学3~6年生対象「『ほんだな2013』で自由研究にチャレンジ」
・「ほんだな2013」で「?」をさがそう!…当館作成の「ほんだな2013」の知識の本(24p~)を紹介。気に入った本をもとにワークシート記入。
・本のさがし方をマスターしよう!…ワークシートをもとに、分類番号について説明し、同じテーマの本は同じ棚にあることを伝える。
・参考文献の書き方をマスターして、まとめよう!…『調べ学習の基礎の基礎:だれでもできる赤木かん子の魔法の図書館学』(赤木かん子/著 ポプラ社 2011.2)の46-47pを利用して解説。まとめ方の本も紹介。

<平成26年度>
小学1・2年生対象「図書館ってどんなところ?図書館や本についてもっと知ってみよう」
・本と図書館について知ろう!…当館で所蔵している巻物、豆本や超大型本など、珍しい本を紹介し、実際に触ってもらう。その後、紙芝居『図書館へようこそ!』(※1赤木かん子/文 きしらまゆこ/絵 埼玉福祉会商品事業部 2011.3)を読み、図書館について理解を深める。
・調べる本について知ろう!…国語辞典や百科事典、図鑑など、自由研究に役立つ調べるための本を紹介し、実際にみてもらった後、「目次」や「索引」について説明し、ワークシートに自分で選んだ本の目次の情報を記入してもらう。
・百科事典を使ってみよう!…『総合百科事典 ポプラディア』(※2 ポプラ社 2011.1)の引き方(背、柱、つめなど)について解説した後、自分で引きたい言葉を考えてもらい、その言葉を実際に引いてもらう。その後、自由研究を具体的にいくつか紹介。

小学3~6年生対象「本の探し方をマスターして自由研究(調べ学習)に役立てよう!」
・本の探し方について… 「図書館新聞」(職員作成p.20参照)を参考に、3つの探し方について説明。
・本棚で探す方法について…「図書館新聞」、ワークシートをもとに、本がテーマごとに並んでいることを説明し、こども資料室の地図を参考にして、クイズ形式でさがす本がどの棚にあるかを考えてもらう。請求記号についても説明。
・コンピュータでさがす方法について…館内OPACの画面コピーを拡大したものを紙芝居形式で展開しながら説明。書庫出納用紙の見方も説明。
・レファレンスサービスについて…図書館サービスのひとつとして紹介。本以外にも使える資料(雑誌、新聞、調べ方ガイド、各種展示、ポプラディアネット)の紹介。

<平成27年度>
小学1・2年生対象「自由研究 はじめの一歩 ~調べたいテーマをみつけよう~」
・本と図書館について…紙芝居『図書館へようこそ!』(※1)を読み、図書館について理解を深めてもらった後、図書館に関するクイズ(5問)を出題。その後、当館で所蔵している巻物、豆本や超大型本など、珍しい本を紹介し、実際にみてもらう。
・調べたいテーマを決めよう!…子どもたちに自分の好きなテーマを挙げてもらい、その中から調べたいことを決めてもらう。『総合百科事典 ポプラディア』(※2)の引き方(背、柱、つめなど)について解説した後、自分で引きたい言葉を引いてもらう。
・調べものの本を見てみよう!…国語辞典や図鑑など、自由研究に役立つ調べるための本を紹介し、みてもらった後、ポプラディアネットを案内し使い方を説明。

小学3~6年生対象「本の探し方をマスターして自由研究(調べ学習)に役立てよう!」
・調べる本の紹介1…国語辞典の紹介。引き方についてクイズ形式で挙手してもらう。
・調べる本の紹介2…百科事典の紹介。引き方についてクイズ形式で挙手してもらう。百科事典は自由研究のテーマを考えるのに便利だということを説明。
・調べる本の紹介3…自由研究テーマ「犬」から「図鑑」「はたらく犬」「犬の飼い方」の本を紹介。図鑑の目次・索引の説明。その他調べる本やデータベースなどを解説。(地図帳、ポプラディアネット、雑誌・新聞)。
・復習問題…どういうときにどんな調べる本を使うか、3択クイズ(挙手)で回答してもらう。
・問題…図鑑を紹介し、どういうときにどんな図鑑を使うか、調べたいことは何ページに載っているか(目次・索引を使う)考えてもらう。実際に図鑑を調べてもらい、最後に答え合わせ。

<平成28年度>
小学1・2年生対象「調べるって楽しい!」
・本と図書館について…絵本『としょかんへいこう』(斉藤洋/作 講談社 2015.7)を読み、図書館について知ってもらった後、図書館に関するクイズ(5問)を出題。それから、巻物、豆本やしかけ絵本、点字の本など、当館で所蔵している普段あまり目にしない本を紹介し、実際にみてもらう。
・調べたいことを百科事典で探してみよう…調べたいことを3つ挙げてもらい、その中から調べることを決めて、『総合百科事典 ポプラディア』(※2)を使い、引きたい言葉を自分で引いてもらう。
・調べるための本を見てみよう…図鑑など、自由研究に役立つ調べるための本を、実際にみてもらう。「カブトムシの飼い方」「とうもろこしについて」など、自由研究の例をいくつか挙げて紹介。
・本の探し方を知ろう…OPACでの検索の方法を説明した後、こども資料室内の書架や、こども向け調査ガイド「知ってる?木」、ポプラディアネットを案内して使い方を説明。

小学3~6年生対象「すぐに使える本の探し方、調べ方」
・調べる本の紹介1…国語辞典・漢字辞典の紹介。
・調べる本の紹介2…百科事典の紹介。
・調べる本の紹介3…図鑑、その他調べる本を解説。(地図帳、年鑑、雑誌・新聞)。
・復習問題…穴埋め問題で説明文のところにそれぞれの調べる本の名前をかいてもらう。
・クイズ…どういうときにどんな調べる本を使うか、3択クイズ(挙手)で回答してもらう。
・問題…実際に本を使って調べ学習のワーク(1人1問)。結果をそれぞれの子に言ってもらい、答え合わせ。
・自由研究の流れ…最後に自由研究のまとめ方を説明。

<平成29年度>
小学1・2年生対象「調べたいことをみつけよう」
・本と図書館について…紙芝居『図書館へようこそ!』(※1)を読み、図書館について説明した後、図書館に関するクイズ(5問)を出題。図書館の分類とこども資料室の配架について説明。
・百科事典で引いてみよう…『総合百科事典 ポプラディア』(※2)を使って、こちらで決めた言葉を実際に引いてもらう。
・調べたいことを決めよう…ワークシートを活用し、自分の調べたいことを決めてもらう。用意していた図鑑など、自由研究に役立つ調べるための本を紹介。
・調べたことをまとめよう…まとめ方の例として、ポスターやレポート用紙でのまとめ方を紹介。まとめる時のポイントをレジュメに沿って説明。

小学3~6年生対象「すぐに使える本の探し方、調べ方」(p.21~24参照)
・調べる本の紹介…国語辞典、漢字辞典、百科事典、図鑑、その他調べる本を解説(地図帳、年鑑、雑誌・新聞の紹介)。
・百科事典1…各机にテーマを書いた紙を予め用意し、『総合百科事典 ポプラディア』(※2)でそのテーマの言葉を引いてもらう(練習)。
・百科事典2…事典引きチャレンジ(制限時間内に10個の言葉を百科事典で引いてもらう)
・目次と索引…図を用いて目次と索引について説明。
・問題…実際に本を使って調べ学習のワーク。1人1問。ブックトラックに並べた本の中から選んで調べてもらう。問題は10問用意。
・NDCの説明(絵カードを使って)
・自由研究の流れ…最後に自由研究のまとめ方を説明。

参加者の反応

 1・2年生、3~6年生とも、例年保護者の関心は高く、子どもと一緒に参加する人や、保護者だけで参加する人もあり、熱心にメモを取る人も多い。子どもたちは、目次や索引など説明だけでは理解できたか講師には手ごたえのない場合でも、実際に自分で調べると意欲的に取り組み、理解へとつながる場合が多い。取り組みやすいようにワークシートなどを用意しておいたこともよかったと思われる。子どもの理解度によって、ワークシートの進み具合は変わり、一概に3年生より6年生の方が速いというわけでもなく、一人一人の子どもに寄り添った対応が必要である。
 アンケート結果をみると、少数ではあるが「むずかしすぎた」や「かんたんすぎた」と答える子どもがいた。

関連展示について

 夏休みに入る直前に、こども資料室入口付近に自由研究コーナーを設置し、資料展示として自由研究関連の資料約250冊を配架している(下の写真)。また、資料と一緒に「この本を見てつくりました」として、職員が製作した貯金箱やエコおもちゃなどの工作、貝や公園で見つけた草の標本、アサガオ・バッタ・セミの観察レポートや色水の実験などの自由研究レポート、絵画などを展示している。資料の書名や請求記号なども付しているため、資料が貸出中のときは予約する利用者もおり、実際に手に取ってみることのできる見本があると、取り掛かりやすいようだ。また、資料をまとめて置いているので見やすい、という利用者の声もある。
関連展示の様子の写真

こども向け調査ガイドについて

 平成24年度の夏休みから「こども向け調査ガイド」の作成を開始した。この調査ガイドは、こども資料室内の柱に色画用紙を貼り「知ってる?木」と名付けて、ウォールポケット様にして置いているが、置いているだけでは、子どもたちはなかなか利用してくれない。そこで、楽しみながら、この調査ガイドを利用し、新しい知識の発見につながるような取組みはないかと考え、夏休み期間中にクイズラリーを実施した。子どもたちは、カウンターでクイズ用紙をもらい、3択のクイズに挑戦する。答えがわからない場合は、調査ガイドを見ればわかるしかけになっている。クイズラリーは、狙い通り好評で、「知ってる?木」の認知度アップと「こども向け調査ガイド」の利用促進につながった。その後もクイズを求める声が多かったので、夏休みだけでなく、冬休みや春休みに実施するようにし、これに合わせて、新規の調査ガイドも作成している。なお、この「知ってる?木」は文部科学省の『人・まち・社会を育む情報拠点を目指して 図書館実践事例集』(2014はじめに)に紹介していただいた。また、こども向け調査ガイドについては、『はらっぱNo.26』でも紹介しているので、あわせてご覧いただきたい。

全館的な取組みとして

 子どもたちの課題に応えるためには、児童用資料だけでは対応できないこともある。そんな場合は、当館の人文系資料室、社会自然系資料室に応援を依頼することになる。また、子どもたちが少しでも聞きやすい態勢にするため、夏休み期間中、レファレンスに対応する職員は、「自由研究応援団 なんでもきいてね!」と書かれたプレートを名札につける。このプレートには、親しみやすいように折り紙で作ったセミやヒマワリなどを付している(下写真)
「自由研究応援団なんでもきいてね!」と書かれたプレートの写真

課題と今後について

 自由研究応援団の内容については、毎年担当者が試行錯誤しながら取り組んでいる。同じようなプログラムに見えても、よりわかりやすい説明方法を模索し、時宜にあった事柄を取り上げ、ワークシートの見直しなどを行っているが、低学年に比べ、高学年の参加が少ない。会場を覗いては見るが「勉強?」と言って、入ってこない場合もある。もっと、子ども自身が自主的に、楽しみながら参加できるような取組みが必要だと感じる。参加した子どもからは、「役にたった」という声が多いだけに残念である。
 関連展示については、出版年の古いものはあまり借りられない傾向がある。今の子どもたちの興味にあわないのか、またカラー写真などのページが少ないので見にくいのかもしれない。多くはない予算の中で、新しい資料も購入しているが、夏休みの中盤になると残っているのは、どうしても古い資料が多くなってくる。
 夏休みは、普段図書館に来ない子どももやってくる貴重な期間だ。本を読むのがあまり好きでないと感じていた子どもにも、「本って役にたつんだ、おもしろい」と感じてほしい。今後も、子どもたちの心を引き付ける取組みを考え、それらの情報を発信し、大阪府域の子どもたちの「知りたい」気持ちに応えていきたい。

<資料>図書館新聞 [PDFファイル/308KB]

<資料>平成29年度小学3~6年生用ワークシート [PDFファイル/1.1MB]

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