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「はらっぱ」 No.30 国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.30 国際児童文学館 イベント紹介

掲載日:2017年3月31日更新

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

 国際児童文学館では、子どもの本に関する講演会や貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催している。ここでは、平成28年に実施したものの中からいくつかをとりあげて紹介したい。
 これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページにも掲載している。併せてご覧いただきたい。
【大阪府立中央図書館 国際児童文学館 イベント情報】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

イギリスの絵本作家 エミリー・グラヴェットさんをお迎えして(講演会と小学生向けワークショップ)

 平成28年2月27日(土曜日)、28日(日曜日)にイギリスの絵本作家エミリー・グラヴェットさんによる講演会とワークショップ(国立国会図書館国際子ども図書館、大阪府立中央図書館、一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団主催)を多目的室で開催した。

●講演会「イギリスの絵本作家 エミリー・グラヴェット―絵に生きる」

 2月27日(土曜日)に、講演会(通訳:松下宏子さん)を開催し、82人の参加者を得た。まず、絵を描くことが好きで魔女になりたかったという幼少期から、バスで暮らした青春時代、子育て中の絵本との出会い、絵本作家になるまでを語られた。次に、絵本作りについて、構成の工夫、創作の裏話など作品を示しながら具体的に解説された。
 後半の質疑応答では、創作に関わる質問に熱心に答えられ、「登場人物に動物が多いのはなぜ?」という質問には、動物の方が子どもが感情移入しやすく、人種も年齢も性別にも束縛されないからとのことであった。

講演会「イギリスの絵本作家 エミリー・グラヴェット―絵に生きる」

●ワークショップ「イギリスの絵本作家エミリー・グラヴェットさんと絵本を作ろう!」

 2月28日(日曜日)には、小学生を対象にワークショップを開催し、27人が参加した。自作『もっかい!』を読むことからはじまり、製本体験と絵本の作り方の説明、参加者による絵本作り、発表という流れで行われた。絵本を読む際には参加者全員で「もっかい!」のフレーズをくり返し、場の空気をほぐされた。絵本作りで悩んでいる子には、動物の絵を描いたサイコロやカードなどでヒントを出したり、絵の描き方で困っている子には、目の前でさらっと描いて見せたり、動物のパーツに切り抜いた折り紙の向きを変えるだけで動きがでることなどをアドバイスされた。発表会では、書画カメラで現物を見せながら発表し、グラヴェットさんからの講評があった。

ワークショップ「イギリスの絵本作家エミリー・グラヴェットさんと絵本を作ろう!」

 なお、本イベントの詳細な報告集は大阪国際児童文学振興財団から発行されている。

むかしの紙芝居を楽しもう!実演とワークショップ「紙芝居を演じてみよう!」

 平成28年7月20日(水曜日)、大阪国際児童文学振興財団と共催で中央図書館多目的室にて開催し、29人の参加者を得た。

●街頭紙芝居実演

 塩崎おとぎ紙芝居博物館の紙芝居師である大塚珠代さん・古橋理恵さんに、街頭紙芝居を実演していただいた。まず、ことづけを忘れたお客さんとのやりとりが楽しい『チョンちゃん』(1810巻)、次に子どもたちにいじめられているところを侍に助けられる『河童小僧』を小道具も使って実演された。続いてのクイズでは紙風船などの景品が用意され、参加者は熱心に手を挙げた。最後の『どんぐり横丁』では、臨場感あふれる語り口で、大人はなつかしそうに、子どもたちも身を乗り出して街頭紙芝居の世界を楽しんでいた。

街頭紙芝居実演

●ワークショップ「紙芝居を演じてみよう!」

 『チョンちゃん』(1807巻)の模範実演を見た後に、子どもチーム(古橋さん、大阪国際児童文学振興財団の土居安子さん)、大人チーム(大塚さん)に分かれて練習した。子どもチームは、お父さん、チョンちゃん、お母さん、太鼓役に分かれて挑戦。大人チームは、10場面を2場面ずつ分けて挑戦。楽しんで演じていた。

ワークショップ「紙芝居を演じてみよう!」

ワークショップ「住まいの絵本プロジェクト&お家作り」

 国際児童文学館では、児童文学・児童文化に関する高い専門性を有する外部の研究者等に、当館資料を活用しつつ運営にも協力していただく「専門協力員」制度を実施している。
 本イベントは平成28年8月20日(土曜日)、専門協力員である住まいの絵本館(NPO法人子どもと住文化研究センター)の協力のもと、多目的室にて開催し、子ども20人と保護者17人の参加を得た。

●絵本の解説

 「住まい」の描写に関して特徴的な2冊の絵本『うちにはライオンがいるんです』と『とんくるりんのおやしきだいぼうけん』について、大画面を使い、読みきかせとは少し違うアプローチで、子どもたちに問いかけながら、お話を進められた。子どもたちは熱心に参加していた。

●キットを使って「お家作り」工作

キットを使って「お家作り」工作

 実際に絵本に出てくる家を模した工作キット「世界のお家シート」を使用した。昔と今の日本家屋、外国の一軒家やアパートメントの4種類の中から1つが配られ、参加者は切り取って、色を塗ったり貼り合わせたりする作業に、親子で熱心に取り組んでいた。グループ毎に講師スタッフがつき、建築の視点からアドバイスをされるのを、子どもたちは興味深く聞いていた。会場内には「住まい」に関する絵本を展示し、休憩時間などに手に取って見ていただいた。

小展示「日本の子どもの本~珠玉の30選~」

 平成28年4月1日(金曜日)~6月15日(水曜日)、館内小展示コーナーにおいて実施した。
 国際児童文学館では、78万点に及ぶ貴重な資料を所蔵している(平成27年3月末時点)。本展示は、平成22年5月の国際児童文学館移転オープン時の企画展示「なつかしの子どもの本~名著30選~」のリバイバル企画であるが、ユニークな蔵書をコンパクトに紹介できる展示として、今後も定期的に開催したいと考えている。
 主な展示資料としては、巖谷小波『こがね丸』、呉文聡『八ツ山羊』、巖谷小波文・杉浦非水ほか画『日本一ノ画噺』、宮沢賢治『注文の多い料理店』、江戸川乱歩『怪人二十面相』、なかがわりえこ作・おおむらゆりこ絵『ぐりとぐら』など。いずれも、内容・図像・装幀などに見るべき点がある日本の児童文学史上記念碑的な作品であり、日本を代表する出版物である。読物・絵本・児童誌・漫画・紙芝居など、明治・大正・昭和の名作30点を紹介した。
 会期中アンケートを行い、「貴重なものを見せてもらって嬉しかった」との声をいただいた。特に黄金バットの紙芝居(復刻版)に興味を持たれた方が多かった。アンケートの回答者には、『日本一ノ画噺』のデザインを用いたオリジナルのしおりをプレゼントした。

小展示「日本の子どもの本~珠玉の30選~」

小展示「『ピーター・パンの世界』展~国際児童文学館展示用貸出パック紹介 第1弾~」

 平成28年6月19日(日曜日)~9月30日(金曜日)、館内小展示コーナーにて実施した。
 国際児童文学館では、あらかじめ選び出した資料をセットにして、解説つきで図書館や博物館、美術館等に貸出する「国際児童文学館展示用貸出パック」を用意しており、『ピーター・パンの世界』はその一例である。セットの利用促進のため、新たに収蔵した資料も含めて全69点を展示した。水間千恵さん(川口短期大学)に作品選択と解説執筆にご協力いただいた。期間中は、こども資料室内の特設コーナーでも、こども資料室所蔵の関連資料を展示し、貸出に供した。
 期間中、ピーター・パンの人気投票「どのピーター・パンが好き?」を実施した。小展示コーナーで候補作品の中から好きなピーター・パンを決め国際児童文学館カウンターで投票する。参加者には、ブックカバーをプレゼントした。167人が参加した結果、“PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS”にアーサー・ラッカムが描いた赤ちゃんのピーターのイラストが1位となった。
 また、関連して6月19日(日曜日)、こども資料室おはなしのへやでおはなし会「イギリスのおはなし」を実施し、28人の参加者を得た。終了後に、「ミニミニツアー」と題して展示を案内した。

小展示「『ピーター・パンの世界』展~国際児童文学館展示用貸出パック紹介 第1弾~」

資料展示「宮沢賢治生誕120年記念 メディアを横断する『賢治』-ガラス絵、絵本、マンガにみる宮沢賢治-」と関連イベント

●資料展示

 平成28年10月14日(金曜日)~12月25日(日曜日)、大阪府立中央図書館指定管理者 長谷工・大阪共立・TRCグループとの共催で、中央図書館1階展示コーナーにて開催した。
 東北地方に生まれ、生前ほとんど評価されることのなかった作家・宮沢賢治の童話は、現代においてこそ多様に読まれ、絵本やマンガ、アニメーション、映画や演劇、音楽等、様々な分野で再創造されている。
 平成28年は賢治生誕120年であるため、本展示では、賢治の業績を振り返るとともに、賢治作品を原作とする〈再創造された作品群〉を取り上げ、再話者が原作のエネルギーをいかに捉え、発信したかを紹介した。
 主な展示資料は、国際児童文学館の所蔵資料から、賢治の生前に出版された唯一の童話集『注文の多い料理店』(大正13年)のほか「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」等を原作とする絵本や漫画、紙芝居等、計72点である。また、泉啓一による賢治作品のガラス絵作品群34点を展示したほか、こども資料室や人文系資料室からも絵本、紙芝居、研究書等374点を展示し、貸出に供した。
 さらに、関連イベントとして子ども向け講座を10月30日(日曜日)に、講演会&トークを11月13日(日曜日)に実施した。

●子ども向け講座「宮沢賢治について知ろう!」

 こども資料室おはなしのへやにて、国際児童文学館職員による小学生対象の講座を開催し、子ども11人と保護者8人の参加者を得た。まず「雨ニモマケズ」を朗読し、賢治の生涯や作品等を紹介した後、賢治に関するクイズを出題した。講座終了後には希望者を展示コーナーに案内し、展示の解説を行った。

●講演会「メディアを横断する『賢治』-絵本、マンガ、紙芝居-」

 『宮沢賢治、めまいの練習帳』の著者で武蔵野大学教授、大阪国際児童文学振興財団理事長の宮川健郎さんの講演会を多目的室で開催し、82人が参加した。

講演会「メディアを横断する『賢治』-絵本、マンガ、紙芝居-」

 宮川さんは、冒頭で賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」を歌った後、「風の又三郎」に登場する性別不明の先生を例に挙げ、文章に書かれていない部分を絵やマンガで表現する際の再話者による「解釈」について話された。また、茂田井武が「セロ弾きのゴーシュ」を絵本化した際、当初は簡略化されていた文章が後に原文へと戻された例を挙げ、賢治作品を絵本化することの難しさなど、再創造された賢治作品について様々な角度から紹介された。

●トーク「宮川さんに聞く 賢治の世界の魅力」

 講演会に引き続き、京都華頂大学准教授で大阪国際児童文学振興財団理事の遠藤純さんを聞き手としたトークを開催した。
 大阪国際児童文学振興財団メールマガジンで「イーハトヴ周遊 宮沢賢治の童話を読破する」を連載中の二人が、賢治作品の解釈等について軽妙なトークを繰り広げた。後半の質疑応答では、賢治作品への出会い等に質問が及び、各々にとっての賢治の魅力が語られた。
 最後には、宮川さんが紙芝居『キツネノゲントウ-宮沢賢治「雪渡り」より』(昭和17年 復刻版)を実演し、参加者は熱心に見入っていた。
 なお、遠藤さんには展示作品選択と解説執筆にもご協力いただいた。


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