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「はらっぱ」 No.29 国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.29 国際児童文学館 イベント紹介

掲載日:2016年3月31日更新

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

 平成27年度、国際児童文学館では、子どもの本に関する講演会や、貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催した。ここでは、その中からいくつかをとりあげて紹介したい。
 これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページに掲載している。併せてご覧いただきたい。
 【大阪府立中央図書館 国際児童文学館 イベント情報】(https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

懐かしの街頭紙芝居~「少年ローン・レンジャー」とその時代~(街頭紙芝居の実演と講演)

 平成26年5月に街頭紙芝居デジタルサイトを公開したことを記念して、平成27年1月25日(日曜日)に街頭紙芝居の実演と講演会を、大阪国際児童文学振興財団との共催で大会議室にて実施した。このイベントは当初、平成26年10月に開催する予定だったが、台風の直撃で中止となり、日程が遅れたものである。参加者は街頭紙芝居の実演が59人、講演会が43人であった。

●街頭紙芝居実演

 塩崎おとぎ紙芝居博物館理事で紙芝居師でもある近藤博昭さんに、街頭紙芝居を実演していただいた。まず、アメリカ西部を舞台とした「少年ローン・レンジャー」を30分、日常生活でおきる笑いを描いた漫画紙芝居「チョンちゃん」を5分実演した後、紙芝居に描かれた絵の内容を当てるクイズも10分実施された。
 近藤さんは拍子木を打ちながら登場され、臨場感あふれる軽妙な語り口で参加者を惹きつけていた。また、お話の合間に加えられる解説により、街頭紙芝居そのものについての知識も深められる内容となっていた。

街頭紙芝居実演

●講演会「街角の子ども文化 街頭紙芝居の歩みと今日的意義」

 児童文学研究者の畑中圭一さんに街頭紙芝居の歴史や意義等についてお話いただいた。街頭紙芝居の源流は、日本の「のぞきからくり」や「絵解き」のほか、中国やインドの「絵語り」にさかのぼることができるとのことで、写真や絵図を示しながら分かりやすく解説していただいた。
 最後のまとめでは、街頭紙芝居の今日的意義として、「ふれ合いの場」や「大人社会を垣間見る場」であること等を自身の経験も織り交ぜつつ述べられていた。

街頭紙芝居講演会

 講演の後には、職員が街頭紙芝居デジタルサイトについて紹介する時間を10分ほど設けた。
 なお、開催当日には東大阪市のケーブルテレビによる撮影が行われ、イベントの様子がニュースとして紹介された。

小展示「杉浦非水と『日本一ノ画噺』」

 平成27年4月1日(水曜日)~6月28日(日曜日)、国際児童文学館室内小展示コーナーにおいて開催した。
 平成27年が没後50年にあたる杉浦非水(すぎうらひすい)(明治9年~昭和40年、愛媛県松山市生まれ)は、グラフィック・デザインの先駆者であり、日本を代表するデザイナーである。三越呉服店図案部主任として、ポスター史上に残る名品を作り出したほか、本の装幀、雑誌の表紙絵などに非凡な才能を発揮した。
 国際児童文学館では、非水らが挿絵を描き、日本児童文学の開拓者・推進者である巌谷小波(いわやさざなみ)が文を書いた『日本一ノ画噺』(にっぽんいちのえばなし)全35冊を国内で唯一、専用書棚つきで所蔵している。これは明治44年から大正4年にかけて出版されたミニチュア絵本シリーズで、平成27年は出版完了から100年目にあたることから、中央図書館への移転開館後初めて展示することとなった。内容は『ウラシマ』のような昔話から、『アヒルトニワトリ』のような身近な題材に至るまで幅広く、文は簡潔でなじみやすい七五調である。挿絵は非水のほか、岡野栄(おかのさかえ)、小林鍾吉(こばやししょうきち)が描いており、すべて単色のバックに黒のシルエットが浮かぶ斬新かつモダンなデザインで統一されている。閲覧室内には『日本一ノ画噺』復刻版を、手に取って見られる形で配置した。
 このほか非水が表紙絵をてがけた『少年世界』『幼年画報』『みつこしタイムス』などの雑誌や、『鬼妻』『如意の函』などの小波童話、また中央図書館や中之島図書館で所蔵する美しい図案集も併せて紹介した。このうち『非水図案集 第1輯』には、恩師である洋画家黒田清輝が描いた非水の肖像画が収載されている。
 会期中アンケートを行い、200件を超える回答を得た。その回答からは、国際児童文学館の貴重資料を目的として来場された方だけではなく、デザインに関心のある方にもご覧いただけたことが窺われた。多数の方が、「これまで非水を知らなかったが今回その才能に初めて触れて感銘を受けた」「『日本一ノ画噺』の洗練されたデザイン、リズミカルな文との調和が印象に残った」などと回答されており、他にもさまざまな感想を寄せていただいた。アンケートの回答者には、非水のデザインを用いたオリジナルの文庫本カバーをプレゼントし、こちらも好評であった。

小展示「杉浦非水と『日本一ノ画噺』」

小展示「国際アンデルセン賞受賞作家作品展-絵本で世界をめぐろう-」と関連イベント

●小展示

 平成27年7月1日(水曜日)~9月27日(日曜日)、一般社団法人日本国際児童図書評議会(JBBY)との共催で、国際児童文学館小展示コーナーにて開催した。
 平成27年3月、上橋菜穂子さんの「国際アンデルセン賞作家賞」受賞を記念し、これまでの受賞者(作家賞・画家賞)の作品について原書を中心に振り返った。また、平成28年は日本とブラジルとの間で正式な国交が結ばれてから120年であることから、平成27年に「国際アンデルセン賞画家賞」を受賞したブラジルのホジェル・メロ(Roger Mello)さんの作品をはじめとする、ブラジルの絵本もとりあげ、合計76点の資料を、紹介パネルとともに展示した。
 期間中は、こども資料室内の特設コーナーに、関連資料を展示し、貸出利用に供するとともに、9月1日(火曜日)~9月27日(日曜日)には貸出できないしかけ絵本も展示した。

●関連イベント「アンデルセンをさがせ!!」

 展示期間中、子どもたちに展示を見てもらうきっかけとして、ウォークラリーを実施した。こども資料室と国際児童文学館に設置した5つのチェックポイントにある文字をヒントとして、アンデルセンの作品名をあてるもので、全ポイント到達者には、まちがいさがし「絵本でパズル」をプレゼントした。成人も含む263人の参加を得た。あわせて、展示作品の中で好きな作品への投票も実施したところ、『かいじゅうたちのいるところ』の原書『Where the Wild Things are』が1位となった。

●おはなし会「絵本で世界をめぐろう~国際アンデルセン賞受賞作家作品より~」

 8月1日(土曜日)、14時~、15時~の2回、こども資料室おはなしのへやで実施し、あわせて53人の参加を得た。
*なお、紹介パネルとプレゼントのパズルは共催のJBBYから提供していただいた。

国際アンデルセン賞受賞作家作品展」おはなし会のプログラム1回目
国際アンデルセン賞受賞作家作品展」おはなし会のプログラム2回目
小展示「国際アンデルセン賞受賞作家作品展」

資料展示「関西マンガ界の伝説 酒井七馬とその時代」と関連イベント

●資料展示

 平成27年10月9日(金曜日)~12月20日(日曜日)、京都国際マンガミュージアムおよび京都精華大学国際マンガ研究センターとの共催で、中央図書館1階展示コーナーにて開催した。
 大阪出身の酒井七馬(さかいしちま)は、大正時代後半に新聞・雑誌の風刺マンガ家として登場し、黎明期のアニメーション界でも活躍、戦後は赤本マンガや街頭紙芝居の世界で当時の子どもたちを惹きつける作品を生み出した人物である。代表作に、戦後間もない大阪で若き手塚治虫と合作し、日本マンガ史上記念碑的作品となる『新宝島』(育英出版 昭和22年)がある。
 平成27年は生誕110年という記念すべき年にあたり、本展示では七馬の業績を振り返るとともに、大阪のマンガ文化を育んだ児童文化史上貴重な資料も併せて紹介した。
 主な展示資料は、国際児童文学館、京都国際マンガミュージアムや関連講演会講師の中野晴行さん所蔵資料から、七馬や手塚作の赤本マンガをはじめ、七馬が創刊に携わった雑誌『ハローマンガ』『まんがマン』『ジュンマンガ』、直筆の戦中期の軍事慰問似顔絵等に、中之島図書館所蔵のマンガ関連雑誌『滑稽新聞』『大阪パック』も加えた、計146点である。また、七馬が左久良五郎(さくらごろう)のペンネームで昭和25年頃から描いた国際児童文学館所蔵の街頭紙芝居10作品については、複製版を展示するコーナーを設けた。
 そのほか、企画展示エリアでも中央図書館所蔵資料から、日本のマンガ史・アニメーション史、大阪ゆかりのマンガ家に関連する資料等450点を展示し、貸出にも供した。
 また、中之島図書館では大阪府立図書館連携企画事業として、平成27年12月1日(火曜日)~平成28年1月30日(土曜日)には「江戸のいやし絵~江戸漫画あれこれ~」を行った。
 さらに、関連イベントとして街頭紙芝居実演・講演会を、平成27年12月12日(土曜日)に大阪国際児童文学振興財団との共催で実施した。

●街頭紙芝居実演「鞍馬小天狗」等

 演者は平成27年1月に実施したイベントと同じく塩崎おとぎ紙芝居博物館の近藤博昭さんで、多目的室にて開催し、69人の参加者を得た。七馬の作品から幕末を舞台とした「鞍馬小天狗」(10分)、地球で育った宇宙人の少年が活躍する「宇宙少年」(15分)の2作を実演し、あとは漫画紙芝居「チョンちゃん」(5分)と紙芝居を用いたクイズ(10分)を行うという構成であった。近藤さんは今回も拍子木を打ちながら登場され、抑揚の効いた軽妙な語り口で参加者を惹きつけていた。

●講演会「レジェンド 酒井七馬と昭和の大阪まんが」

 『謎のマンガ家・酒井七馬伝』の著者で京都精華大学マンガ学部客員教授の中野晴行さんの講演会を大会議室で開催し、78人の参加者を得た。2005年から2年弱かけて七馬の足跡を追う取材をされた中野さんが、七馬の戦前・戦中・戦後、それぞれの時代における創作活動について、関わりのあった人物や影響を受けたと思われる作品等を取り上げてお話された。
 開催中の資料展示に触れ、昭和8年『京都日出新聞』連載の「日曜日出マンガ」に見られる、子ども向けと大人向けのマンガを同じ紙面で描き分ける器用さ、昭和21年刊の雑誌『まんがマン』創刊号にはGHQの検閲のため表紙を貼りかえた跡があること等、数々の見どころを具体的に紹介された。
 講演のあと、来場されていた七馬の御遺族が思い出を語られたり、子どもの頃七馬の家で似顔絵を描いてもらったという方が経験談を披露されたりした。また、研究者からマンガ史における七馬の位置づけについて質問があったことで議論が引き出され、興味深い内容に参加者は熱心に耳を傾けていた。

「新収古書一覧(平成24年度~26年度)」をホームページ上で公開

 国際児童文学館は「児童文化の総合資料センター」として新刊児童書を網羅的に収集するほか、明治以降の児童向き資料や児童文学関連資料についても収集・保存している。
 平成24年度から26年度にかけて新たに所蔵に加わった古書の一覧を、平成27年11月にWebサイトで公開した。(https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/old-book.html
 年度ごとに数点ずつ取り上げて、画像とともに解説を加えた。取り上げた資料は以下のとおりである。
 平成24年度は、童話叢書「お城シリーズ」から村山知義が訳・編・装画の『ロービンフッド』、ケストナー作品を山本夏彦が初めて翻訳した『少年探偵エミイル』、詩人・尾形亀之助主宰の月刊雑誌『月曜』、朝日新聞社会事業団が発行した月刊児童雑誌『アサヒコドモノカイ コドモの本』。
 平成25年度は、日清戦争直後に大阪で絵草紙類の刊行を始めた榎本法令館の『お伽絵本 西洋の一寸法師 ピーターパン』、少年探偵団のシリーズ第4作で、小松崎茂による装幀・挿絵の『大金塊』、戦前に生活綴方運動で主導的な役割を担った千葉春雄が主宰・発行した雑誌『綴り方倶楽部』、名古屋でお伽口演の歴史に足跡を残す大西巨口の主宰・発行の月刊児童雑誌『兎の耳』。
 平成26年度は、歌人・与謝野晶子による長編童話作品『長篇童話 藤太郎の旅』、樋口一葉「たけくらべ」を原作とする物語で、子ども向けにリライトされた最初のものと思われる『大黒屋のみどり』などである。
 ぜひご覧いただきたい。


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