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「はらっぱ」 No.29 コラム 特別貸出用図書セットの資料選定等について

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.29 コラム 特別貸出用図書セットの資料選定等について

掲載日:2016年3月31日更新

1.セットの概要

 特別貸出用図書セットは、主に学校の諸活動向けに選んだ資料をテーマ別のセットにして貸出しているものである。セットのジャンルには「朝の読書」活動を支援するための読み物等を集めた「朝の読書用セット」と、調べ学習に役立つ資料を集めた「調べ学習用セット」の2種類がある。これらのセットの詳細は大阪府立中央図書館の「学校支援のページ」で公開しており、各セットのテーマや資料名等を確認できる。(https://www.library.pref.osaka.jp/site/central/school-tsetlist0.html
 平成22年の事業開始時には335冊(16セット)だった資料数は年々増加し、平成27年4月現在では2637冊(197セット)にまで規模が拡大している。ここでは、毎年実施しているセットの資料選定等について紹介する。

2.選定担当者

 選定は国際児童文学館職員が中心となり、こども資料室職員の協力も得ながら行っている。両部署の職員は、絵本・読物・知識の担当に分かれて当該年の新刊本を読み、2か月に1回程度は担当ごとの評価会議も行っている。この会議の主目的はセットの資料選定ではないが、同じ本を読んだ者同士で交わした意見は、セットの資料選定時にも生かされている。

3.選定の流れ

 選定作業は通常、毎年秋頃から開始している。まず、国際児童文学館の職員でどのようなテーマのセットを作成するか相談し、こども資料室の意見も聞いた上で方向性を決定している。その際には、購入予算や過去に作成したセットの利用状況のほか、利用者からの要望等も勘案している。
 その後、購入担当職員が方針や購入予算を示しつつ、絵本・読物・知識の各担当者に、資料選定(セットの作成)の依頼を行う。1カ月程度の選定期間後に各担当から提出されたリストを購入担当職員が集約し、セットとしてのバランスや重複資料の有無、金額等を調整する。そして再度、全員の確認を経て書店に発注している。

4.選定の内容

 2種類あるジャンルごとに異なる方針で選定しているが、共通する部分もあるため、それぞれ個別に紹介する。

(1)「朝の読書用セット」:低学年用、中学年用、高学年用、YA(中高生)用の4種類がある。「朝の読書」で活用してもらい、読書の楽しさに気づくことができるような資料を集めるようにしている。内容は絵本や物語が中心だが、読んで楽しめる知識の本も一部含めている。読物の場合はファンタジーとリアリズムのバランスや、主人公が男の子か女の子かのバランスにも配慮している。また、絵本・読物・ノンフィクションのそれぞれについて、日本と海外の作品のバランスも考えている。そのほか、物語のシリーズはなるべく1巻目を購入しているが、単独で読める場合は途中の巻でもセットに加えている。

(2)「調べ学習用セット」:学校の授業等に役立ててもらえそうなテーマを幅広く設定し、そのテーマに沿った資料を集めている。内容はほとんど知識の本だが、「東日本大震災」など、広く社会の耳目を集めたテーマについては、絵本や物語もセットに含めることがある。また、新刊本が多数出版されたテーマ(世界文化遺産に登録された際の「富士山」等)もセットに加えている。そのほか、継続的に出版されている有益な内容のシリーズは毎年購入しており、学校図書館では高額なため更新することが難しい百科事典等の参考図書も、新しいものが出版された場合には購入している。

(3)共通の方針:両ジャンルに共通の方針としては、以下のものがある。
・既存のセットで購入した資料との重複は避けている。ただし、調べ学習用セットで購入した資料を朝の読書用セットで購入するなど、ジャンルが異なる場合は重複を可としている。
・基本的に前年から当該年に出版された資料を集めているが、「大阪」に関するセット等、古い資料も必要な場合にはセットに組み込んでいる。
・こども資料室が毎年発行している子どもの本のリスト『ほんだな』に収録されている資料はできるだけ購入している。(他とのバランスから、購入しない場合もある。)
・利用団体からの要望がある場合にはそれを優先している。

5.利用状況

 最後に、平成23年度から26年度までのデータを元に、セットの利用状況について簡単に紹介する。
 まず、貸出セット数については、グラフ1にある通り増加傾向にある。「朝の読書用セット」では低学年用、中学年用のセットが、「調べ学習用セット」では参考図書や戦争・平和に関するセットの利用が特に多くなっている。
 利用団体の種別はグラフ2が示す通り、小学校が圧倒的に多くなっている。利用の少ない高校からの利用をどう増やすかが今後の課題である。なお、平成27年からは少年院への貸出を開始しており、利用団体の幅は広がってきている。
 利用内容については、貸出時にアンケートを取って調査している。その結果はグラフ3の通りである。総合学習と朝の読書を目的とした利用が特に多くなっているが、平和学習や読み聞かせ等にも幅広く利用されている。
 具体的な利用の感想としては、「学校の図書館に置いていないような本がたくさんあり助かった」、「『ポプラディア』を生徒一人一人に利用させることができ、とても助かっている」、「自分で選ぶのではなく最初からセットされている点がよかった」といったものが見られた。また、貸出期間(原則2ヶ月だが必要に応じて延長可)が長く、本が新しくて綺麗である点も喜ばれているようである。
 今後は、内容が古くなったセットの改訂を進めるとともに、セットの拡充もこれまでと同様に進めていく予定である。当館のセットが、学校等での読書活動の一助になれば幸いである。

1.貸出セット数
2.団体種別
3.利用内容


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