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本蔵-知る司書ぞ知る(107号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2023年9月20日版

今月のトピック 【身近な人から見た司馬遼太郎】

本年令和5(2023)年は司馬遼太郎生誕100年に当たります。当館では、企画展示として「司馬遼太郎-生誕100年-」を10月1日(日曜日)まで開催しています。今回はそれにあわせて、司馬遼太郎の担当編集者など、司馬遼太郎の身近にいた人が書いた文章を紹介します。

みどり夫人「追悼の司馬遼太郎」:司馬遼太郎さんと私』(夕刊フジ/編 産経新聞社/編 産経新聞ニュースサービス 1997.1)

巻頭の「福田みどり夫人インタビュー」では、産経新聞社で同僚として出会った司馬遼太郎との結婚に至るまでの話や、服装にはこだわらなかった司馬氏が、バンダナにはこだわっていて、お墓(日本文芸家協会の「文学者の墓」)の中にも好物だったお菓子のビスコなどとともに収めた話などが語られています。

司馬遼太郎という人(文春新書)』(和田宏/著 文芸春秋 2004.10)

『司馬遼太郎全集』の編集を担当した著者が、印象に残った司馬遼太郎の言葉とともにその当時の出来事や交わした会話、手紙などを紹介しています。そのほか、司馬遼太郎の食べ物に関するエピソードも語られています。司馬遼太郎は、かなりの偏食で、出先での食事は選択肢が限られるため、決まったメニュー(カツライス・カレーライス・蕎麦・うどん・サンドウイッチ)になりがちだったそうです。

歴代の担当編集者の中には、作家の半藤一利氏もいました。『清張さんと司馬さん(文春文庫)』(半藤一利/著 文藝春秋 2005.10)は、担当編集者として接した松本清張と司馬遼太郎について、「NHK人間講座」で語られたテキストをもとにまとめたものです。『街道をついてゆく:司馬遼太郎番の6年間』(村井重俊/著 朝日新聞出版 2008.6)は、週刊朝日の連載『街道をゆく』の、6代目で最後の担当者の村井氏から見た司馬遼太郎との6年間を回想したものです。

菜の花の賦(うた):小説青春の司馬さん』(三浦浩/著 勁文社 1996.9)

著者は、司馬遼太郎が作家になる前に勤めていた産経新聞社に入社し、司馬遼太郎とともに働きながら小説も書き、定年退職後は執筆活動に専念をしました。
この作品は、上記の2点とは異なり、司馬遼太郎が新聞記者から直木賞を受賞して作家となっていく頃の状況を小説化したものです。

今月の蔵出し

夜の旅人』(阿刀田高/著 文芸春秋 1983.9)

これは私財を投じてゲーテ図書館(現在の「東京ゲーテ記念館」)を創設した実在の人物・粉川忠(1907~1989)を主人公とした伝記小説です。水戸で代々村長を勤める素封家の跡取りの粉川は、幼少時、祖父に連れられて水戸の彰考館文庫を訪れます。蔵書が三十万冊もあると聞き、ここの人は皆この本を読むのかと質問する粉川に、「全部は読めない。でも、どこにどんな本があるかはわかっている。(中略)だれがどんなことを調べに来ても、すぐによい本が出せるように準備をしておかなければいけないんだな」と館長が答えます。(この辺り、我々図書館員は「そうそう、そうありたい」と共感するところです。)

粉川はその後、学生時代にゲーテの代表作である『ファウスト』に出会い、次第にゲーテに魅了され、ゲーテを一生勉強したいと思うに至ります。上京後、知人から、ゲーテはいつ頃日本に紹介されたのかと尋ねられますが、粉川は答えられません。上野図書館に三ヵ月通いつめ、ようやく質問の答えを見つけます。三ヵ月もかかるのかと満足よりも疲弊を感じた彼は、このとき幼少時の彰考館文庫での思い出が蘇り、ゲーテのための彰考館文庫、そこへ行けばゲーテのことが何でもわかるようなゲーテ図書館を作ろうと思い立ちます。そして、ゲーテの原書や翻訳書のみならず、「ゲーテ」の文字が一つでも載っている書物、雑誌、資料はすべて蒐集すべく駆け回るのです。

大学2年のとき、これから卒論のテーマを決めて文献を集めるに当たって参考になると恩師から薦められて本書を読んだ私は、粉川の蒐集への情熱に圧倒されました。

蒐集の資金を得るために味噌漉し機の製造業を起こし、その手腕や人柄を軍部から見込まれて、味噌だけでなく兵員四十五万人のための食糧補給工場を中国に建造する指揮を任せられるなど、ゲーテ一筋の面だけでなくスケールの大きなエピソードも織り込まれており、図書館好きならずとも読み応えのある一冊です。

                                  【天野】

本で床は抜けるのか』 (西牟田靖/著 本の雑誌社 2015.3)

みなさんは、家に本がどれくらいありますか?

図書館員は本好きな人が多いこともあり、家に本がたくさんあるという人が多い気がしています。引っ越しをする際に、本が多くて、引っ越し業者の見積りの倍の量の段ボールが必要になった人。本専用の部屋を作ったのにスペースが足りずに、貸倉庫も利用している人。本の重みで床が抜けるのが怖いから、1階にしか住まないと決めている人。これらの本多い人エピソードを同業の知人から聞くと、大変そうだなと思うと同時に、充実した生活を送っているなと思ってしまうのは、私も図書館員だからかもしれません。

さて、本書は蔵書の所蔵方法・整理方法をテーマにした本です。

著者はライターとして活動しており、執筆のために必要な資料を収集するうちに蔵書が増えてしまい、自身の蔵書で部屋の床が抜けないか不安になってしまったことが、本書を執筆したきっかけだそうです。建築家や蔵書家に本の重みによる床抜けの可能性について聞いて回り、本の配置の工夫から書庫づくりまで様々な対策とアドバイスをもらいます。また、単純な蔵書の収蔵方法だけではなく、資料の電子化や持ち主がいなくなった後の蔵書の行方などについても考えていきます。

本との暮らし方を模索した先輩たちの体験が詰まった一冊です。本の置き場所に困っている人も困っていない人も、本好きの方には一読の価値ありです。

【トナカイ】


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