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本蔵-知る司書ぞ知る(104号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2023年6月20日版

今月のトピック 【天気】

6月は梅雨の季節。当館ではこれにちなんで天気に関する本を集めた展示「天気を読む」を開催しています。今回はその展示資料から3冊をご紹介します。

雨と日本人 (丸善ブックス)』(宮尾孝/著 丸善 1997.12)

本書は雨を中心に、天気にまつわる事柄について、俳句、漢詩、J-POPなどを交えながら語ったエッセイ集。天気予報のいう「時々雨」とはどういう意味なのか、「涙雨」の雨量はどれくらいか、雪の日の北海道で本州人を見分ける方法など話題も様々で飽きさせません。ユーモアのある文章で書かれているので読んで楽しく、読み終わる頃には、少し雨を好きになっている一冊です。

空の見つけかた事典:一生に一度は見てみたい』(武田康男/著 山と溪谷社 2022.8)

飛行機の後ろにできる「飛行機雲」、夏の巨大な雲である「入道雲」、晴れた空から降る雪の「風花」。空の現象は多種多様で、誰でも見たことのあるものも滅多に見られないものもあります。「オーロラ」「皆既日食」「環天長アーク」などは見たことのある人はそう多くないでしょう。本書は、そんな空で見られる現象を集めて解説した写真集。美しい写真ばかりなので眺めているだけでも楽しいですし、こんな現象も起きるのかと、空を見上げるのを楽しくさせてくれます。

図説・龍の歴史大事典』(笹間良彦/著 遊子館 2006.3)

天気の展示になぜ龍の図鑑が混じっているのかというと、日本では古くから「龍神が雨を降らす」ということが信じられてきたから。本書は、日本の龍にまつわるお話を集めた本で、日本神話の龍から江戸時代に語られた龍の話まで様々な話が収録されており、その中には雨が降らない時には善女竜王に雨を降らせるように催促に行かせるという話や、祈雨の行事である五竜祭なども紹介されています。

今月の蔵出し

なぜあらそうの?』(ニコライ・ポポフ/作 BL出版 2000.7)

​1938年、ロシアのサラトフという町に生まれた、ニコライ・ポポフ。幼い頃、戦争でドイツ軍によって町が爆撃されるという経験をしており、戦争後には、ドイツ人捕虜の姿や手足を失ってしまったロシアの人達を目の当たりにしています。こうした光景は、著者の幼い心に深く刻み込まれたそうです。

本書は、そんな著者自身の戦争体験や、その後に読んだという様々な文学作品の影響を受けて生まれた絵本です。この本には文章がありません。そのため、絵をよく見て想像力を働かせ、読み手自身が細かくストーリーを考えて自由に解釈することができます。こんなお話です。

緑茂る野原に咲く綺麗な白い花を、どこか穏やかな表情で、見つめる1匹のカエル。そこに突然、地面の下から現れた1匹のネズミ。ネズミはカエルに襲いかかり、カエルが持っていた花を奪ってしまいます。カエルの仲間達が仕返しをすると、ネズミもお返しとばかりに仲間を連れてきます。「やられたらやり返す」をお互いの集団が繰り返し、争いは次第に大きなものに発展していきます。

白く綺麗だった花は踏みつけられ、焼かれ、無残にもボロボロ。緑茂る野原も、荒れた焼け野原となってしまい、そこにカエルとネズミが佇んでいます。

争いの結果、多くのものが失われてしまうということが、最初と最後のページの描写の対比を通して、私の中で強く印象に残りました。

巻末に掲載されている「作者のことば」には、次のように書かれています。

私は子どもたちに、戦争が何の意味もないことや、人はくだらないあらそいの輪のなかにかんたんに巻きこまれてしまうことを知ってほしいと思い、この本をつくりました。本を読んだこどもたちが、将来平和のために何かできるかもしれません。
そして、子どもたちだけでなく、大人にもあらそうことのおろかさをもう一度考えてほしいと思います。

世の中では、争いは絶えません。なぜ争うのか、争って得られるものはあるのか、争う必要があるのか、この絵本を読んで考えてみるのはいかがでしょうか。

【善哉】

釣りバリ歴史・種類・素材・技術のひみつ』(つり人社書籍編集部/編 つり人社 2021.8)

今回は釣りの本です。私自身釣りはほぼド素人ですが、ふーんとなんとなく本書を手に取ったら、そこには想像を絶する広大な宇宙が拡がっていました。釣りバリ。あの数センチに満たない小さな金属に、これほどの工夫が詰まった奥深い世界があろうとは!

本書では釣りバリの歴史や素材、製造工程、魚に引っ掛かるメカニズムなどが丁寧に記述されいずれも興味深いですが、最も驚いたのが第2章「釣りバリ各部の名称と効果」。各部って、あの小さいハリに部分なんてあるの?なんていうド素人の私、それぞれミリ単位の各部に名前と重要な役割があるなど、露も知りませんでした。タタキ、チモト、ケン、フトコロ、カエシ、イケ先…またハリの曲がり方のパターンの差、例えば曲がり方の最深部が軸寄りかハリ先寄りか。そのハリ先の角度。1ミリに満たないカエシの大小など。その種類や加工の細かさに唸るばかりです。これらは仮に同一魚種を狙うにしても、地域や季節、餌の選択や潮の具合など状況により最適なものを微調整し最大釣果を狙うためのものとのこと。魚種毎に細かくハリの種類があることはなんとなく知っていましたが、全くそれどころではない。うーんなんと奥が深い。魚が本書を読んだら恐怖のあまり卒倒するでしょう。太古の昔から魚と格闘してきた人類にも思いをはせながら、今日も安いハマチの切り身でも買って帰ろうと思うのでした。

当館では、本書のような釣り道具に関するものは他にも『釣りの「仕掛け」検索』、『海釣り仕掛け集』、『バンブーロッド教書』、『バスルアー図鑑』等々、いくつか所蔵があります。私のように実践はなかなか、という方でもなんとなく詳しくなった気がして楽しめます。また『釣りの名著50冊[正]、続』などを片手に、釣りの風雅を知り尽くした文人達の言葉に遊ぶのもよいでしょう。いつかは大物を…と夢想しつつ、大阪府立図書館で釣り人気分に。鬱陶しい梅雨時にもってこいの娯楽ではないでしょうか。

【T】


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