本が棚に並ぶまで

 図書館には、カウンターにいる職員だけでなく、利用者の方々からは見えないところで働いている職員もいます。資料情報課もそんなところです。

 資料情報課の仕事は、図書館の蔵書となる資料(日本語の本、外国語の本、雑誌、オーディオビジュアル資料等)を選び、注文し、受け入れ、そして館内にある端末やご家庭のインターネットを使って検索できるようにデータを入力し、目録を整えることです。では、図書館の資料は、どういう流れで利用者の方々のお手元に届くのでしょうか。日本語の本を例に説明したいと思います。

運び込まれた本
運び込まれた本の画像

まずは本選び

 中央図書館には、「大阪府立中央図書館資料収集方針」があり、その方針に沿って本を選びます。
 毎週月曜日に本の取次ぎ店から大量の本が搬入されます。週によってばらつきはありますが、毎週約600冊ほどの本が搬入されます。その本を1冊、1冊内容を見て、購入するかどうか検討します。この作業を「見計らい」と呼びます。見計らいには資料情報課の職員だけでなく、閲覧課の職員(カウンターにいる職員)も参加します。見計らいは、その週の水曜日まで行い、木曜日の午前中に購入する本を決定します。月曜日の大量搬入以外にも随時、書店から見計らい用の本が届きます。大手の出版社だけでなく、地方の小出版社の本を扱っているところからも見計らい用の本が届きます。これらの本もその週のうちに購入するかどうか決定します。

 見計らい以外にも、購入するべき本をもらしていないか、出版情報誌などをくまなくチェックします。新聞に書評が載った本は、必ずチェックします。
 また、購入する本だけでなく、寄贈をお願いする本も選びます。新聞等に紹介された本や、国立国会図書館の目録をみて寄贈をお願いします。平成18年度は、利用者の方々から頂いた本もあわせて日本語の寄贈の本だけで約15,000冊の本を受け入れました。

 日々出版される大量の本の中から、予算の枠内で偏りのないよう、利用ニーズにあった本を選ぶのは、資料情報課の仕事のなかでも一番の柱となる仕事です。   

データ入力

 購入する本が決まったら、本のタイトル、著者、出版者、分類などの書誌事項をコンピューターに入力します。このデータは、時間と労力の省力化のため民間の書誌事項作成業者から購入しています。図書館では、このデータと各々の本の資料番号などの情報をマッチングさせ受け入れます。そして、請求記号(本の背番号にあたるラベルの記号)を決定し、入力すると、館内にある端末やご家庭のインターネットの端末で検索できるようになります。この段階では「受入予定」と表示され、新着資料一覧に表示されます。

 装備

 図書館の棚に並べるためのラベルを貼ったり、大阪府立図書館の本であることを示す印を押したり、汚れや傷みを防ぐためのフィルムコーティングをします。

バーコードを貼っているところです
バーコードを貼っているところの画像

いよいよ本棚へ

 ラベルの貼り間違え等がないかチェックした後、本を閲覧課の職員に引き渡します。月曜日に搬入された本は、翌々週の水曜日に引き渡されます。
 閲覧課では、本に各室のシールを貼ったり、図書館内のどの場所にあるのかを示すデータ等をコンピューターに入力します。
 そして、いよいよ新刊棚へ置かれるのです。どうぞたくさんご利用ください。

修理

 図書館で購入した本は、府民の財産であり、後世に残していく知識の宝として、永久に保存します。しかし、残念ながら、物としての本は傷んだり、破れたりします。利用に支障のないよう、出来るだけ修理をするのも大切な仕事です。
 では、どのように修理しているのかをお話したいと思います。
 表紙が傷んで欠けてしまっている本や、製本の綴じが弱ってしまって何カ所も糊付けしなければならない本等、館内で修理できそうにない本は、専門の製本業者に修理に出します。この場合、新たな表紙が付けられるために、その本の印象が変ってしまいます。

はがしたり外したり

 初めに、市販のセロハンテープが貼付してあればすべてはがします。その時にページの表面も一緒にはがさないようにしなければいけないので、慎重を要します。特に文字にかかってしまっている部分は、文字まではがれないように、より慎重に行います。セロハンテープは貼付すると、やがてテープの端からべたべたするものが出てきて埃等が付着して汚れやすくなり、更に時が経てば接着力が落ちてしまいます。そうすると、自然にはがれてそのページは外れてしまい、後には茶色のテープ痕が残って醜くなってしまいます。永久保存しなければならない府立図書館の本を、このような状態のままにしておくことはできません。中には、セロハンテープでわざわざ修理して下さる方がおられますが、傷んだところがあれば修理せず、返却時に遠慮なく指摘して下さると助かります。

セロハンテープの跡
セロハンテープの跡の画像

 次に外れかけているページのところは外します。ステープラーの針はその厚さのために製本が傷む原因にもなり、更には金属のため、いずれ酸化して赤錆が出てページが汚れることにもなるので外します。

 前に利用された方が引かれたであろうと思われる傍線や書き込みがあれば、可能な限り消します。

書き込み
書き込みの画像

欠落ページを補充する

 欠落したページは、 同じ本を捜し出し複写します。古い時代には府立両館で2冊以上受け入れている場合もあるので、その場合の補充はわりに容易ですが、現在は、本は原則1冊しか買えませんので、大阪府内外の図書館等からの取寄せに頼ることになります。

ばらばらになって傷んだ本
ばらばらになって傷んだ本の画像

実際の複写

 そうして借りてきた本を複写します。ページのおもて面の複写は簡単ですが、裏面の複写をするときには、そのおもて面と合うように複写しなければならないわけです。これが簡単なようで結構難しい。複写機が更新される都度、置き方や用紙の大きさ、向き等、やり方を失敗しながらも会得し直しています。

裁断

 複写が終ればそのページの大きさに裁断しますが、わざと元の大きさより1o程度小さく裁断しています。糊付けの際の多少の伸びやズレで本を閉じたときに、はみださないようにするためです。ミリ単位の作業になりますが、仕上がりを考えてこのようにしています。少しのページなら手動のカッター、分厚くなれば電動の裁断機を使用します。はさみは歪むので使いません。

裁断機
裁断機の画像

糊付け

 次に糊付け作業ですが、糊は製本用糊を使用しています。この製本用糊は、下手に貼付してしまってもはがして再度貼付できる点と、溶剤が水であるため、製本用糊が容器に残り少なくなって硬くなってきても、水を加えて軟らかくして使い易くできる点で、重宝しています。糊の量は少なすぎても多すぎてもいけません。少なすぎるとまた外れてしまい耐久性に欠けます。多すぎると隣のページ同士ののりしろの部分が必要以上に多くなってしまい、場合によっては文字が隠れてしまいます。

仕上げ

 糊付けの後、元のところにピッチリ合わせて綴じます。
 ピッチリ合わせて綴じた後は、よくくっつくように糊が乾くまで圧力を加えておきます。通常一晩置いておきます。翌朝、修理の出来ばえを見ますがパラパラとページを繰ってみて異状があれば再度、修理を行います。異状が無ければ修理完了です。

本を押さえているところ
本を押さえているところの画像

選ばれ守られてきた資料を後世に伝えるため、どうぞ大切にご利用ください。

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