としょかんせんなりびょうたん
(資料紹介のページ)
2008年12月掲載
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 偲ぶー2008年
 2008年も、多くの方が惜しまれながらこの世を去られました。その中から数人の方の業績を、図書館所蔵資料でご紹介します。
 当館1階小説読物室でも、12月1日からミニ展示「〈追悼〉2008年になくなられた方々が遺した小説・随筆・ルポルタージュ」を開催します。
 
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幼ものがたり
石井桃子 著 吉井爽子 画 (福音館日曜日文庫) 福音館書店 1981年1月刊
『幼ものがたり』表紙画像
 石井桃子さんは『ノンちゃん雲に乗る』(福音館書店 1967年刊)(光文社 1956年刊)の著者として、また『熊のプーさん』『ピーター・ラビットの絵本』など数々の名作の訳者として知られる児童文学者です。 101歳という長寿を全うされましたが、この本は、雑誌に連載された幼いころの思い出をまとめたものです。
 祖父母、父母、姉四人、兄一人と、「まあちゃん」と呼ばれる親類の男性の、あわせて11人の大家族の中で、石井さんは末っ子として育てられます。 この本が発行された1981年には、それらの人たちはすべて他界されており、枝の先にたったひとつ残された柿の実のような気持ちだと記されています。 もはや確認のしようもない、幼い日の記憶。描かれた明治・大正の風習・風景もすでにかわってしまったり、なくなったりしているにもかかわらず、美しい日本語で淡々と紡ぎだされると、懐かしい情景、ごく親しい人たちのようにありありと甦ります。
 (石井桃子 2008年4月2日没)

 
老年礼賛 鶴見俊輔・岡部伊都子の対話 藤原映像ライブラリー (DVD)
鶴見俊輔 出演 岡部伊都子 出演 藤原書店 2005年2月刊
『老年礼賛』外観画像
 これは鶴見俊輔氏が、岡部伊都子さんの京都のご自宅を訪れて対談されている様子を収めたDVDです。 そのご自宅では何度も共通の友人を交えてご飯を食べたりすることがあったようで、今回も互いの話を楽しんで寛いでいる雰囲気が伝わってきます。
 お話は、鶴見氏の傾倒する人や思想から、岡部さんの亡くなった婚約者を想う気持ちなどに続き、最後に80歳を越してからの「老年の自由」について語られます。
 岡部さんが「ずっと死ぬと思いながら生きてきました。 戦争で死ぬ、病気で死ぬ、と。 今こんな年になりましたけれど、死ぬ準備はすっかり整いました」と言うと、鶴見氏が「あなた方(スタッフたちを指して)は誤解している。 年をとることはつらいことだと思っているだろう。年をとるということは、若さからの解放なのだ。 自由になるということなのだ」と返します。
 岡部さんが手を叩いて鶴見氏の言葉に賛同している姿が、とても静かで印象的です。 お二人の思想が肉声を通じて直接響いてくる映像を、お楽しみください。
 (岡部伊都子 2008年4月29日没)

 
いっぱしの女
氷室冴子 著 筑摩書房 1992年5月刊
『いっぱしの女』表紙画像
 『なんて素敵にジャパネスク』『クララ白書』『雑居時代』・・・今、ヤングアダルトのみなさん、そして、かつてヤングアダルトだったみなさんも、一度はこれらの本を読み、平安時代の姫君になりたくなったり、寄宿舎生活に憧れたりしたことがあるのではないでしょうか?
 今回、ご紹介するのは、数々のヤングアダルトの名著を生み出した氷室冴子さんが書いたエッセイです。
 世間にふりまわされることなく、凛とした視線で書かれるエッセイは、彼女が作り出した小説の中の少女達を彷彿とさせます。文庫版 (筑摩書房 1995年刊)も所蔵しています。
 著者の小説は全て読みつくしてしまったという方へ
氷室文学の評論ものっている『氷室冴子読本』(氷室冴子責任編集 徳間書店 1993年7月刊)や、氷室さん自身のお勧め本の紹介『ホンの幸せ』(集英社 1995年9月刊)はいかがでしょうか。
 (氷室冴子 2008年6月6日没)

なんて素敵にジャパネスク』(全8巻)氷室冴子 著 集英社 1999年4月刊
クララ白書 1』(全2巻)氷室冴子 著 集英社 2001年6月刊
クララ白書 1』(愛蔵版)(全2巻)氷室冴子 著 集英社 1996年5月刊
雑居時代 1』(全2巻)氷室冴子 著 集英社 1997年1月刊

 
パンプキン・ムーンシャイン
ターシャ・テューダークラシックコレクション ターシャ・テューダー著 ないとうりえこ やく メディアファクトリー 2001年11月刊
『パンプキン・ムーンシャイン』表紙画像
 87歳で新作絵本を出版した著者。 作品だけでなく、アメリカ・バーモンド州の山中の、広い庭に囲まれたコテージで、近代設備を最低限に抑え、昔ながらの、ほとんど自給自足の暮らし方・生き方に注目があつまりました。
 当館でも、人気著作を多数所蔵していますが、その中から、今回画像でご紹介するのは、著者が23歳でデビューした絵本の日本語版です。 初版ではありませんが、同じ絵本の英語版『Pumpkin moonshine』(Tasha Tudor collection  by Tasha Tudor Simon & Schuster Books for Young Readers 2000年刊)も所蔵しています。
 英語版の表紙の地色はかぼちゃ色で、日本語版はクリーム色、2冊並べると、地色の違いで変わる印象もお楽しみいただけます。
小径の向こうの家 母ターシャ・テューダーの生き方』(ベサニー・テューダー 著 食野雅子 訳 メディアファクトリー 1999年2月刊)では、長女べサニーが母を語ります。  『生きていることを楽しんで ターシャ・テューダーの言葉 特別編』 (ターシャ・テューダー 文 リチャード・W.ブラウン 写真 食野雅子 訳 メディアファクトリー 2006年12月刊) は、91歳の著者からのメッセージです。
 (ターシャ・テューダー 2008年6月18日没)

 
大野晋の日本語相談
大野晋 著 朝日新聞社 2002年8月刊
『大野晋の日本語相談』表紙画像
 ベストセラー『日本語練習帳』 (大野晋 著 岩波書店 1999年1月刊) の著者が、日本語の相談に答える一冊。
 形容詞が名詞を修飾する場合、「大きい〜」「小さな〜」という使い方をしますが、「大きなお世話」という表現では「大きいお世話」とは言いません。 そんな形容詞の語尾の違いをはじめ、日常の日本語に疑問を持つ方々からの問いは、なるほど!と思うものが多くあります。 この本を読めば、普段、何気なく使っている日本語のひと言ひと言に文法や語源が深く関わっていることに気づかされ、正しい日本語を後世に伝えていきたいと思うことでしょう。
 巻末には「座談会、大野晋氏に聞くタミル語・日本語起源論争の現段階」が収録されています。
 (大野晋 2008年7月14日没)

 
トキワ荘のヒ−ロ−たち 漫画にかけた青春
豊島区立郷土資料館編集 豊島区教育委員会 1986年刊
『トキワ荘のヒ−ロ−たち』表紙・裏表紙画像
 「これでいいのだ!」の天才バカボンをはじめ、ギャク漫画のイメージが強い赤塚不二夫さんですが、初期は少女マンガを描いておられたそうです。 そんな駆け出し時代を過ごされた「トキワ荘」は、数多くの漫画家が暮らした所として有名です。 赤塚さんが、トキワ荘で、どんな仲間とどんな青春を過ごされたのか、お楽しみください。 なおこの資料は、すでに絶版で、編者の豊島区立郷土資料館にも在庫はないそうですので、図書館でごらんください。
 さて、時は流れ2000年。 『よーいどん! 赤塚不二夫のさわる絵本』(赤塚不二夫著 小学館 2000年9月刊)、『ニャロメをさがせ! 赤塚不二夫のさわる絵本』(赤塚不二夫著 小学館 2002年10月刊) という点字絵本が発表されました。 『よーいどん! 赤塚不二夫のさわる絵本』最終ページ「みなさんへ」の温かいよびかけの言葉は、ぜひご一読ください。
 (赤塚不二夫 2008年8月2日没)

(子どもむけの点字の本をお探しの方へ
当館こども資料室内には、“目の見えない子どもにも本を”という願いから誕生した民間の文庫「わんぱく文庫 」のコーナーがあります。 )

 
建築家の自由 鬼頭梓と図書館建築
鬼頭梓著 鬼頭梓の本をつくる会著 建築ジャーナル 2008年6月刊
『建築家の自由』表紙画像
 「戦争で破壊された生活の根拠地を作りたかった」ので建築家を目指したとインタビューで語った鬼頭梓氏。
 おいたちから、建築家としての信念、建築設計時の逸話、建築物のアフターケアへの懸念などを語ったインタビュー、論考のほか、関係者の寄稿を収めた本書に掲載されている図書館の写真は、完成したての建物ではなく、実際に利用されはじめてからの様子を写したものばかりです。
 大阪府内の公共図書館では、茨木市立中央図書館と熊取町立熊取図書館(大阪都市景観建築賞大阪府知事賞受賞)が、鬼頭梓建築設計事務所の作品です。
 (鬼頭梓 2008年8月20日没)

私の図書館建築作法 鬼頭梓図書館建築論選集・付最近作4題 LPDシリーズ 3』 鬼頭梓 著 図書館計画施設研究所 1989年9月刊
図書館建築作品集』鬼頭梓建築設計事務所 企画・編集 鬼頭梓建築設計事務所 1984年12月刊

 
スティング(DVD)
ジョージ・ロイ・ヒル 監督 ポール・ニューマン 出演 ロバート・レッドフォード [ほか]出演 ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2006年9月発売
『スティング』外観画像
 主役を演じたポール・ニューマンは、この映画公開の1974年から4年後、愛息スコットを、父親の名声の重圧に耐えかねた結果のドラッグと飲酒のため亡くし、その後、麻薬撲滅の基金を設立しました。 また後年、自身の興した食品会社が成功すると、純利益を貧困にあえぐ世界の子供たちに寄付するなど、社会的貢献でも知られるようになりました。
 さて、この映画は30年以上前の公開ですが、今でも娯楽映画の大傑作にあげられます。
 1936年シカゴ。詐欺師のフッカー(R.レッドフォード)は通りすがりの男からいつものように金を騙し取りますが、通行人は大物ギャング、ロネガンの手下で、金は賭博の上がりでした。 その報復で仲間を殺されたフッカーは、復讐を誓って伝説の賭博師ゴンドルフ(P.ニューマン)を訪ねます。 ロネガン相手に二人は一世一代の大バクチを企てますが‥‥。
 ストーリーは二転三転し、演出もテンポよく、主役も脇役も芸達者で、ラスト・シーンまで目が離せません。お楽しみください。
 (ポール・ニューマン 2008年9月26日没)

 

作成:資料情報課


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