『若者ダンスカーニバル in 大阪府立中央図書館』の実施について

1.はじめに

2007(平成19)年2月に第1回ダンスカーニバルが開催され、今年(2010年)で4回目を迎えた。ダンスカーニバルとは、大阪府立中央図書館のライティホールで、若者にダンスの発表をしてもらうイベントである。

図書館とダンスという一見意外な組み合わせが府民に受け入れられ、毎年大盛況である。本文では、この催しがどのような経緯で始まり、現在に至っているのかを振り返り、今後の展望についても考察する。

2.きっかけ・コンセプト

 10代の図書館の利用者が少ないので、ヤングアダルト(以下、「YA」とする)を図書館へ来てもらう方法を考えていた。YAに対する取り組みはこれまでにも、漫才師や人気マジシャン、ラグビー選手(花園ラグビー場のある東大阪市という立地から)の講演などをおこなったが、いずれもYAと図書館を結びつけるには至らなかった。

その頃、当館閉館後の時間帯に図書館前の広場で、館外側のガラスを鏡に見立てて、一晩に3、4組の若者たちがダンスをしていた。そこで、YAに図書館への関心を持ってもらうためには、ダンスをきっかけにすればいいのではないかという意見が出され、ダンスカーニバルが企画された。

3.ダンスカーニバルについて

 ダンスカーニバルの運営は、館内でチーム(2009(平成21)年度は、社会教育主事2名、司書8名の計10名)をつくっておこなっている。司書は、閲覧課、企画協力課、資料情報課など様々な課のメンバーで構成されている。

 申し込み締め切りは2学期期末考査後の12月中旬に、ダンスカーニバルは2月中旬の入試日程との兼ね合いを見計らって、生徒が参加しやすいと思われる日を選んでいる。

ダンスカーニバル前々日にステージの照明装置などの設置を、前日にリハーサルを行う。前日と当日は、総務課職員全員、司書8人(交替制)で、受付、貴重品の管理、更衣室などでの見守り、観客の入場制限などの業務に携わる。

 10月に広報をおこなった。広報は、当館ホームページ、館内掲示、館内配布チラシ、報道機関への情報提供、関係機関(府内の高校、教育委員会、府関係施設など)へのチラシの配布を行った。

 応募年齢については、高校生世代が中心となることから16〜25歳としている(1)。 タイムスケジュール(2)は、演技、入れ替え時間を含めて、1チーム4分の持ち時間となっているが、参加者が時間を守ってくれているので、時間超過したことはない。

 平成21年度は、71チームの応募があり、29チームが出場となった。(1チームは、体調不良のため、欠場した。)出場者数は約290人、観覧者数は約700人であった(3)

3.第1回開催に際して

 応募締め切り3日前に、数チームしか申し込みがなかったため、社会教育主事が、関係のある高校の校長先生に電話をし、参加を依頼した。最終的には、30チームを上回る応募があった。当初より「31チーム以上の応募があった場合、抽選により30チームとすること」としていたが、第1回のみ特例として、午前・午後の2部構成とし、全チームが出場できることにした。第2回以降も、締切日直前の2日間に申し込みが集中する傾向がある。

照明、音響については、ホール委託の専門業者に委託している。第1回時には、リハーサル、本番の運営方法をホールを使ってダンスの発表会をしている団体の先生にノウハウを聞いたり、高校のダンス部顧問の先生に話を聞いたりして参考にした。

 会場については、更衣室、練習場所の確保が必要である。更衣室については、図書館の施設内に会議室、楽屋、シャワー室などがあるため、問題はなかった。練習場所については、図書館前広場(男女ともに可、雨天中止、音楽禁止)と、2階大・中会議室(女子更衣室、兼女子のみ練習可)を提供している。 

図書館前広場を練習場所として、提供するかどうかについて、参加者間や地域住民とのトラブルが懸念されたが、音楽は禁止という条件のもとで提供し、問題は起きなかった。これらの点は、参加者の協力に負うところが大きく、感謝している。

 ダンスの評価(順位付け)をするかどうかについて、館内で意見が分かれた。プロや専門家が審査して順位を決めるという仕方はやめようということになったが、出場者にとって、順位や採点がないというのはものたりないのでは、という意見もあり、出場者が相互に評価することとし、出場の条件としてチームから1名審査員を選出し自分のチーム以外を採点してもらった。

 参加者の怪我などに備えて、傷害保険に入ったが、幸い事故などは起きていない。喧嘩、痴漢、病気、怪我など危機管理マニュアルも事前に作ったが、トラブルは全くなかった。

 会場の照明、音響、司会(プロ)などには予算が必要であるため、当館の委託費と、第3回時から、府の受益者負担という方針により集めている1人当たり500円の参加費によってまかなっている。

5.図書館利用の促進として

 そもそもYA世代に図書館をもっと利用してほしい、という思いから発案された企画ということもあり、プログラムの中に「図書館サービス紹介タイム」を設けている。ダンス終了後、得点発表までの待ち時間の30分程度を利用し、始めに図書館の紹介VTRを上映し、その後、パワーポイントを使って司書が図書館案内をしたり、参加者から事前に受け取った質問に答えたりした。

 第1〜4回まで開催してきて、ダンスカーニバルがYA世代の直接的な利用増に、結びついているとは言いがたいが、一翼は担っているものと考えられる。というのは本イベントを心待ちにしている高校のクラブなどが相当数あるということから、「図書館でダンスができる」すなわち「自分たちの活動発表の場としても図書館はあるのだ」ということはかなり浸透してきているようである。このことから、ダンスカーニバルに参加したことで、図書館の敷居を少しでも低く感じられるようになってもらえたのではないか、というてごたえを感じている。 

6.今後の展望

 一朝一夕に結果の出ることではないが、参加者からダンスカーニバルを今後も続けてほしいとの声が多数あり、当館としても、毎年恒例のイベントとして続けていきたいと考えている。このイベントを定着させ、更に発展させていくことで、YAに対するサービス推進、ひいてはYA世代の利用者の増加の突破口になるのではないか。

 ダンスカーニバルをおこなうことにより他の業務への影響も見られる。例えば、イベントに合わせて関連資料の展示をおこなっているため、資料収集の面で、ダンス関係の資料にも以前より気を配るようになり、当館の資料収集方針の範囲内で、収集をしている。    

また、同時期に、当館1階のエントランスギャラリーにおいて、前年度のダンスカーニバルの記録写真展をおこなっている。

そのほか、イベントを実施するにあたって社会教育主事と司書が連携することにより、多面的な見方ができ、関係機関とのつながりなども相互に利用し合うことができている。これは、大きな財産であると思う。今後もこの協力体制を強化していくことが必要不可欠だと考えている。 

※参考
H21年度
http://www.library.pref.osaka.jp/central/syogaigakusyu/2115dansu/2115dansu.html

※注

(1)第1回は、応募年齢を16〜30歳としていた。

(2)タイムスケジュール
13:00〜13:30 審査員への説明会
13:30〜15:30 ダンス発表TIME
15:30〜16:00 図書館サービス紹介TIME
16:00〜16:30 得点発表TIME

(3)出場人数など

※本稿は、「特集 図書館のイベントNOWの川端康之氏へのインタビュー『若者ダンス・カーニバル in 大阪府立中央図書館』を開催して」(『みんなの図書館』No.364 2007.8)を参照して記述した。