_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/    中之島図書館メールマガジン   【臨時:第31号】 2006/10/27 _/                ☆★文字・活字文化の日特集号★☆               _/  _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ビジネス支援と大阪資料・古典籍_/_/_/_/_/_/_/_/   =========================== ■ 文字に関する2つの話 ===========================   本日、10月27日は文字・活字文化の日です。  これにちなみ、今回は文字に関する2つの話をお届けします。 ====================== (1) 世界の文字から ======================   文字を発明し、これに託すことで時間や空間を超えて人類は自分の思いを  いろいろな人たちに伝える手段を得ました。  またその一方で、これを受けた人たちが知らない時間、知らない土地に  想いをはせることも可能となりました。  そんな文字は世界のさまざまな場所で独自に発展して、現代にいたっています。  グローバリゼーションの最中にあって、少数の言語が消滅の危機を迎えている  との記事も眼にしますが、ここでは世界の文字についてすこしばかり  ご紹介したいと思います。  国立民族学博物館の『月刊みんぱく』の28巻4号(通巻319号)2004年4月から  第30巻3号(通巻342号)2006年3月まで「手習い塾」と称したコーナーが  ありました。ここでは世界のさまざまな文字について日本語の50音に合わせて  わかりやすく記述されています。  ちなみにどのような文字が取り上げられたのか列記してみます。   マヤ文字 2004年4月〜6月   ハングル 2004年7月   神代文字 2004年8月   アラビア文字 2004年9・10月   「ひげ文字」 2004年11月   ビルマ文字 2004年12月・2005年1月   西夏文字 2005年2・3月   点字 2005年4・5月   モンゴル文字 2005年6・7月   デーヴァーナーガリー文字 2005年8・9月   楔形文字 2005年10・11月   エジプト文字 2005年12月・2006年1月   エチオピア文字 2006年2・3月  今は使われていないマヤや西夏、エジプト文字。ハングルなどの  なじみのある文字。  なじみはなくても多くの人たちに使われているアラビア文字、  デーヴァーナーガーリー文字やエチオピア文字など。  アラビア文字を使う人たちはローマ字に次いでたくさんいるとのことです。  神代文字は古来日本で漢字が伝来するまでに文字がないと言われていた中で  独自の文字を持っていたと主張する人たちの言う文字です。  この神代文字について記述した最も有名な人物が平田篤胤です。  また「ひげ文字」はドイツ特有の表記方法で、装飾性がよく、ビールのラベルに  書かれているので、よく目にするのではないでしょうか。現代のドイツでは  ローマ字を基本としていますが、きっかけはナチス統治時代の1941年に占領地の  宣撫工作に支障があるとしてローマ字化したと言われています。  デーヴァーナーガリー文字はインドの文字です。この項を執筆町田和彦氏は、  アジアほど多くの文字を生み出した地域はない、ということです。  コミュニケーションを図るという意味で、点字も文字となります。自身も  全盲だったフランス人ルイ・ブライユ(1809〜1952)がフランス軍の用いていた  暗号「夜の文字」をヒントに創作したものだそうです。  現代の日本語の50音順を、これら文字で表現できる表がついています。  一度ローマ字以外の文字でお名前を書いてみてはいかがでしょうか。  追伸 メールマガジンでは、これらの文字をみなさまにお届けすることができません。     このコーナーは『月刊みんぱく』の28巻4号(通巻319号)2004年4月から     第30巻3号(通巻342号)に記載されています。中之島図書館で閲覧できます。     専門家による詳しい説明も載っています。是非手にとってみてください。     国立民族学博物館編集『月刊みんぱく』から多大なご教示を得ました。     執筆者の皆様に感謝いたします。  当館では、文字・活字文化の日にちなんで11月10日から翌年1月10日まで  大阪資料・古典籍室1において「古典籍資料のなかの外国語」の小展示を行います。  ぜひ、お越しください。 ======================================== (2) 本の話(番外編)   江戸から平成へ 出版文化を伝える ========================================   ただ今このメールマガジンで連載中の本の話。本の作り方や、  本にして残していく人々の思いなど、本に関する話題を今後も提供して  いければと思っています。  たくさんの人が「本」にかかわってきたおかげで、私達は今日  さまざまなことを知ることができます。  未来は過去の応用問題といいます。過去を知ることで何か  発見できることがあるかもしれません。  今回は江戸時代の大阪の本屋の活動を伝えた中之島図書館の活動について  お話しします。  江戸時代の出版に大きな変化がおとずれたのは、名奉行で知られる  大岡越前守が進めた出版に関する条目によってです。  享保7年(1722)11月の町触に、新たに出版するときは、作者と版元の実名を  奥書に入れること、という一項が入りました。これは海賊版を締め出し、  出版権を確立した画期的なとりきめでした。逆を言えば、それまでは勝手に  作った偽版が横行し、苦労した原本の努力が報われない側面がありました。  それが原因の争いも起きていて、出版活動のさまたげとなっていました。  出版条目に合わせて書店側も、同業組合というべき「本屋仲間」を結成しました。  まず、京都に、次いで江戸、そして大坂本屋仲間が発足したのは  享保8年(1723)でした。  本屋仲間では、本を出版する際に版元の本屋から提出された草稿を調べ、  既刊書との重版、類版とのチェックを行っていました。また、勝手に出版された  本を吟味したり、重版、類版の紛争の調停も重要な仕事でした。  こうした活動をおこなった大坂本屋仲間は明治5年(1872)まで存続し、  近世出版活動に関する資料を蓄積していきました。明治以降のものも若干含めた  これらの記録は26種、194冊が伝えられました。  この記録を、昭和20年(1945)3月に当館が保管することとなりましたが、  当館の搬入の翌日には大阪大空襲があり、それまで保管されていた場所も  被災してしまいました。記録は間一髪で戦火を逃れ、今日にこの記録を  伝えることができたのです。  江戸、京都の「本屋仲間」の記録は大火、大地震、空襲などで失われ、  ほとんど残っていないこともあり、この大坂本屋仲間の記録は江戸時代から  明治中期までの出版史、出版事情が明らかとなる非常に貴重な資料です。  昭和の初めには、この記録を使って『京阪書籍商史』『享保以後大阪出版書籍目録』  が出版され、復刻版が出るなど今日でも重宝されていますが  いずれも膨大な全記録からいえば、ごく一部にすぎず、戦後においても記録全体の  翻刻・刊行を希望する声は長く続きました。しかし、それの要する労力と  資金の面から商業出版には至りませんでした。  そこで、有益な資料を多くの人々に利用してもらうことが図書館の使命と考え、  保管する当館自らが公費でその任に当たり、この埋もれた資料を世に広め、  活用を図ろうと企画しました。  そうして、第1巻が出版されたのは昭和50年(1975)3月のことで、全18巻に及ぶ  『大坂本屋仲間記録』は平成5年(1993)3月に完成しました。  平成7年にはこの『大坂本屋仲間記録』が、商業ベースになりにくい膨大  かつ貴重な資料を公費で出版したことは日本の出版印刷史、文化史研究に  大きく寄与したとして、第16回日本出版学会賞特別賞を受賞しました。  インターネットの普及で、出版の世界も大きく変わってきていますが  このメールマガジンも含め、これからもずっと中之島図書館も  出版文化に貢献できるよう努力していきたいと思います。   ---------------------------------------------------------------  >> 次回は11月1日(水)発行予定です。 --------------------------------------------------------------- ◇ このメールマガジンは、ご登録を頂いた方に送信しています。 ◆ メールマガジンの登録、解除はこちらから。   http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/m_index.html ◇ このメールは配信専用です。お問合せは電話(06-6203-0474)まで。 ◆ 編集発行 大阪府立中之島図書館 広報委員会メールマガジン担当            大阪市北区中之島1丁目2番10号 / TEL 06-6203-0474            http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/            http://www.library.pref.osaka.jp/m/nakanoshima/ (携帯用) --------------- 中之島図書館メールマガジン  第31号(2006/10/27)---