大阪府立中央図書館だより はるみや 1998.新春号 No.4 目次 我が街の図書館から想う 副館長 土井忠夫 こども資料室のご案内 社会自然系資料室のご案内 大阪府立中央図書館生涯学習事業のご案内 Mini Mini NEWS   入館者100万人!!  上田正昭名誉館長「大阪文化賞」を受賞  イタリア・ファシズム関係の図書が寄贈される  第13回ニッサン童話と絵本のグランプリ大賞作品寄贈される 我が街の図書館から想う 副館長 土井忠夫  図書館勤務を命ぜられるよりも、ずっと前から街の図書館の愛用者だった。図書館の運営にあたって利用者の目を忘れてはならないと思っている。  私の街の図書館は20年程前に、それまで、ある役所だった建物を改装して出発したと記憶している。  ごく小規模で、関覧席も10席程度だ。利用者は主婦や老人が多いように感じられる。近くにスーパーなどもあって買物のついでに立ち寄る。府立図著館で借りようとすると、予約の順番が回ってくるまで半年かかるベストセラーでも、この図書館でなら、それほど待たず借りることができ、便利だ。でも、開館当初から愛用していたわけではない。  サラリーマンが図書館へ行けるのは休日に限られる。休日は勤務によって様々である。以前はよく私の休日と図書館の閉館日が重なって利用できなかった。それが今では、月末と年末年始以外は開館しているので安心して行けるようになったのだ。来館者を見ると私と同様で、勉強、調査、研究ではなく、何か面白い読み物はないか、旅行や趣味のガイドブックはないかと、ブラウジングしている人がほとんどである。  プライバシーが守られ、無料で、静かで、1人だけで利用できる図書館は、特別の目的なしに立ち寄っても新たな本との出会いが期待できて楽しいものだ。  税金も、図書館を利用することでかなり還元できる。  今後、私のような図書館利用者は増え続けるだろう。その人達の要求の第1は開館日を増やせ、である。これに対応していくのは大変だ。増員できればよいのだが今の時代、増員は難しい。おもいきった事務の整理、簡素化が必要となってくる。  次に、街の図書館から、自転車で20分程行くと、市の中央図書館に着く。ここは15年程前に図書館として新たに建設された施設で、広くて、資料も豊富であり、閲覧席も多い。本を借りるだけでなく、自習もでき、種々のしらべものもできる。いつも静かな街の図書館と比べると活気がある。学生が勉強に来れるからだろう。  ここでは、全市民からの様々な資料要求に応えていかねばならない。図書館利用者の増加から、レファレンスの要求は多様化し専門化していく、このため資料を入手するルート、近隣の市や府との協力体制の整備が大きな課題となってくると思われる。  しかし、それでも「市の図書館には昔の資料がないので調べものをするには不便、やっぱり府立へ通わねばならない。」という声がある。(大学図書館は自由には利用できないようだ。)専門的に勉強する人には、過去の研究資料や統計が必需品であるが、歴史の浅い市立図書館が昔の資料を収集、保存しておくのは困難である。もっとも、請求すると府立や近隣の図書館に問い合わせて取り寄せてくれる。しかし時間がかかるのはやむを得ない。  このように考えてくると、利用者から見て、近くにある街の図書館は、いつでも開いていて、新しい小説・読物類を借りるのが便利なところ。中央図書館は、勉強もできるところ、資料を集めてもらえるところ。府立図書館は、調査・研究もできるところ、となる。  もちろん、これ以外に図書館の立地場所や時代によって様々な機能が要求されてくる。しかし府立図書館にとっては、古くからの資料の収集と整理、保存が重要だ。 こども資料室のご案内  こども資料室は赤ちゃんからお年寄りまで誰でもが入れる部屋です。誰もが楽しい本とであえる所です。この部屋は大きく分けて4つのゾーンに分かれています。絵本ゾーン、読み物ゾーン、知識の本のゾーン、大人のための研究資料ゾーンです。小さなこどもたちは木馬や汽車型絵本架で遊んだりしながら好みの絵本を探すことができます。読み物は低学年と高学年に分けて、それぞれにたくさんの本を表紙をみせて並べてあるので、大きい子も小さい子も自分にあった本が探せます。こども資料室には約2万冊の本を開架していますが、カウンターバックの書庫には約5万冊の本があります。  面白い本を探したい時、読みたい本が見つからなかった時、調べ物をしたいけれどもどの本を探したらいいのか分からない時、こどもにどんな本を薦めたらよいのか分からないお父さんやお母さん、どうぞ何でも、お気軽に職員にお尋ね下さい。 外国語の絵本がたくさんあります  大阪府立中央図書館には外国語の絵本が8000冊あリます。イギリス・アメリ力の絵本が中心ですが、フランス・ドイツ・スウェーデン・ロシア・スペイン・ポルトガル・ブラジル・韓国・中国・ベトナム・アラビア等約40力国の外国の絵本があります。これらの絵本を比べてみると、それぞれのお国柄や文化性がよく表れていて、なかなか興味深いものがあります。中には凝ったしかけのポップアップやメリーゴーランド型等のメカニカルブックも少なくありません。美しく楽しい「しかけ絵本」は個人の方にお貸しすることはできませんが、できるだけ展示して見ていただくようにしています。 ビデオやCDもあります  こども資料室にはこども用のビデオとCDが置いてあります。CDはこども資料室で聴くことができます。ビデオの個人鑑賞は、2階のAV(オーディオビジュアル)室でしていただくことになっていますが、学校などの集団利用の場合はおはなしの部屋でも鑑賞していただけるようになっています。 研究資料コーナー  こどもの本について勉強したり、研究したりする人のために研究資料コーナーを設けています。こどもや児童書に関する雑誌のバックナンバーや日本児童文学事典やSomething About the Authors等、国内外の参考図書を用意しています。こども論、児童奉仕論、絵本論、児童文学論、民話、わらべ歌に関する研究書を用意しています。学生や文庫のお母さん方、保母さんや、先生、図書館員やこどもの本の研究者など、こどもとこどもの本に関わっている大人のために用意されたコーナーです。 おはなし会  毎週土曜日の2時から、おはなしの部屋でおはなし会をしています。  東大阪の子ども文庫連絡会とわんぱく文庫のおかあさん方のご協力をいただいています。絵本の読み語り、手遊び、紙芝居、ぺープサート、ストーリーテリングなど楽しいプログラムがいっぱいです。12月からは、毎週日曜日2時から清朗会というボランティアグループによる絵本の読み語りも始まりました。小さなこどもたちから大人の人まで楽しんでいただけます。毎回半時間程度で終わりますので、時間に遅れないようにお越し下さい。 春・夏・冬休みにはおたのしみ会  春・夏・冬休みには図書館会議室で工作教室や人形劇等のおたのしみ会を催します。今年の夏はスライムづくり、牛乳パックの工作、ストーリーテリングの会、人形劇等をしました。影絵やパネルシアター、科学遊びなど毎回趣向を凝らして、楽しんでもらえるように頑張っています。  みなさん、たくさん来て下さいね。 わんぱく文庫  目の見えないこどもたちのために点字の本とテープ図書を置いています。  わんぱく文庫はボランティアのおかあさん方が視覚障害児のために開いていた民間の文庫です。10年ぐらい前から別の所で開いていましたが、中央図書館がオープンしてからは、図書館が協力することになりました。わんぱく文庫は毎月第2・4土曜日の2時から4時まで開いています。わんぱく文庫のこどもたちが本を借りにやってきて見える子たちと一緒におはなし会を楽しんだりします。時には見えない子が、見える子に本を読んであげたりもします。 社会自然系資料室のご案内  「趣味の本はありませんか?」と聞かれることがあります。趣味は人によって様々です。料理や編み物、庭いじりなどは、この部屋の自然系資料を案内します。釣りや登山、旅行なら4階の人文系、推理小説だったら1階の小説読物室になります。どこのカウンターででも気軽に声をかけ、自分が求める資料探しを楽しんで下さい。  さて、3階の社会・自然系資料室はどんな本を置いているのか?社会科学および自然科学関係の本を置いています、と答えるのが正解です。が、これでは答になっていないかも知れません。この部屋の資料の構成については、階段を上がった所に掲示されている案内図やカウンターに用意した一枚物の案内図が役に立ちます。もっと本格的に調べたい方は、同じくカウンターに常備の『日本十進分類法』を参考にして下さい。  この部屋の資料は、新聞・雑誌・図書の3種類に大別されます。資料を直接手に取っていただける閲覧室(開架室)に、新聞は20紙(社会、自然系各10紙)、雑誌は500タイトル(社会、自然各250タイトルのほぼ最新の一年分前後)を出しています。それらは、エレべーターと階段に挟まれた中央に位置しています。雑誌の新しい部分は、これ以外にも数十タイトルを分散配置しています。  また、よく利用される雑誌は合本製本したものを、一般図書のコーナーにも配架しています。社会、自然あわせて数十タイトル、各タイトル過去20年前後の期間。ただ、このコーナーの法律関係の雑誌は、資料の性格から古い時代のものもよく利用されるため、『法令全書』や各種判例集とともに、所蔵する最初の部分から配架しています。加除式の『判例体系』や『基本行政通達』も同じコーナーに、大きな位置を占めています。  新聞の多くは一年保存ですが、3階書庫(カウンターの背後にあります)に約90種あります。また、現在継続して受け入れている雑誌は社会系自然系あわせて2150タイトルあり、その多くの新しい部分もやはりこの階の書庫にあります。  それらについては、閲覧室に出ていない新聞とともに、『新聞雑誌受入目録』を手に取って下さい。この目録は新聞・雑誌のタイトルからも引けますし、どんな種類の雑誌があるのかが分かる≪分類編≫も付いていて便利です。  図書は、閲覧室に社会系、自然系合わせて10万4千冊を出しています。それは、参考図書と一般図書に大別されます。  参考図書は、資料の性格にしたがって<名簿><書誌目録>、<統計白書>、その他のコーナーに分かれています。詳しくは一枚物の案内図をご覧下さい。  会社や学校について調べたい。医師や病院について調べたい。それは、社会系や自然系の<名簿>コーナーになります。  『国勢調査報告書』や『商業統計表』、よく利用される『路線価図』は社会系の、『農林センサス』や『工業統計表』、『事業所統計報告書』の類は自然系の<統計白書>コーナーにあります。国が出している白書も、分野によって社会、自然と分かれています。  あることについて、ちょっとつっこんで調べたい。そんな場合に時として役に立つのが<書誌目録>コーナーの参考図書です。その分野でこれまでどんな本が出版されているか、どんな雑誌に記事が載っているかなど、参考になることがあります。例えば、利用のコツを知っているととても使い勝手のいい“大宅壮一文庫”の雑誌目録は、社会系のこのコーナーにあります。  参考図書コーナーにはこの他、社会系には<法令判例索引>コーナー、また自然系には、『科学技術文献速報』や日本・アメリ力・ドイツなどの規格のハンドブック類、大型本の都市計画地図集などを配したコーナーもあります。  以上の参考図書類は、カウンター近くの低書架にあリます。  そこにない一般参考図書が、カウンターから左右にひろがる壁面に配架されています。辞事典、各種法令・資料集、年表や調査報告書等。今生きている法律のすべてを収める加除式の『現行日本法規』、それに『官報』や大阪府が発行する府政資料も、社会系のこのコーナーに置いています。  これまで紹介してきた参考図書類は、新聞や雑誌とともに貸出ができません。必要な部分は複写をお願いすることになります。(なお、雑誌の最新号は著作権法の規定によりその複写もできません)貸出は不可ですが、そのかわり何時来ていただいても、その資料は存在し、手に取ることができる。そのようにご理解下さい。  さて、先に新聞・雑誌を除く図書は、参考図書と一般図書に大別されると紹介しました。広い閲覧室で一番大きなスペースを取っているのが、この一般図書です。カウンターを背にして、左右に見える高書架とエレベーターと階段の後に位置する低書架に配置されています。自由にご覧になり自由に借りていただける本のグループです。ゆっくりじっくり手に取ってご覧下さい(なお、このグループの中に、ラベルの上に≪館内≫とある図書が少しあり、この本は貸出ができません)  一般図書は、日本十進分類法に従って配列しています。(例外は、同和資料コーナーおよび日経新書=社会系、講談社のブルーバックス=自然系を一か所に集めたコーナーだけ)  なお自然科学系の一般図書コーナーには、科学技術関係の図書として先にあげた『科学技術文献速報』以外に、ケミカル・アブストラクト、バイルシュタイン、グメリンなどの洋書があります。これらは、利用される方が専門的知識をもっておられ、自在に使いこなされ重宝がられている資料です。  以上、主にどこに配置しているかを中心に、社会・自然系資料の大ざっぱな紹介を致しました。  何分広い閲覧室です。3階にしかない複写室や屋上庭園、それにトイレや電話の所在場所の案内も簡単ではありません。  カウンターでの職員の仕事は、貸出返却作業や資料に関する相談への対応、外からかかってくる電話の応対などが中心ですが、それと同時に、利用者のみなさんには直接目に写らない部分での仕事もたくさんあリます。しかし、少しでも快適に利用していただけるよう、一生懸命サービスにつとめています。  何かと不案内の部分は、まずは気軽に声をかけるところから始めてみて下さい。 大阪府立中央図書館生涯学習事業のご案内  生涯学習室が新年の平成10年1月から3月までに、主催および共同開催します生涯学習機会提供事業は、以下のとおりです。府民の生涯学習の一助となるものとして企画、実施しています。 大阪府立中央図書館府民講座ライティ・カレッジ  「アジアの中の日本を探る   〜21世紀への課題〜」  アジアの世紀といわれる21世紀を目前にひかえて、アジアにおける日本の有り様を探るために、日本の過去と現在を見つめるとともに、未来を展望することに主眼をおいて、全6回の連続講座を行い(平成10年は、残リ3回となります)、古代から近代におよぶアジアの動向と日本のつながりを考察し、府民の生涯学習の振興や読書活動の推進に協力します。 ●平成10年1月11日(日)午後2時〜3時30分  「アジアの中の外交〜江戸時代の朝鮮通信使〜」  講師:青丘文化ホール主宰 辛基秀氏 ●平成10年1月18日(日)午後2時〜3時30分  「半井桃水(なからいとうすい)と韓国」  講師:国際日本文化研究センター教授 上垣外憲一氏 ●平成10年1月25日(日)午後2時〜3時30分  「舞楽に感じるアジアの風〜天王寺楽所による舞楽実演〜」  出演:天王寺楽所雅亮会  解説:大阪府立中央図書館名誉館長 上田正昭氏  「朝鮮通信使の世界」の展示 ●平成10年1月6日(火)〜18日(日)  1階展示コーナーにて  府民講座ライティ・カレッジの第4回で取り上げます朝鮮通信使をテーマに、関連した資料を青丘文化ホール主宰の辛基秀氏のご好意を得て展示会を行うものです。  展示品の中には、昨年の夏に鈴鹿市で発見された貴重な慢幕も含まれています。これは朝鮮通信使の行列が長さ約9メートルの幔幕に色鮮やかに染め上げられています。 「朝鮮通信使幔幕」(鈴鹿市白子町西町自治会蔵) 「朝鮮通信使国書先導船図屏風」(青丘文化ホール蔵) 「司馬遼太郎さんの菜の花忌に寄せて」 ●平成10年2月12日(木)〜18日(水)  1階展示コーナーにて  国民的作家である司馬遼太郎さんを偲んで司馬氏の好んだ菜の花を飾り、中央図書館所蔵の書籍と須田剋太氏『街道をゆく』の絵画を展示します。 NHKとの共催事業 文化講演会「アンコールワットとクメール美術の1000年」 ●平成10年2月21日(土)午後2時〜3時30分  カンボジアの土地において6世紀に花開き約1000年にわたって栄華を誇ったクメール族による仏教、ヒンドウー教の美術について理解を深めるため、文化講演会を実施します。 講師:写真家 BAKU斎藤氏 大阪府立中央図書館オープンカレッジ (大阪産業大学公開講座) 「『平和学』について」 ●平成10年3月7日(土)  午後1時〜4時、2階大会議室にて  冷戦終了後世界の諸地域では今なお様々な紛争が生ずる危惧がもたれており、このような状況の下で国際社会における恒久平和が確立できるよう府民を対象とした平和のための公開講座を実施します。 講師と演題 @「平和の理念とその実現」  大阪産業大学教授 河井徳治氏 A「平和学の現在」  大阪産業大学教授 三橋浩氏 Mini Mini NEWS 入館者100万人!!  100万人目の入館者は、東大阪市にお住まいの主婦で、当日はお子さんと一緒にクリスマスの本を探しに来館されました。100万人入館者を記念して、館長よリ100万人目の認定証と記念品を贈呈しました。 平成9年12月5日 上田正昭名誉館長 「大阪文化賞」を受賞  京都大学名誉教授で、当府立中央図書館の名誉館長でもある上田正昭氏が、平成9年度の「大阪文化賞」を受賞されました。  この賞は、大阪府と大阪市が大阪の文化の発展に貫献した人をたたえるために制定したもので、今年度は上田正昭氏と関西大学名誉教授の谷沢永一氏の2人が受賞されました。  上田名誉館長は、当館主催の「府民講座ライティ・カレッジ アジアの中の日本を探る−21世紀への課題−」の開催など、当館の生涯学習事業の推進に尽力をいただいているだけでなく、大阪府が企画するさまざまなイベントにも参画されており、成功に尽力いただいています。 イタリア・ファシズム関係の図書が寄贈される 〜館長より感謝状を贈呈〜  寄贈者は桃山学院大学教授、故本川誠二氏のご遺族です。当時の傑出した革命家グラムシの研究書を含む3000余冊で、大半はイタリア語ですが、日本では南欧史研究の蓄積が少ないなかこのコレクションの重みは、今後増すものと思われます。  整理が出来次第展示する予定です。 第13回ニッサン童話と絵本のグランプリ大賞作品寄贈される  日産自動車鰍謔闡謔P3回ニッサン童話と絵本のグランプリ大賞作品が府内公共図書館宛寄贈されました。今回の受賞作は、「ば、い、お、リ、ん」(童話)「またふたりで」(絵本)です。 本は何時でも返せます  図書館で借りた本を、“図書館があいているあいだには返しに行けないヨ”と困っている貴方、図書館では閉館中でも本の返却が出来るよう、図書館正面玄関の左側に返却ポストを設けていますのでご利用下さい。  なお、AV資料は、破損の恐れがありますのでポストへの返却は出来ません。 “いや中央図書館へはなかなか行けないヨ”という貴方、府立中之島図書館へ返却していただくか郵送(簡易書留)・宅配便で返却していただいても結構です。  貴方が借りておられる本、次の方がまっておられます。