大阪府立中央図書館だより はるみや 1997.12 No.3 目次 新しい文化の発信 名誉館長 上田正昭 総合カウンター・新聞コーナー データベース室・地下書庫のご案内 市町村立図書館・図書室を通じてのサービス 企画協力課ネットワーク係の仕事の紹介 大阪府立中央図書館生涯学習事業について(概要) Mini Mini NEWS  岡都伊都子さん講演会「読書の楽しさ、読書のよろこび」を開催しました  北欧関係資料 寄贈される 新しい文化の発信 名誉館長 上田正昭  1996年(平成8年)の5月10日、全国の自治体で最大規模の大阪府立中央図書館がオープンしました。1991年から大阪府の図書館協議会委員のひとりとして、大阪府立の図書館の運営には多少の協力をしてまいりましたが、1991年の6月から2期(6年)勤務しました大阪府立の大阪女子大学学長を退任して、ひとまず安堵しておりましたところ、大阪府の要請もあって、はからずも本年の6月1日付で、本館の名誉館長に就任することとなりました。高度情報化社会と生涯学習の展開に対応する図書館として、本館がますます充実し発展することを念じてやみません。  本館が立地する中河内は、私にとりましても、えにしの深い地域です。1967年の1月に、角川書店から『大和朝廷』を出版しましたが(1995年の8月に講談社学術文庫として刊行)、その著書のなかでもっとも強調しましたのは、5世紀の倭国の王権の基盤が河内に存在したことの論証でした。この仮説が、いわゆる河内王朝説と称されている学説です。奈良市の春日大杜は全国の春日明神の総本社ともいうべき古社ですが、延長5年(927)に完成しました『延喜式』の春日祭の祝詞にも明らかなように、枚岡神社の祭神が平城京に勧請されて、春日祭神の天児屋根命(あめのこやねのみこと)と比売神(ひめがみ)として祭祀されることになります。枚岡神社が元春日と呼ばれておりますのも、こうしたいわれが存在しているからです。中臣氏(藤原氏)は、その本拠を河内から摂津においていた時代があります。本館の所在する東大阪市に、枚岡神社そして春日若宮神社が鎮座し、春宮(はるみや)という地名が形づくられてくる歴史と文化を改めて想起します。  これからの図書館は、利用者の皆さんのご要望に応えると共に、生涯学習のあらたな文化の発信基地たりうるように努力しなければなりません。 総合カウンター・新聞コーナー データベース室・地下書庫のご案内 総合カウンター  はじめて当館を訪れた方は、1階のブラウジングコーナーや小説・読物室、こども資料室をご覧になったあと、なんとなく階段をあがって2階に来て少しとまどわれるかもしれません。壁面にジミな本が(新聞の縮刷版などですが)見えるだけで何の階なのかよくわからないのではないでしょうか。ここ2階の総合カウンターは、図書館の利用案内と利用者カードの発行(登録)をする窓口です。総合カウンターを担当している係(閲覧調整係)は、また新聞閲覧コーナーとデータベース室、それから地下1階の書庫をあわせて担当しています。今回はこれらの業務を少しくわしく紹介しましょう。 図書館の利用案内  1階のエントランスの案内カウンターは、ホールと図書館をあわせた建物全体の案内をするところですが、総合カウンターでは図書館の使い方の案内をしています。どんな資料をさがしているのかをお聞きして、何階へ行けばよいかを案内します。また参考図書を紹介したり調べ方の手順を案内したりもします。少し専門的な資料をおさがしの方には、各階の司書に相談することをすすめます。特定の資料を当館に所蔵しているかどうかはこの総合カウンターで調べてお答えします。資料があればその書架を案内します。書庫にあれば出納の窓口を案内します。お求めの資料が当館になければ、他の図書館にあるかどうかも調査します。電話による間い合わせにも同じように答えています。 利用者カードの発行  本を借りるには利用者登録をしていただきますが、その窓口も総合カウンターになります。申込用紙に氏名・住所を記入して、現住所を明記した身分証を示していただくと登録ができます。中之島図書館と共通で3年間有効の利用者カードを発行します。なお小学生までの方はこども資料室でカードを発行しています。 新聞閲覧コーナー  縮刷版の新聞はほとんど全部書架にならんでいますので自由にご覧になれます。新聞の本紙は全国紙・スポーツ紙・英字新聞など全18紙の1年分を新聞架に出してありますのでこれも自由にご覧いただけます。本紙のバックナンバーは地下1階の書庫からエレベーターを使って出しますので、総合カウンターでお申込みください。 地下1階の書庫  各室に出ている約30万冊の図書とは別に地下書庫に約100万冊の資料を収蔵しています。各階のカウンターで申し込むと申込書が地下1階に電送されます。そのプリントを持って広大な書庫の中を自転車で図書を取りに行きます。そしてリフトで各階に配送します。約5,000uの地下書庫は3つのゾーンに色分けされています。青ゾーンはおもに中之島図書館の旧蔵書を配架してあります。現在は固定架ですか将来の蔵書の増加に備えて電動書架増設のためのレールを敷設してあります。緑ゾーンは電動書架でおもにタ陽丘図書館の旧蔵書を配架してあります。新しく書庫入れした図書もこのゾーンに入ってきます。赤ゾーンも電動書架でおもに製本された雑誌のバックナンバーをおさめています。 データベース室  2階新聞コーナーの奥にガラスばりの部屋があります。この部屋は府立中央図書館の新しいサービスのひとつデータベース室です。利用できる時間は、平日(火一金)は10−12時と14−17時、土・日曜日は13−17時となっています。今のところ利用は多くないですが、これから徐々に増えてくると予測しています。この小さな部屋(51u)にO‐NET24専用パソコン1台と、CD‐ROMを利用するスタンドアローンのパソコンが6台、国会図書館や学術情報センターなど外部データベースの検索か可能なパソコンが1台、それに当館の業務用端末が1台と合計9台のパソコンが設置されています。 O−NET24  大阪府の行政情報提供システム(O‐NET24)に接続したパソコンでは、大阪府の行政情報のほかに、大阪府立の図書館や大学、中小企業情報センター、ドーンセンター等が所蔵する資料が検索できます。いちど図書館でためしてみてはいかがでしょうか。O‐NET24は自宅のパソコンからも大阪府の行政情報などが閲覧できるシステムです。接続方法は簡単ですのでパンフレットを見てください。 ON−LINEでの検索  国会図書館(NOREN)や学術情報センター(NACSlS‐CAT)のデータベースの検索をはじめとして、他の公共図書館や大学図書館の蔵書を調べることができるようにもしています。なお、ON−LINEでの検索は、必要に応じて職員が行っており、利用者みずからの検索はできません。 CD−ROMを使って  タイトル数で150以上のCD−ROMを所蔵していますが、目録・書誌情報の利用がおもです。  国会図書館の蔵書目録(JBISC)では明治期と1948年以降に受入れた蔵書を検索できます。国会図書館の雑誌記事索引では1985年以降の雑誌記享を検索できます。東京都立図書館の蔵書目録もCD−ROMで検索できます。  新聞のCD−ROMには読売新聞電子縮刷版(1994年1月〜)、朝日新聞記事索引(1945〜1995年)、CD毎日新聞(1991年〜)、日本経済新聞(1995年〜)などがあります。  その他のCD−ROMには、科学技術文献速報(1995年〜)や判例大系、Global Books in Print PLUS、Chemical Abstract(CAS)などがあります。  辞書・辞典類のCD−ROMには、The O.E.D.on CD、広辞苑、平凡社世界大百科、Encyclopedia Americanaなどがあります。  年鑑・便覧類では、ダイヤモンド会社要覧・職員録、理科年表などがあります。  地図類には、World Atlas、ゼンリン電子地図、Space Walk from Landsat関西編などがあります。  美術・絵画関係では、世界の美術館シリーズやデジタル・アート・セレクションのシリーズがあります。また建築写真集のシリーズなどもあります。  そのほかでタイトルが目につくものをあげると阪神大震災関係のCD一ROMや都市・地域・企業などの紹介・案内などのものがあります。  これらのCD−ROMはご自分で閲覧できます。係員が利用の仕方を説明しますので気軽にデータベース室に立ち寄ってください。お待ちしています。 市町村立図書館・図書室を通じてのサービス −企画協力課ネットワーク係の仕事の紹介−  普段は利用者の方からは見えにくい企画協力課ネットワーク係の仕事の概要を紹介します。  ここは、来館された利用者向けの力ウンターこそあリませんが、「資料提供」系の仕事をしている部門です。  その提供の仕方には、次のようなものがあります。 #1 府域の市町村図書館や公民館図書室(分館などを人れて128館あります)の利用者に、府立図書館で所蔵している資料を、その図書館を通じて提供する。 #2 府外の公共図書館などの利用者にも、同様に提供する。(図書館へ郵送します) #3 府域の市町村図書館などを通して、読書会などに用いる資料を提供する。 #4 各種の団体に、展示用の資料を提供する。  #3と#4は、同じ課の振興係が担当しています。  今回は、#1の府域の市町村図書館を通じての資料の提供サービスについてご紹介します。 (1)府立所蔵であることの確認と貸出申込    −情報ネットワーク−  市町村図書館・図書室では、自館や同一市町村の他の図書館に所蔵していない資料については、府立図書館にあるかどうかを調べます。パソコン通信による検索で見つかれば申込をします。または、ファックスで所蔵調査票(兼貸出申込書)を府立中央図書館に送ります。  ここからが当課のネットワーク係の仕事となります。  パソコン通信による申込リストを打ち出し、ファックスの所蔵調査票の検索を行い、それらの資料の所在を調べます。  中之島図書館所蔵資料は中之島にそれを確保・送付してもらいます。中之島との間には、毎日1往復の車(シャトル便と呼んでいます)が走っていて搬送にあたります。中央図書館所蔵分は、係員が各資料室及び書庫を廻ってその図書を確保します。  確保できた資料については、毎週各図書館に巡回する「協力車」に載せる準備をします。 (市町村図書館・図書室を通じた貸出を「協力貸出」そのための搬送の車を「協力車」といいます。)  次の車で送りますよ、という情報と貸出中などの理由で確保できないもののお知らせなどを併せて申込館にファックスで回答します。  ここまでがいわば、「情報ネットワーク」の世界です。 (2)協力車による図書の搬送    −物流ネットワーク−  協力車は、44市町村を8つのコースに分けて水曜日(3コース)・木曜日(2コース)・金曜日(3コース)の各曜日に巡回します。  例えば、堺市は水曜日、枚方市は金曜日というふうに決まった曜日の巡回となります。  確保できた資料を申込館ごとに仕分けておき、協力車の出る前日(例えば、堺市の各館への貸出分は火曜日、枚方市の分は木曜日)の夕方までに貸出処理を行い、搬送用のケースに入れます。  ケースは、W36×D45×H24cmのプラスチック製のもので平均20〜30冊入ります。多いところで1回に6ケースになることもあります。  ケースを各コース毎に台車に積んでおき、翌日(巡回当日)の積み込みに備えます。  当日の朝一番に、水曜日・金曜日には3台、木曜日には2台の車が来ますので、ケースの数をチェックして(多いコースで12ケース程)、車に積み込みます。出発する車を見送って、発送作業の終了です。  各コースとも、月に1回はネットワーク係員が添乗していき、各図書館との情報交換に努めるようにしています。  府内には複数の図書館をもつ市が18あり、そこでは、巡回館(堺市なら堺市立中央図書館、枚方市なら枚方市立枚方図書館)とその他の図書館(堺市で11館、枚方市で8館あります)の間に搬送の手段があります。  それを介して、申込館に資料が届き、そこで利用者に提供することができます。  つまり、所蔵確認やパソコン通信での検索・申込から、利用者への提供まで、府立図書館と市町村立図書館の文字通りの「協力」によってこのサービスが成り立っています。  ここまでが協力貸出の物流の半分、つまり同じ数だけの本が協力車で返ってきますので、返却処理を行い、中之島分・各開架室・書庫分に分けてシャトル便や館内の搬送リフトで送ります。  以上がこの業務での「情報と物流のネットワーク」のひとまわりです。カウンターのない「資料提供」系というイメージが湧いたでしょうか。 (3)利用状況などについて  平成8年度(5月の開館から9年3月まで)には、26,538冊の資料を協力貸出しました。(今年度は半年間で17,244冊となり、3万冊は超える見込みです。)  これを府立中央に来館して個人貸出された資料の数(約73万冊強)と比べてみれば、協力貸出は圧倒的に少ない、逆にいえばまだまだ伸びる可能性があるといえるでしょう。  府域のどこに住んでいても、近くの市町村の図書館や図書室を通じて、府立図書館の資料が利用できるのです。  あなたも是非一度、近くの図書館に立ち寄られた際には、気軽に「こんな本はないかなあ?」と尋ねてはいかがでしょうか。ひょっとしたら、1週間くらいして、「本が届きましたよ」と連絡が人り、府立の本と出会えるかもしれませんよ。(企画協力課 ネットワーク係) 大阪府立中央図書館生涯学習事業について(概要)  平成8年5月の開館以来、生涯学習室ではいろいろな事業を通して、府民に生涯学習の機会を提供してまいりました。  府の教育委員会が携わる生涯学習事業は、平成2年6月施行の通称「生涯学習振興法」に基づいて行われるものです。この法律では第1に学校教育及び社会教育に係る学習並びに文化活動の機会に関する情報を収集し、整理し及び提供すること。第2に住民の学習に対する需要及び学習の成果の評価に関し、調査研究を行うこと。第3に地域の実情に即した学習の方法の開発を行うこと。第4に住民の学習に関する指導者及び助言者に対する研修を行うこと。第5に地域における学校教育、社会教育及び文化に関する機関及び団体相互の連携に関し、照会及び相談に応じ、並びに助言その他の援助を行うこと。第6に前各号に掲げるもののほか、社会教育のための講座の開設その他の住民の学習の機会の提供に関し必要な事業を行うこと。以上の6点が挙げられています。  府ではこれを受けて、平成5年に生涯学習推進プランを立て、第1に学習相談と情報提供、第2に学習機会の提供と調査、研究、第3に学習方法の開発、第4に指導者研修、第5に連携の照会、相談、助言、援助をそれぞれ定めています。  中央図書館は図書資料を多数所蔵し、府民の利用に供しています。また380席のライティホールや72人収容の大会議室及び30人収容の会議室をもち、それぞれ府民の生涯学習の場としてその利用に供しています。一般的には生涯学習というと、音楽や演劇、映画、講演等の広く教育、文化に関する行事と理解されているようです。加えて、中央図書館では、環境保護の問題や府民の人権擁護の取り組み、平和や安全の問題、国際理解の推進、高齢化社会の問題、女性の社会参画等の現代的課題を中心とした事業を取リ上げて、社会的啓発を行うことも生涯学習事業として欠かすことができないものと考えています。 平成9年度生涯学習事業 ●府民講座 1「アジアの中の日本を探る」10/12 2「考古資料から見たアジアの中の日本」11/08 3「日本人はどこがらきたか」12/07 4「アジアの中の外交〜江戸時代の朝群速信使〜」1/11 5「半井桃水(なからいとうすい)と韓国」:1/18 6「舞楽に感じるアジアの風〜天王寺薬所による舞薬の実演〜」1/25; ●オープンカレッジ 近畿大学との共催 1「生活の中の環境問題(1)」10/25 2「生活の中の環境問題(2)」11/01 ●読書週間行事 「岡部伊都子講演会」10/28 ●水曜オープンカレッジ 大阪府立大学との共催 「関西経済の現状と行方」11/26 ●大学公開講座 大阪産業大学との共催 1「音薬の楽しみ方、再発見」10/04 2「『平和学』について」3/07 ●宇宙の日記念行事 宇宙開発事業団との共催 「宇宙教室」9/14 ●スライドカルチャー 大阪商業大学との共催 1「タイの仏教美術」9/20 2「カンボジアのクメール美術」9/27 3「ベトナムのチャンパー美術」10/04 ●児童文学講座 大阪国際児童文学館との共催             1「絵本の冒険(1)」8/30 2「絵本の冒険(2)」9/06 3「絵本の冒険(3)」9/13 ●ライティホールコンサート 府文化振興財団・大阪21世紀協会との共催 1「金昌国フルートの世界」6/22 2「親子映画劇場」8/23 3「アンデスの風」11/02 4「ジャズ・ブラス・アンサンブル」2/14 ●シンボジウム 大阪21世紀協会との共催 「文化立都0SAKAシンポジュウムと民族音楽の演奏」10/05 Mini Mini NEWS 図書館は、あなたの書棚、あなたの書斎、あなたの自由な知の華となれ 〜岡都伊都子さん講演会「読書の楽しさ、読書のよろこび」を開催しました〜  読書週間最中の10月28日に、作家の岡部伊都子さんをお招きして読書講演会をライティホールで開催しました。岡部さんは、古典や美の世界、あるいは日常的な事柄を題材に、鋭い感牲で現代人の生き方や心の問題を細やかな筆致で描く一方、戦争・環境破壊・差別間題等を鋭く追究されています。それらに関係する多くの著作を生み出す源泉となった様々な本や人との出会い、頻繁に訪れた沖縄の地に開設された「こぼし文庫」にまつわるお話等々、穏やかな口調の中にも熱情溢れるお話し振りに約300名の聴衆一人一人が岡部さんの貴重な読書体験談に溶け込み共有するひと時を過ごされたことでしょう。  限りない人間への尊敬を生み出し、自分を鍛え直していく力を読書の世界に求め、図書館を表記のように喩えられた岡部さん。図書館への箴言として、深く心に残る言葉を贈っていただきました。  なお、講演会を記念して府立図書館で所蔵する岡部さんの著作の展示会を10月21日〜30日の間に開催しました。 展示会のお知らせ  障害者週間関連展示(12月6日〜12月14日)  −障害者の社会的自立への理解を深めるために−  「わくわくサンタクロース」展(12月16日一12月27日) 北欧関係資料 寄贈される 北欧諸国の自然・歴史・社会・政治・経済・文化等について原書も多く  寄贈者の家高憲三氏は枚方市の前教育長で、教育・文化行政にかかわる傍ら、高齢者福祉行政にも関心を持ち、北欧の資料を収集してこられた。  氏はこれらの資料を広く府民に利用されることを願って寄贈を申し出られ、併せて図書館でリストアップした北欧の充実した福祉社会が生まれてきた背景を知る手だてとなる資料を購入し、寄贈された。  内訳は一般図書 洋書 86冊          和書 54冊          地図 19点     児童書  洋書 71冊          ビデオ 8本  これらの資料を公開に先立ち、目録を作成し、平成9年9月18日から10月19日まで中央図書館で展示しました。(資料情報課)