大阪府立中央図書館だより はるみや 1996.9 創刊号 目次 中央図書館の開館にあたって 館長 松本進一 大阪府立中央図書館の開館を迎えて 奥田幹生文部大臣祝辞                  横山ノック大阪府知事挨拶 大阪府立中央図書館 開館記念事業の実施について 館内のご案内 ホール・会議室における生涯学習事業の開催状況 OL‐NET(大阪府立中央図書館ネットワークシステム) 新府立中央図書館オープン後4ケ月の歩み 中央図書館の開館にあたって 館長 松本進一  明治37年「大阪図書館」として開館して以来、93年に及ぶ歴史を有する大阪府立図書館は、昭和25年「天王寺分館」を開館し、その後昭和49年にそれぞれ「中之島図書館」・「夕陽丘図書館」とに改称し、現在に至るまで多くの府民に愛され親しまれてきました。  そして平成8年5月10日、生涯学習と高度情報化社会にふさわしい総合的な図書館サービスを目指して、ここ東大阪新都心の地に、全国自治体で最大規模の中央図書館が開館のはこびとなりました。  この中央図書館の設立については、昭和56年に学識経験者や文化人などで構成する大阪府文化問題懇話会で「文化・学術の拠点となる図書館整備を進める必要がある」と提言されたのを受け、平成元年に建設の骨子となる基本計画が報告され、その後平成4年度から約3年の工事期間を経て今日を迎えたもので、この間の数多くの関係者各位の御努力に対し深く敬意を表するとともに心から感謝申し上げる次第であります。  図書館は「真理がわれらを自由にするという確信に立って憲法の誓約する日本の民主化と世界の平和とに寄与することを使命とする(国立国会図書館法前文)」の理念のもとに、人々が本来有する知的欲求を満たし、それが過去の歴史に学ぶものであれ、未来への探求であれ各人の生涯を通じて自己実現を目指す生涯学習を進める上で最も基本的な施設であります。  私達は今21世紀を目前にして、中之島・タ陽丘両図書館の歴史と伝統を受け継ぎ、未来を展望しながら先人の労苦を生かした図書館運営に努め、学に志し知識を求める府民の皆様に愛され、親しまれ、十分なご活用がいただけますよう心から願っております。  館報のタイトル「はるみや(春宮)」は、この図書館用地が府営春宮住宅の建替えに伴い生み出されたものであり、この地区の氏神で奈良の春日大社、当市の枚岡神社と関係のある「春日若宮神社」の「春」と「宮」をとり、地元の人々に呼称されている名称であります。  明るく伸びやかなこの言葉は、インターネットの時代においても世界に通ずる語感を有するものとして、新たな100年のスタートにふさわしいものと信じております。 大阪府立中央図書館の開館を迎えて 奥田幹生文部大臣祝辞  本日ここに大阪府立中央図書館の開館記念式典が行われますことを、心からお喜び申し上げます。  今日の社会においては、科学技術の進歩、情報化、国際化などを背景として、絶えず新たな知識・技術を習得していくことが、求められています。又、豊かで充実した生活を送るためにも、生涯学習に取り組むことが必要となっております。こうした社会的な要請に応え、人びとに多様な学習機会を提供するための基盤を整備することが重要な課題となっております。公立図書館は、住民の身近にあって、学習に必要な図書や情報を収集・整理し、その利用に供することにより、人びとの自主的な学習を支援をする機関であります。近年、図書館に対する住民の期待はかってないほど強まり、より豊かで、質の高いサービスを提供することが求められております。大阪府におかれましては、明治三七年に大阪図書館を開館して以来、広く府民の読書活動に奉仕してこられましたが、このたび、府民の多様化、高度化する学習ニーズに直接応えるとともに、広く府内の中核となる図書館として、新しい府立図書館が建設されましたことは、誠に時宜を得たものであり、全国における図書館の振興を図る立場にある私どもと致しましても、喜びにたえません。  この大阪府立中央図書館は、自治体最大規模である、三五○万冊の図書収蔵能力を誇り、コンピュータを導入した最新の検索システム、ネットワークの形成による府内の市町村の図書館の支援、又、府民講座の実施や障害者への図書館サービスの充実等、府民に広く開かれた情報文化の拠点として、府民参加型の図書館の運営を目指しておられ、また本日の開館を前に、早くから府民の関心を集めていることを伺っております。  今後、この大阪府立中央図書館を一つの核として、大阪府における生涯学習の基盤の整備が進められ、府民の方々の生涯学習の一層の充実がはかられることを期待致します。  終わりに、本日の開館に至るまでの、大阪府及び大阪府教育委員会の関係各位のご尽力に対し、敬意を表しますとともに、今後のご発展を祈念致しまして、お祝いの言葉と致します。 横山ノック大阪府知事挨拶  大阪府立中央図書館の開館記念式典にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。  大阪府では人びとの読書、学習に対する意欲の高まりや、図書館に対するさまざまなニーズに応えるべく、新しい図書館の建設を進めてまいりました。本日、諸先輩のご努力は実を結び、このように大勢の皆様に祝福されながら、開館の日を迎えることができましたことは、誠に喜ばしい限りでございます。府民の皆さんは言うに及ばず、文部省、国会、府議会の先生方、さらには地元の皆さまや、多くの関係者のご支援、ご協力に対し、ここに心から感謝を申し上げます。  この中央図書館は、自治体最大規模を誇るハード面に加え、ソフト面におきましても、コンピュータシステムによる図書の検索や、パソコン通信による、家庭にいながら、所蔵資料の検索等、利用される方々にとって便利なように、さまざまな工夫を凝らしております。市町村の図書館を通じて、蔵書の検索や貸出ができる図書館ネットワークも整備いたしております。このほか音楽、演劇、講演会など、さまざまな文化活動が行えるホール、会議室なども備えており、高度情報化社会に対応した生涯学習の場として、府民の皆様にご利用いただけるよう今後とも取り組みを進めてまいりたいと考えております。なお、この図書館の開館に伴い、府立中之島図書館は、大阪の郷土資料センター的機能を持つ図書館として、リニューアルオープン致しますとともに、同時に府立夕陽丘図書館は新たに特許情報センターとして四月一日から開館しております。皆さまには、ぜひご利用頂きたいと思っております。  最後に、大阪府立中央図書館が府民の皆様に広く利用され親しまれる図書館となりますよう、皆様のご支援とご協力をお願い申し上げ、私のご挨拶とさせていただきます。 大阪府立中央図書館 開館記念事業の実施について  平成8年5月9日に実施された記念式典に引き続いて、5月10日、5月11日、5月12日の3日間にわたり、開館記念事業がライティホールで行われました。  事業は一般府民を対象にして、それぞれ午後1時から開催され、毎回多数の参加者がありました。  プログラムは以下のとおりです。 5月10日(金) 吹奏楽演奏−大阪府警察音楽隊  矢部政男作曲「マーチ・エイプリル・メイ」  映画「ライオン・キング]よりCan you feel The love tonight  映画「アラジン」よりホールニューワールド 邦楽演奏−菊伊都典江と白百合会、永廣孝山ほか  「子供のためのラプソディー」「雁」「ことごっこ」「出雲路」「童夢」 5月11日(土) コーラス−東大阪市合唱連盟  「いい日旅立ち」谷村新司作曲  「シング」カーペンターズ作曲 記念講演−大阪女子大学の上田正昭学長  「河内王朝の謎」 副題−やまと王権の基盤− 5月12日(日) 朗読劇場−あめんぼ座  宮澤賢治生誕百年によせて『賢治讃歌』〜  「よだかの星」「セロ弾きのゴーシュ」「なめとこ山の熊」「永訣の朝」「松の針」他  記念事業では、音楽演奏や朗読劇場、請演が行われ、これからの生涯学習のモデルとなる取り組みとして、注目されました。 上田正昭学長の講演概要  上田学長は、すでに早く昭和42年の段階で5世紀のころに、「河内王朝」が成立したことを提唱されています。  「河内王朝」について、大山古墳(伝仁徳天皇陵)をはじめとする、政治的シンボルともいうべき巨大古墳が河内(後の和泉を含む)に集中していること、『古事記』や『日本書紀』の国生み神話が大阪湾を舞台としていること、さらに河内には、5世紀後半のころから活躍する物部・大伴・中臣氏などの本拠があったこと、とりわけ北河内に中臣氏の祖先神が枚岡神社に祭られていること、「治天下」大王の地位が、河内王朝の時代から具体化してくることなどの点から、「河内王朝」が、5世紀の後半に成立したと論証されました。 館内のご案内 4階 人文系資料室  人文科学関係の閲覧室、書庫で構成されています。閲覧席は200席。約9万冊の図書、雑誌を開架しています。環太平洋地域に関する外国語資料(約2千冊)も揃えています。 3階 社会・自然系資料室  社会科学、自然科学関係の閲覧室、書庫及び複写室で構成されています。閲覧席は250席。約10万冊の図書、雑誌を開架しています。室の西側には屋上庭園があります。 2階 総合力ウンター  図書館の利用案内、「利用者カード」の発行、当館及び他館の資料の調査相談を行います。 オーディオ・ビジュアル室  CD、ビデオ、LD等約6千点を所蔵、貸出や館内での鑑賞が可能です。オーディオブース11席、ビジュアルブースを35席(ウェイティングブースを含む)設けています。 光ディスク・マイクロリーダー室  貴重本などの資料を光ディスクで、新聞などをマイクロフィルムで見ることができます。 データベース室  CD‐ROMを利用するパソコンや、大阪府の行政情報提供システム(O−NET24)に接続したパソコンが利用できます。また、国立国会図書館や学術情報センターなどのデータベースに接続しています。  このほか、新聞コーナー、研究室、会議室(有料)などがあります。 1階 小説・読物室  日本や英米の小説、エッセイ、ノンフィクション読物、全国の電話帳、近畿の住宅地図、大活字本など約3万冊を開架しています。 こども資料室  こどもの本、ビデオ、CD、絵本など約2万冊を開架しています。おはなしのへや、こども資料の研究資料コーナーも設けています。 対面朗読室  朗読室7室と録音室を設置。視覚障害のある方に対面朗読サービスを行います。(予約制) ライティホール  座席数380席の多圏的ホールです。(使用は有料)乳幼児を連れた方のために親子室も設けています。  このほか、ブラウジング・コーナー、展示コーナー、軽食・喫茶室、レストランなどがあります。 地下1階 地下書庫  約5000uのスペースに現在100万冊の資料を収蔵。各階に資料を送る搬送機を設置しています。また、大原文庫の洋古書をはじめ、貴重な資料は貴重書庫に保管しています。(全館で最大350万冊まで収容できます)  このほか、資料情報課事務室、配送仕分室、コンピュータ室などがあります。 地下2階 駐車場  120台分の駐車スペースがあります。30分150円です。障害者用駐車スペース(3台分)も確保しています。(駐車料金の減免制度あり)  このほか、中央監視盤室、機械室、電気室などがあります。 ホール・会議室における生涯学習事業の開催状況  開館して約4ケ月を経過した現在、ホール・会議室を中心とした生涯学習関連事業には、おおむね次のような内容のものが挙げられます。  なお、以下には、大阪府立中央図書館単独主催の事業と、他の大学や文化事業団体との共催の事業を含めています。 5/9 開館記念式典    @記念講演(平山郁夫画伯)    A記念演奏(大阪センチュリー弦楽四重奏) 5/10〜5/12 開館記念事業 5/10    @吹奏楽演奉(大阪府警察音楽隊)    A邦楽演奏(菊伊都典江・白百合会・永廣孝山ほか) 5/11    @コーラス(東大阪市合唱連盟)    A記念文化講演(上田正昭大阪女子大学学長) 5/12    朗読劇場(あめんぼ座) 5/25 おたのしみ会−影絵、人形劇− 6/20 なにわ塾文化講演(眉村卓氏)大阪府立文化情報センターと共催 8/1 科学実験あそび−標本、工作− 8/8 「やさいでぺったん」−野菜でお絵かき− 8/15 ストーリーテリング−お話し会− 8/22 人形劇 8/24〜10/19の8回 「児童文学専門講座−宮澤賢治童話の世界−」               (国際児童文学館と共催) 8/27〜9/14 「宇宙への誘い」展 9/14 「宇宙教室」講演会(宇宙開発事業団と共催) (今後の予定) 10/27〜1/26の4回 ライティカレッジ「司馬遼太郎の世界」 11/22〜11/16の3回 スライドカルチャー(大阪商業大学と共催) 11/27 大阪府立大学水曜講座特別講義(大阪府立大学と共催) 11/28 ライティホールコンサート−ジャズコンサート−      (大阪府文化振興財団、大阪21世紀協会と共催) 1/11〜1/25の3回 おおさか・ウィメンズ・オープンカレッジ             (大阪女子大学と共催) 3/2 ライティホールコンサート−室内楽演奏−    (大阪府文化振興財団、大阪21世紀協会と共催) OL‐NET(大阪府立中央図書館ネットワークシステム) 府立図書館の蔵書は、家庭からでもパソコン通信で調べることができます。 府内の市町村図書館等を通して、府立図書館の資料が利用できます。  大阪府立図書館(中央、中之島)両館の蔵書は、中央図書館のコンピュータシステムで一元管理し提供しています。8月末現在、約120万冊の所蔵情報をデータベース化し、両館内に配置された利用者用端末(タッチスクリーン式、キーボード式のパソコン)で検索できます。また、パソコン通信でご家庭等から直接に検索することができるほか、最寄りの市町村立図書館で府立図書館の資料が利用できるよう、次のようなネットワークを構築しています。 情報のネットワーク(パソコン通信による検索)  OL‐NETは、大阪府行政情報提供システム(O‐NET24)にゲートウェイ接続されていますので、図書館の休館日や開閉館時間帯に関わりなく原則として24時間、府内9ケ所に設けられたアクセスポイントを通して市内通話料金(一部地区のみ隣接地域料金)で府立図書館の蔵書を検索できます。図書館からのお知らせや催しものの案内などもパソコン通信で発信されています。  府内の市町村図書館等からの検索、協力貸出の申込・予約もこのパソコン通信を通して行われます。8月末現在、27市町村59館が府立図書館に接続しており、市町村の図書館でもこうして府立図書館のデータを活用することができますので、地域の利用者のニーズに対して、より充実したサービスが可能となります。パソコン通信を利用していない図書館からは、従来通りFAXで所蔵調査、貸出のリクエストを受けています。 物流のネットワーク(協力車での資料搬送)  府内の市町村立図書館からリクエストされた資料は、毎週1回市町村を巡回する当館の協力車で、各市町村の窓口となる図書館へお届けします。図書館未設置の市町村では公民館図書室を窓口としていますので、府内全市町村をカバーしています。  中之島図書館とは、開館日の全日、シャトル便を運行していますので、府立両館の資料を相互に利用(貸出、返却)することができます。  情報の提供と物流(資料の搬送)、両者一体となったこのネットワークをベースにして、府立図書館の重要な役割である府内全域サービス、市町村立図書館への支援を推し進めています。 *参考図書や雑誌など、貸出できない資料もありますので、事前にご確認下さい。 **府立図書館で個人に貸出をしない資料は、借受館での館内利用となります。 ***府立図書館で直接貸出手続きされた時は、必ず府立図書館にお返し下さい。 新府立中央図書館オープン後4ケ月の歩み  生涯学習、高度情報化社会にふさわしい総合的な図書館サービスを提供するため、府立中央図書館がオープンしてから、はや4ケ月が過ぎました。この間、数多くの方々の来館をいただきましたが、その利用状況の一端をグラフで表してみました。 編集後記  新府立中央図書館の誕生、中之島図書館のリニューアルオープン、夕陽丘図書館の特許情報センターヘの改組により、今年は90余年の大阪府立図書館の歩みのなかでエポックメーキングの年となりました。中央図書館では、他図書館とのネットワーク、各種講演会や講座・展示会の開催、ニューメディア資料の提供など時代にふさわしい様々な事業を展開しながら、中之島図書館や市町村図書館と協力して府民の皆様の生涯学習活動をより一層、支援してまいりますので、大いにご利用ください。新たな100年のスタートに当り、記念すべき第1号をお届けします。(題字は松本進一館長揮毫。)