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古文書の話

更新日:2014年2月1日


 古い資料を多く所蔵する中之島図書館には、「古文書を見たい」という方も来館されます。けれども、中には「古書(古典籍)」を見たいにも関わらず「古文書」を請求される方もおられます。このように、古書と古文書を同じと考える人もいますが、厳密にいえば、両者は別の物です(古書については→「古書の話」)。

このページでは、そんな「古文書」について説明してみたいと思います。

図書と文書

そもそも、図書と文書の違いはどのようなものなのでしょうか。『図書館情報学用語辞典』によると、図書は「手書きではなく印刷され、装丁され、出版され、さらに相当量のページ数(ユネスコの定義では49ページ以上)を有するものとして捉えられることが多い」とあり、英語では“book”と表現します。
一方、文書は「特定の個人や機関がその活動の過程で特定の相手に向けて作成した記録」であり、「発信者と受信者が特定されており、市販されない」ものと説明されています。英語では“document”です。文書は、主に官公庁によって出される公文書と、私文書に分けられます。主な私文書に手紙があります。
つまり、図書が(1)不特定多数に対して、(2)出版される資料であるのに対して、文書は(1)特定の者が特定の者に差し出す、(2)出版を前提としない資料と言えます。

古文書について

古文書は上に定義した文書の古いものを言います。『広辞苑』には「過去の時代の史料となる古い文書。差出人・受取人・用件・日付などを備えた公文書・私文書をいい、古記録と共に史料として最も重要」とあり、『図書館情報学用語辞典』には「ヨーロッパでは中世以前に、日本では江戸時代以前に書き記された公文書、私文書。過去の時代を考証する重要史料となる」と説明されています。
佐藤進一氏は『新版 古文書学入門』(法政大学出版局;1997年)で、歴史を認識し、歴史知識を構成するためによりどころとなる素材を「史料」と呼び、この「史料」を言語・風俗・習慣・伝承・思想から成る「精神的遺物」と、遺蹟・器物・文献から成る「物体的遺物」に分けています。
古文書はこのうちの文献史料に属するもので、同じ文献史料に一般の著述・編纂物・備忘録・日記を挙げ、古文書は「『特定の対象に伝達する意思をもってするところの意思表示の所産』、すなわち甲から乙という特定の者に対して、甲の意思を表明するために作成された意思表示手段」と定義づけておられます。
富田正弘氏は「中世史料論」『日本通史』別巻3(岩波書店;1995年)で文書を「ある者から他者に働きかけをする書類」であると簡潔にまとめておられます。ちなみに、記録を「ある者が事実の発生から間もない時点で自らのために記した書類」、編纂物を「ある者が事実の発生から一定の時間的経過の後にある目的のために文書や記録を利用して書き著した書類」と定義づけています。

図書館と文書館

上に見たような古文書は通常は文書館に収蔵されます。これは、文書の持つ「出所の原則」「資料の原秩序尊重の原則」という図書にはない特徴から、基本的には図書館で扱う資料とは切り離して考える考え方によります。
なお、文書館は「歴史研究のためにのみあるのではなく、広く人類の過去と現在の活動についての記憶である記録資料を保存して提供する」ところという考えから、文書・記録・編纂物の三者をアーカイブス(記録資料)として扱うことが一般的です(富田、前掲論文)。
しかし、実際は、日本の文書館整備の遅れから、図書館で古文書を所蔵しているケースも多く見受けられ、中之島図書館でも古文書を所蔵しています。

中之島図書館の主な古文書


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