大阪府立図書館

English 中文 한국어 やさしいにほんご
メニューボタン
背景色:
文字サイズ:

「はらっぱ」 No.33 国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2024年2月21日


「はらっぱ」 No.33 国際児童文学館 イベント紹介

掲載日:2020年3月31日更新

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

 平成31年・令和元年も、国際児童文学館では、子どもの本に関するイベントや貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催した。ここでは、その中からいくつかをとりあげて紹介したい。これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページに掲載している。併せてご覧いただきたい。
【大阪府立中央図書館 国際児童文学館 イベント情報】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

小展示「幻の児童雑誌『カシコイ』~学年誌が描いた子ども文化~」

 平成31年4月9日(火曜日)から令和元年6月30日(日曜日)、国際児童文学館室内小展示コーナーにおいて開催した。
 『カシコイ』は昭和7年に精文館が刊行した、学年別の児童雑誌である。小川未明、浜田広介、坪田譲治、北原白秋、新美南吉、初山滋など、著名な作家の作品が掲載されたが、原本は殆ど確認されておらず、全貌をつかむことができなかった。しかし、近年版元の関係者の自宅から、大量の原画が原本とともに発見され大きな話題となった。
 今回、版元・精文館関係者のご遺族の協力のもと、新たに発見された同誌の原画を紹介する展示を実施した。ご遺族である北村好子さん、行司千絵さんより原画を8点借用。原画と当館所蔵の『カシコイ一年小学生』『カシコイ二年小学生』の該当ページを見比べることができるように並べた。また、鈴木寿雄や初山滋ら『カシコイ』を描いた童画家たちの紹介、当時の精文館の写真をパネルで紹介した。
 あわせて、戦前・戦後と長期にわたり、継続して出版され続けてきた学年別学習雑誌(学年誌)の展示を行った。戦前には、大正11年に創刊された小学館の『小学五年生』『小学六年生』をはじめ、「学習」「教育」「ユウトウ」「モハン」などの言葉と学年を組み合わせたタイトルの類似雑誌が多く刊行された。戦後もその流れは引き継がれ、学習研究社、広島図書、講談社ら各社が学年誌を創刊した。
 今回の展示によって、当館の貴重な雑誌を挿絵の原画、学年誌の系譜という視点から見ることができ、『カシコイ』という雑誌を知っていただく良い機会となった。また、絵雑誌や少年少女雑誌とも異なる、学年誌の文化について触れていただけた。
学年誌が描いた子ども文化の展示風景の写真

小展示『フランダースの犬―ネロとパトラッシュのさまざまな姿―』(展示用貸出パック紹介第2弾)

 令和元年7月5日(金曜日)から9月23日(月曜日・祝日)、国際児童文学館室内小展示コーナーにおいて開催した。展示作品の選定および解説執筆には、千葉大学教育学部国語科教授の佐藤宗子さんにご協力いただいた。
 国際児童文学館では、図書館や博物館、美術館等の団体による展示利用に供するために、「国際児童文学館展示用貸出パック」を用意している。これは1つのテーマごとに、当館が選び出した所蔵資料をセットにし、リストや解説付きで貸出するものである。その利用促進および新たな収集資料の紹介のために、標題の展示を実施した。
 『フランダースの犬』の作者であるイギリス出身の作家ウィーダの紹介から始まり、原作のお話の構造、明治期における日本への移入、翻訳家によって異なる結末の描かれ方、昭和以降に出版された翻訳本におけるネロとパトラッシュの様々な姿、アニメーションの影響、といったテーマの下、豊富な解説と共に資料を紹介した。また、セット作成時から年月を経ているため、近年の『フランダースの犬』関連本が収録されていなかったことから、今回の展示に合わせて、その後刊行された翻訳本や研究書、関連書を選択して収録し、佐藤宗子さんに新たに解説を執筆してもらうことにより、情報の更新も行った。
 小展示コーナーではさらに、横浜市の放送ライブラリーが提供する「放送ライブラリー公開番組ストリーミングサービス」を利用し、1975年に放映されたアニメ「フランダースの犬」の第1話、51話、52話(最終話)の視聴コーナーを室内に設置し、好評を博した。
 また、こども資料室でも中央図書館所蔵の関連資料を展示し、貸出に供した。
 展示を見て、アンケートにご協力いただいた方には、当館が作成した「豆本」をプレゼントした。著作権保護期間を満了した明治41年発行の『フランダースの犬』(ウイダ/原著 日高柿軒/訳述 内外出版協会)の表紙や口絵を使用している。
フランダースの犬の豆本の写真
 展示の見学者からは「現代の状況まで関連づけられた内容で興味深い」「翻訳された背景や、結末の違いなど、とても面白い内容」「アニメのフランダースの犬しか知らなかったので原作にふれる事ができてよかった」などの感想をいただいた。また、展示期間中に当館へのテレビ・新聞の取材が入った際は、当展示も紹介された。特に初めての邦訳である日高柿軒訳において、ネロとパトラッシュの人名が「清(きよし)」と「斑(ぶち)」となっている点は注目されることが多かった。
フランダースの犬の展示風景の写真
 今回の展示は、「国際児童文学館展示用貸出パック」として今後、提供する予定である。他施設における利用につながるようにPRに努めたい。

出張資料展示『ピーター・パンの世界』展

 令和元年7月5日(金曜日)から7月31日(水曜日)、大阪市立中央図書館1階エントランスギャラリーにおいて開催した。
 当展示は大阪市立中央図書館主催(協力:当館)で、国際児童文学館の資料を広く知ってもらうという趣旨から企画され、当館から展示キャプション等がセットになっている「国際児童文学館展示用貸出パック」を提供した。大阪市立中央図書館で国際児童文学館所蔵資料が展示されるのは今回が初めてである。
 内容は、平成28年に国際児童文学館室内小展示コーナーで行った『ピーター・パンの世界』展と同内容(原作者のJ・M・バリによるピーター・パンの描き方や、大正、昭和初期に出版された翻訳・翻案作品などを紹介)であるが、国際児童文学館の紹介も併せて行った。
 展示した資料は69点。当館職員が搬送し、展示設営を行った。
 展示期間中の来館者の反応はよかったとのことで、今後も国際児童文学館の資料の展示をできればと、大阪市立中央図書館の担当者からの声もいただいた。
ピーター・パンの世界展のチラシの写真

【「国際児童文学館展示用貸出パック」のご案内】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/tenjipack.html

「むかしの紙芝居を楽しもう!」実演および関連資料展示

●街頭紙芝居実演

 令和元年10月5日(土曜日)、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団と共催で多目的室にて開催し、68人の参加者を得た。
 塩崎おとぎ紙芝居博物館の紙芝居師である大塚珠代さん・岡田克也さんに、街頭紙芝居を実演していただいた。にぎやかな太鼓の音とともに始まり、次々と繰り出されるクイズに子どもたちはたちまち引きこまれた。いたずらな子どもが活躍する『チョンちゃん』、姿の見えない犯人に翻弄される『透明怪人』、クイズをはさんで『あてがはずれた狼』、『さるとかに』と続いた。子どもたちはクイズで大いに盛り上がり、実演中も紙芝居師との掛け合いを楽しんでいた。子どもも大人も会場全体が明るく楽しい一体感のある時間を過ごした。
街頭紙芝居実演の風景の写真

●資料展示

 今年度は実演イベントにあわせて、令和元年10月1日(火曜日)から11月13日(水曜日)、国際児童文学館室内小展示コーナーにて街頭紙芝居の展示を開催した。
 当館では、故・塩崎源一郎氏が紙芝居の絵元(制作元)として設立した塩崎おとぎ紙芝居博物館(三邑会(さんゆうかい))から寄贈された貴重な街頭紙芝居コレクションを所蔵している。この中から、代表的な画家6人の作品を取り上げ、画家の解説とともに展示した。手塚治虫との共作『新宝島』で知られる酒井七馬(さかい・しちま)=左久良五郎(さくら・ごろう)の『鞍馬小天狗』や、小寺鳩甫(こでら・きゅうほ)=熱田十茶(あった・とさ)の『文福茶釜うかれ狸』、塩崎氏から日本一の紙芝居画家と称された佐渡正士良(さわたり・しょうじろう)の『どんぐり横丁に集まれ』、宇田野武(うたの・たけし)の『南極大陸』、くつなつとむの『白蛇不動尊』、相馬一平(そうま・いっぺい)の『トッパ君』などである。
 また、今回は塩崎おとぎ紙芝居博物館にご協力いただき、同館所蔵の日本画(街頭紙芝居を制作した画家が描いたもの)の展示も行った。日本画と街頭紙芝居での画家の作風の違いを感じることができた。
街頭紙芝居の展示風景の写真

 なお、当館所蔵の街頭紙芝居約4千巻の絵のデジタル画像をホームページに公開している。
【大阪府立中央図書館国際児童文学館所蔵 街頭紙芝居】
https://www.library.pref.osaka.jp/central/kamishibai/index.html

企画展示「魅せます!紙芝居展」と関連講演会

●資料展示

 令和元年11月15日(金曜日)から12月28日(土曜日)、中央図書館1階展示コーナーおよび国際児童文学館で開催した。展示作品選択と解説執筆には、浅岡靖央さん(児童文化研究者・白百合女子大学教授)ならびに一般財団法人大阪国際児童文学振興財団にご協力いただいた。
 国際児童文学館では、紙芝居の収集に努めており、貴重な紙芝居をご寄贈いただく機会も多く、国内外に誇るコレクションを所蔵するに至っている。そこで、所蔵する印刷紙芝居を中心に、1930年代から現在に到るまでの長い歴史の中から、紙芝居の多様な広がりを感じられる資料を紹介した。
 なお、当館所蔵資料に加えて本展示の監修をしてくださった浅岡靖央さんの資料も特別にお借りして展示した。
 内容は、戦中期(1930年代から1945年まで)からは、キリスト教布教のために作られた福音紙芝居『浪よ静まれ』『聖書物語:放蕩息子』や、紙芝居の語りを音声で流すレコード紙芝居『雀のお宿』『祖国を護れ』『護れ軍艦旗』、戦中期の戦意高揚のための『ウチテシヤマム』や貯蓄奨励の『貯金爺さん』などの国策宣伝紙芝居、戦時下に子ども向けに作られた名作童話の紙芝居『キツネノゲントウ:宮沢賢治「雪渡り」より』などを紹介した。
 戦後期からは、いわさきちひろが絵を描いた『お母さんの話:アンデルセン童話』などの名作紙芝居や、民主主義を広めるための国策宣伝紙芝居『楽しい五郎君』、ラジオの人気作品を紙芝居化した『鐘の鳴る丘』、調べ学習のための教材紙芝居『図書館へようこそ』、『まほうのふで(中国民話)』の中国語版などを紹介した。
 展示を見て、アンケートにご協力いただいた方には、紙芝居の絵を使用した特製ブックカバーをプレゼントした。
魅せます!紙芝居展の展示風景の写真その1

●関連講演会

 11月30日(土曜日)に大会議室で関連講演会「紙芝居の歴史から子どもの読書文化について考える」(講師:浅岡靖央さん、主催:大阪国際児童文学振興財団主催)が行われた。参加者63人。紙芝居『あひるのおうさま』の実演からはじまり、展示されている紙芝居作品等を紹介しながら、紙芝居の歴史を振り返り、紙芝居というメディアを子どもの読書文化の中で位置付ける内容であった。熱心な質疑応答も行われた。
魅せます!紙芝居展の展示風景の写真その2

 


PAGE TOP