大阪府立図書館

English 中文 한국어 やさしいにほんご
メニューボタン
背景色:
文字サイズ:

「はらっぱ」 No.28  国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2015年3月31日


「はらっぱ」 No.28  国際児童文学館 イベント紹介

掲載日:2015年3月31日更新

 国際児童文学館では平成26年も、新刊児童書を紹介する講座「2013年に出版された子どもの本」や子どもの本に関する講演会、貴重な所蔵資料を紹介する展示等を行い、多数の来場者を得た。その中からいくつかをとりあげて紹介したい。
講演会や展示等で紹介した資料のリストを国際児童文学館ホームページに掲載している。併せてご覧いただきたい。

【大阪府立中央図書館国際児童文学館>これまでの主な活動】(https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

講演会「養老孟司さんに聞く~子どもの未来と読書」(平成25年度第5回府民講座)

 平成26年1月25日(土)、脳科学・解剖学者で、作家でもある養老孟司さんの講演会&トークイベントを大阪府立中央図書館ライティホールで開催した。イベント参加者の募集開始からわずか1週間で定員を超える申込みがあり、当日は308人の参加者を得た。

第1部 講演会「子どもの未来と読書」

養老さんは、昭和12年生まれ。幼い時は戦時中で本が少なく、大人が物語を聞かせてくれた。また、小学生の時結核で1年間学校を休み、1人で本を読んで過ごすことに親しんでいった。そして小学生の時終戦を迎え、先生の指示で教科書に墨を塗ったことを強烈な印象として覚えており、その後の人生にも影響を与えた。これらの体験を通して、子どもは時代の影響を大きく受けるということをお話された。
今は子どもがテレビ、ゲーム、アニメ等多様なメディアに親しんでおり、本への比重は軽くなっているが、これらすべては物語を楽しむメディアであり、本もその中の一つであると捉えればよいとお話された。
また、読書を考えるうえで心の問題が語られることが多いが、心と身体はともに考えられるべきであるという考えを示された。そして、道元の書には「身心」と記されていることを引き、優先されるべきは「身体」の方で、身体を動かすと気持ちがいいというように「心」は後からついてくる、「身体を使いながら本を読む二宮尊徳が健全でいい」といったユニークな持論で締めくくられた。

第2部 トーク「養老孟司さんに聞く」

 当館職員が聞き手となり、養老さんにとって思い入れのある児童書について、国際児童文学館所蔵資料をスクリーンに投影しながらお話をうかがった。『こがね丸(講談社の絵本)』、マンガ『長靴の三銃士』『冒険ダン吉』『のらくろ小隊長』、南洋一郎や佐々木邦の作品を読んだ雑誌『少年倶楽部』、『ふしぎの国のアリス(世界名作童話全集)』(大日本雄弁会講談社)や『ドリトル先生アフリカゆき』、『熊のプーさん』等ファンタジーやユーモアのある作品が子どもの頃から好きだったこと、そして、せっかく読み始めてすぐ終わるのはもったいないから長いファンタジーが大好きであること等をお話された。
また、赤ちゃんの時からスマートフォンを見ていることや子どもの時から電子書籍に触れることと発達の関係については、インターネットを使うと広く浅く横に脳を使い、本を読む場合には、深く脳を使うと述べられた。一方で、ゲームが脳に与える害も言われているが、脳は柔軟性があって修正可能であるため、長時間プレイしなければ問題ないとお話された。さらに、身体の感覚を得るために都会人は田舎に3か月ほど「参勤交代」すればよい等々、ユーモアを交えながらも読書の枠を超えて現代人の生き方に対する示唆に富んだ内容であった。
講演会&トークを通じて養老さんの幅広いお話に参加者は熱心に耳を傾けていた。参加者アンケートからは読書とは何か、子どもとは何かについて考えるきっかけになったことが読み取れる。
なお、養老さんがトークイベントで紹介された本のリストは、国際児童文学館ホームページに掲載している。

「絵本がつなぐ日本と世界~四條畷発・海外でも活躍する絵本作家・谷口智則さん講演会・絵本原画展~」

大阪府立中央図書館と四條畷市教育委員会の共催で、四條畷市在住の絵本作家・谷口智則さんの講演会と絵本原画展を開催した。

講演会

平成26年5月25日(日)、大阪府立中央図書館大会議室で開催し、72人の参加者を得た。
子どもの頃から地元の四條畷市立図書館に通い、数々の児童書を読まれていたという谷口さん。最初に「物語」のおもしろさに惹きこまれた本が小学生の時に読んだ『ズッコケ三人組』だったこと、『ジョセフのにわ』のチャールズ・キーピングの絵に出会って、物語と絵の融合・調和を意識するようになったこと、そのほか『どうぶつ』のブライアン・ワイルドスミス、『おおきな木』のシルヴァスタイン、レオ=レオニ等、影響を受けた絵本や作家を紹介しながら、子どもも大人も楽しめる絵本作家をめざすようになった動機についてお話された。
また、自作の7作品を朗読され、それぞれの制作時の状況や作品に込めたテーマについてお話された。作品のモチーフに関連して、国際児童文学館所蔵資料の『ピノチヨ』(西村アヤ/作)、『日本一ノ画噺』(巌谷小波/著)等の画像をスクリーンに映して解説された。
さらに、大学で日本画を専攻し日本美術の良さを学んだからこそできる自身の作品づくりや、それに対する海外での評価、また国内外での活動についてもスライドを用いて具体的に紹介された。
参加者のアンケートでは、「作家の思いが聞けてすごく良かった。絵本への理解が深まった」、「日本文化を大切にされ、世界にも広めてくださる姿勢に感銘を受けた」「絵本の発展を考えさせられた」などと好評であった。

絵本原画展

 平成26年5月20日(火)~6月1日(日)、講演会前後の2週間、谷口智則さん作品から絵本『CACHE CACHE』、『PINOCCHIO la marionnette de fer』、『7 contes japonais』の原画61点、ピノキオオブジェ、鳥獣戯画の模写を展示、また作品のモチーフに関連するピノキオ、昔話・お伽噺等の国際児童文学館所蔵資料29点と、こども資料室所蔵資料からは谷口さんの著作と谷口さんが影響を受けた絵本やおすすめの児童書等133点を展示した。
大阪府立中央図書館1階の展示コーナーはエントランスから各階閲覧室へ向かう途中に位置するが、一面に広がる谷口智則さんの作品世界に、足を止めて見入る来館者の姿が多く見受けられた。
なお、講演会で谷口さんが紹介された本をはじめ、子どもの頃繰り返し読まれた本等のリストは、国際児童文学館ホームページに掲載している。
谷口智則さん

ドイツの児童文学作家クラウス・コルドン講演会「わたしの物語作法―「古き」ベルリンの若者たちの今」

平成26年11月30日(日)、「ドイツの児童文学作家 クラウス・コルドン講演会」(国立国会図書館国際子ども図書館、大阪府立中央図書館、一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団主催)を大会議室で開催し、82人の参加者を得た。

第1部 講演「クラウス・コルドンの世界」

ドイツ文学者で翻訳家の酒寄進一さんが、コルドンさんの「ベルリン」3部作(『ベルリン1919』、『ベルリン1933』、『ベルリン1945』理論社)の意義を、1930年前後のベルリンを舞台にしたフォルカー・クッチャー著の警察小説(東京創元社刊『濡れた魚』等)や、コルドンさんと同世代でシリア出身のドイツ文学者ラフィク・シャミの長編小説『愛の裏側は闇』(全3巻 東京創元社)を例に挙げて紹介された。

酒寄進さん

第2部 対談:コルドン×酒寄進一

(通訳:マライ・メントライン)

続いて酒寄さんがコルドンさんに作家になるまでの経歴を聞くという対談が行われた。コルドンさんは父を戦争で亡くし、13歳の時母も亡くし、児童養護施設で育ったこと、東西ベルリンを往来して自分自身の考えを持つことの重要性を学んだこと、ベルリンの壁ができた様子、恋愛、西ドイツへの亡命の失敗と収容所での生活について語られた。

第3部 講演「わたしの物語作法-「古き」ベルリンの若者たちの今」

(通訳:酒寄進一)

コルドンさんが「ベルリン」3部作を中心に、執筆過程や歴史的事実を調査した方法、10代の子どもに歴史小説を書くことの意義について、ブレヒト、ゲーテ、ギュンター・グラス、ヘッセ等の言葉を引用しながら以下のように語られた。
ドイツの青少年が第二次世界大戦までの経緯を全く知らないことにショックを受け、『ベルリン1919』を執筆した。その際、ベルリンの最も貧しい地域を舞台に、さまざまな政治的立場の人たちに議論をさせる手法を用いた。書籍や新聞等の資料のほかに、ベルリンの老人たちが集うカフェでの聞き取り調査も行って歴史的なできごとを描写した。自分の歴史小説を読むことによって10代半ばの読者が過去を感覚的に体験し、それによって現在の社会のありようについて考えて欲しいと願っている。
質疑応答ではケストナーや未訳の作品、今後の作家活動等について語られ、盛況のうちに終了した。

クラウス・コルドンさん

小展示「かがやく<少年>探偵たち~子ども向け推理・探偵小説のあゆみ~」

平成26年は江戸川乱歩の生誕120年にあたり、またモーリス・ルブランの生誕150年でもあることから、4月1日~6月29日、小展示コーナーにて、明治から今日にいたる子ども向け推理・探偵小説の歩みをたどる資料展示を実施した。
主な展示資料は、大正期に活躍した作家の作品からは江戸川乱歩・横溝正史に愛読された三津木春影や、子どもの探偵が活躍する永島永洲の作品等。そして少年探偵小説が大きく花開くきっかけとなった乱歩の「怪人二十面相」「少年探偵団」はテレビドラマや映画にもなっているが、本展示では小説のほか、漫画化された作品や、少年探偵団のアイテム「少年探偵手帳」(雑誌『少年』付録 昭和39年)等も配置した。
ルブランの「アルセーヌ・ルパン」の翻訳作品は、昭和・平成に渡ってポプラ社から発行され広く流布した南洋一郎訳のものから、高畠華宵が挿絵をつけた大日本雄弁会講談社発行(昭和27年)のものや、児童向け雑誌の付録として発行されたものを展示した。
そのほか、古くは大正5年に通俗教育普及会出版局から発行されたコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」や、乱歩以降の日本の作品として、横溝正史の『幽霊鉄仮面』(ポプラ社 昭和29年)、童謡詩人西條八十による『探偵小説すみれの怪人』(大日本雄弁会講談社 昭和31年 雑誌『少女クラブ』付録)も展示した。
最後に今の子ども達に人気の高い講談社青い鳥文庫で継続中のシリーズ(はやみねかおる「名探偵夢水清志郎」、松原秀行「パスワード」等)や、『ルパン三世』『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』などの爆発的な人気を博したコミックを配置することで、現在まで衰えぬ人気の“推理・探偵もの”展示をしめくくった。
小展示ではあったが、熱心な探偵小説ファンに多数ご来場いただくことができた。
同時開催の子ども向けイベント「きみも名探偵 怪盗ジーニーにちょうせん」は、こども資料室を起点に、暗号やクロスワードを解きながら国際児童文学館の展示コーナーまで来てもらうクイズラリーの形とした。

小展示・かがやく少年探偵たち

小展示「ハイジと妖精の国 スイスの子どもの本」と関連イベント

平成26年7月8日~9月21日、国際児童文学館小展示コーナーで開催した。
本年はスイス・日本国交樹立150周年記念の年であり、スイス大使館の後援および“日本・スイス国交樹立150周年記念事業”の承認を受けたため、幅広い広報が可能となった。
主な展示資料は「ハイジ」の原書や明治時代以降の翻訳資料、古典作家のエルンスト・クライドルフ、ウォーリャ・ホネガー・ラワタ(生誕100年)の作品、日本の子ども達にも親しまれているハンス・フィッシャー、フェリックス・ホフマン、イェルク・ミュラー、ケティ・ベントの作品等である。加えて現代の作家の手になる絵本も展示した。
また、関連イベントとして、期間中展示物をじっくり見てもらう目的で子ども向けクイズ「やってみよう スイスクイズ!!」を実施し、成人も含む100人の参加があった。夏休みにはこども資料室おはなしのへやで、スイスの絵本とおはなしで構成した「おはなし会~ハイジと妖精の国スイスから」を2回実施し、44人の参加者を得た。そのうち31人には展示コーナーで資料を目の前にしつつ説明を行った。
加えて同期間中こども資料室においても貸出可能なスイスの子どもの本を展示し、貸出利用に供した。

 
◇◆◇ おはなし会のプログラム ◇◆◇

・世界地図でスイスを探そう

・絵本「るんぷんぷん
(ハンス・フィッシャー 架空社 2000)

・絵本「ちょっとまって、きつねさん!
(カトリーン・シェーラー 光村教育図書 2008)

・ストーリーテリング「赤いオンドリ
(『世界むかし話1 フランス・スイス』 ほるぷ出版1979)

・スイスの子どもの本の紹介

資料展示「生誕120年記念 武井武雄のおもちゃ箱展」と関連イベント

 平成26年8月5日~8月17日と10月10日~12月28日の二期にわたって開催した。
平成26年が生誕120年となる武井武雄は、「こどもの魂にふれる絵」の創造をめざして自ら「童画」という言葉を生み出し、独自の画風で童心を巧みに表現した童画、版画、造本・装幀や函の意匠、玩具やトランプのデザイン等、様々な分野で活躍した人物である。
第一期は、府内の商業施設で開催された「武井武雄の世界展」(岡谷市、NHKサービスセンター等が主催)と連携し、会期を合わせて実施した。武井武雄の経歴や作品を紹介したパネルと国際児童文学館所蔵資料の中から『おもちゃ箱』『ラムラム王』等、武井著作の復刻版を中心に、中央図書館1階のエントランスギャラリーで展示した。
第二期では、中央図書館1階の展示コーナー全面を使用した。国際児童文学館所蔵の展示資料全103点のうち主なものは、武井が多くの作品を投稿した雑誌『子供之友』や、創刊から携わった雑誌『コドモノクニ』をはじめ、創作童話『ペスト博士の夢』、挿絵を担当した『アンデルゼン童話集』(菊池寛/編)、装幀を手がけた『未明童話集』(小川未明/著)のほか、豆本、カルタ等である。また『コドモノクニ』については、武井が表紙絵を担当した号(12ヶ月分)等をパネルにして掲示する「コドモノクニ・ミニギャラリー」を設けた。
そのほか企画展示エリアに中央図書館所蔵の関連資料を約120点展示し、貸出にも供した。
さらに、関連イベントとして、期間中にクイズラリー「わかるかな? 童画の王さま・武井武雄クイズ!!」を開催した。「武井武雄の生まれた年は?」等の5つの問題を全て正解した方には、武井武雄の作品を配したブックカバーやぬりえをプレゼントした。展示会場の一角には、ぬりえの完成作品を掲示する「ぬりえコーナー」を設けた。会期終了までに162人が国際児童文学館カウンターへ答合わせに訪れた。
なお、本展示はNHKサービスセンターの後援を受けて、パネル制作の協力を得たほか、互いの会場においてポスター掲示やチラシ配布等の広報協力も行った。双方の展示を見て感想を述べられる来場者もいた。また、本展示の開催にあたって、武井武雄の作品を多数所蔵している岡谷市のイルフ童画館から多大な協力を得た。関係各位の御支援に厚く御礼申し上げます。

国際児童文学館所蔵「街頭紙芝居」-全巻を専用サイトで公開-

 当館所蔵の街頭紙芝居約4千巻(約4万枚)をデジタル化し、平成26年5月、全巻をWebサイトに公開した。
https://www.library.pref.osaka.jp/central/kamishibai/index.html
対象の街頭紙芝居は、ほとんどが貸元である塩崎おとぎ紙芝居博物館(三邑会)から寄贈されたもので、すべて手描きの1点ものである。
国際児童文学館ホームページ中央下部にあるアイコンをクリックすると、トップページのタイトル一覧もしくは著者一覧から作品を選択できる。公開している画像は絵の面のみで、1巻1枚めを5732×4173ピクセルで、その他は120×87ピクセルで掲載した。
Webサイトとは別に、館内での閲覧に供するため、デジタル化の成果物をB4サイズで印刷し、対応する絵の面と字の面が見開きに並ぶようファイルして備えた。原本の閲覧には事前の届け出を必要としているが、この複製により世にふたつとない貴重な資料を保存しつつ、原本に近いものを気軽に利用できるようになった。
(平成25年度緊急雇用創出基金事業にて実施)


PAGE TOP