「はらっぱ」 No.27(2014) 国際児童文学館 イベント紹介
更新日:2014年3月28日
「はらっぱ」 No.27(2014) 国際児童文学館 イベント紹介
大阪府立中央図書館 国際児童文学館
国際児童文学館の概要
大阪府立中央図書館国際児童文学館は、大阪府立国際児童文学館(吹田市千里万博公園内)から約70万点の資料を引き継ぎ、平成22年に開館した。「児童文学・児童文化の総合資料センター」として、網羅的・体系的に児童文学関連資料を収集・保存し、館内のみの閲覧で提供している(マンガ・マンガ雑誌など閲覧予約が必要な資料がある)。閲覧室には参考図書、雑誌バックナンバー等のほか最近1年間に発行された児童書のほぼ全点を新刊コーナーに出版年月日順で開架している。
企画事業では、ユニークな蔵書を活用した資料展示と関連イベントなどの開催や、「子どもの読書支援センター」として、こども資料室ほか図書館全体で子どもの読書活動推進に取り組む各種研修・講座や大規模な講演会などを実施している。
ここでは、毎年参加者から好評を得ている児童書の新刊紹介講座と、平成24・25年度に行った主なイベントを紹介する。
「紹介と解説 ○○年に出版された子どもの本」について
1.講座概要
移転前の旧施設で開催していた標記講座を、移転後も継承して実施しているもので、前年1年間に発行された児童書について、【絵本】【よみもの】【知識の本】の3分野に分けて、傾向と解説を行うものである。年に1回3日間(1日コース×3回)同一内容を開催している。主な参加者は、図書館関係者・読書活動ボランティア・学生など約260人で、近畿外からの参加もある。毎年外部講師をお願いしている科学読物研究会の西村寿雄さんに加え、国際児童文学館とこども資料室の職員が講師をつとめる。
2.開催までの準備
準備は一年がかりで、過去からの積み重ねも重要な要素である。準備はおよそ次のような流れとなる。
(1)通読
職員は、担当分野が決まったらまず、全ての資料に目を通し、ひたすら読み込む。
(2)評価
開催前年度の夏から冬にかけて毎月1回程度、新刊評価会議を分野ごとに行っている。担当職員と外部講師が2~3ヶ月分の資料について、感想や評価を述べ合う。時には職員間で解釈や評価がわかれることもあり、見落としていたことに気づいたり、多様な読み方を知る良い機会となっている。時事問題や社会情勢を反映して、絵本では震災関連本が、読物では両親がそろっていない家庭の話が増えている。また2013年の知識の本は富士山・深海生物が多いなど、その年ごとの出版傾向を把握しつつ、同じテーマをとりあげた本の比較や分析も行う。
(3)資料作成・リハーサル
1年間に出版される約3,000冊の新刊書の中から、特徴的な資料を約740冊リストアップし、そのうち【絵本】と【よみもの】約210冊について、配付資料に掲載するあらすじを書く。制限文字数の中でいかにして内容を伝えるか何度も推敲を重ね、約40頁の冊子を印刷する。このあらすじは、書誌データにも入力するので、国際児童文学館の蔵書検索でも見ることができる。
作業の傍らリハーサルを行う。資料ごとにどのページをスクリーンで見せるかを決め、講師とスクリーン担当者は、ページのめくりのタイミングを確認し合う。時間内になるべく多くの情報を盛り込むために、話すスピードは通常の1.2倍ほどであり、滑舌よく、テンポよくと心がけている。
3.当日
午前中から大量の本を紹介し、参加者の頭が飽和状態になった午後3時頃、ほっと一息ついて楽しめるプログラムを用意している。西村さんによる平成25年のミニ実験「ドライアイスの鉄砲」では、フィルムケースにドライアイスの破片を入れて数分置くと、ふたが“ポン!”と飛ぶ音に、会場内に驚きの歓声と笑いが広がった。
4.当講座がもたらしたもの
平成21年度まではこども資料室で年に1度、新刊評価会議を行っていたが、国際児童文学館の開館をきっかけに頻度をあげて合同で開催できるようになった。評価会議で、旧施設時代から当講座に携わっている西村さんの科学的な観点からのアドバイスを聞くこと等により、職員の専門性は確実に上がっている。この経験を活かし、今後もより充実したサービスを提供していきたい。
当講座を子どもの読書活動の一助としていただけることを願っている。
「原ゆたかさん講演会&おえかき会:『かいけつゾロリ』人気のヒミツ!」を開催して
平成25年1月26日(土)、児童書作家・原ゆたかさんの講演会「大人だけにこっそり語る創作のひみつ」を大阪府立中央図書館ライティホールで、子ども向けおえかき会&サイン会「『かいけつゾロリ』の原ゆたかさんおえかき会」を当館2階大会議室で開催した。
イベントの募集開始直後から、次々と申し込みがあった。とりわけ、子ども向けおえかき会&サイン会の申込みハガキには、子どもたち自身によってかいけつゾロリの似顔絵やメッセージなどがかかれるなど工夫を凝らしたものが多く、子どもたちのゾロリへの、また原ゆたかさんへの思いがひしひしと伝わってきた。定員30人に対し、500人以上の応募があり、高倍率の抽選となった。
第1部 講演会「大人だけにこっそり語る創作のひみつ」
冒頭、原さんは、子どもたちの味方となる作家がもっと育ってほしいという思いが強くなり、これまでは読者の子どもたちにだけイベントをしてきたが、大人向け講演会をするようになったと話された。それから、「かいけつゾロリ」を書くことになった経緯を語られ、原さん御自身が小学生時代に本を読むことが嫌になった経験もあったことから、本が苦手な子どもたちにも楽しんで読んでもらえる本を書きたいという思いが創作の根底にあることなどをお話しくださった。
第2部 子ども向けおえかき会&サイン会「『かいけつゾロリ』の原ゆたかさんおえかき会」
かいけつゾロリの絵柄のシャツを着て登場した原ゆたかさん。まず、おえかき会では、ホワイトボードを使ってかいけつゾロリの描き方や、ゾロリの仲間のイシシ・ノシシの描き方を教えてくださった。その後子どもたちがそれぞれの紙に自分で描き、原さんは会場を歩きながら、子どもたちの絵やアイデアの良いところを具体的に挙げて、ほめてくださった。
続いて行われたサイン会で、子どもたちは、憧れの原さんのすぐ前に座り少し緊張している様子だったが、原さんは子どもたち一人ひとりにゆっくりと話しかけてくださった。今夢中になっていることを尋ねたり、マンガ家になりたいという子にはアドバイスをしてくださったりした。
最後の原さんとの写真撮影では、どの子も、満面の笑みを浮かべていた。サイン会後のアンケートでは、「子どもに対する原先生の教え方が、わかりやすくて良かった」(保護者から)、「先生のおはなしが楽しい。一人一人に声をかけてもらえてうれしい。」(子どもから)など好評の声が多かった。
小展示「絵本の国の赤ずきん~グリム童話出版200周年記念」と関連イベント報告
平成25年7月12日~9月29日、国際児童文学館小展示コーナーで開催した。
初版の発表から200周年にあたるグリム童話の代表作「赤ずきん」を取り上げ、国際児童文学館が所蔵する絵本を紹介した。世界の「赤ずきん」(原語・翻訳)、日本の画家による「赤ずきん」、パロディといったテーマで構成し、また雑誌付録の指人形、ぬいぐるみ絵本、紙芝居等さまざまな形態の「赤ずきん」資料もあわせ、全48点を展示した。期間中は、こども資料室にも「赤ずきん」関連資料コーナーを設置した。
また、関連イベントとして、ワークショップ「赤ずきんちゃんのパロディを作ろう」、「赤ずきんちゃん、オオカミどの絵が好き?~人気投票」、図書館エントランスでのクイズ掲示(赤ずきんのバスケットの中身は?)、「赤ずきんちゃんに変身!コーナー」(撮影会)を開催した。これらのイベントによって、「赤ずきん」の物語世界により親しみを持ってもらい、展示コーナーへ誘導し、さらには国際児童文学館のサービスを知ってもらうことにつながった。
小学生15人が参加したワークショップの内容は、「赤ずきん」ストーリーテリング(10分)、パロディを考える(20分)、絵本の作成(60分)、1年生から順番に作品発表(30分)とした。話の構成を考えてから画用紙に色鉛筆やクレヨンを使って絵を描き、貼り合わせて絵本にした。なかなかアイデアがまとまらず苦労する子どももいたが最後には全員が完成させ、「ピンクずきんちゃん」、「王様ずきん」、「5人兄弟の赤ずきん」など、楽しいパロディ絵本が披露された。
人気投票では、展示資料の絵本の中から赤ずきんとオオカミの絵、各5点の候補を挙げ小展示コーナー内に設置したホワイトボードにシールを貼って投票できるようにした。参加人数はのべ168人で、結果は赤ずきん1位:”Little Red Riding Hood”(ポール・ガルドン/画)得票数51、オオカミ1位:『あかずきん』(リスベート・ツヴェルガー/画)得票数51であった。
撮影会は、イベントとして今回が初めての試みであった。「赤ずきんちゃんに変身!コーナー」を展示期間中の毎週土曜日3時半~4時半、図書館エントランスに設置し、赤ずきんのコスチューム(赤いマント、ワインとおかしの入ったバスケット)で、オオカミの絵のパネル(ウォルター・クレイン/画)と並んで記念撮影できるようにした。のべ138人の参加があった。職員が撮影した写真で了承が得られたものはこども資料室内に掲示した。8月5日の毎日新聞に紹介されたこともあり、これを目当てに来館される家族もいた。
資料展示「ごんぎつねとともに-新美南吉生誕100年記念-」と関連イベント報告
平成25年10月11日~12月23日に、中央図書館にて開催した。
平成25年が生誕100年となる新美南吉は、29歳で亡くなるまでに、多くの童謡、詩、童話、小説、戯曲などを創作した。特に、昭和31年に初めて教科書に掲載された「ごんぎつね」は、現在すべての国語教科書に掲載され、南吉の名は広く知られている。
本展示では、中央図書館展示コーナー全面を使用し、国際児童文学館所蔵資料の中から、南吉が多くの作品を投稿した雑誌「赤い鳥」の復刻版をはじめ、絵本・物語・教科書などさまざまな形態の「ごんぎつね」のほか、南吉の童話集『きつねのおつかい』の原画(茂田井武/画)や、南吉が安城高等女学校教員時代に自ら編集したクラス文集など77点を展示した。このうち原画は未刊行のものを含んでいるほか、文集も極少部数しか発行されていないものであり、いずれも貴重なものを間近に見られる機会となった。
展示開催にあたり、新美南吉生誕100年記念事業実行委員会の後援を受け、お借りしたパネル10枚も展示し、南吉の生涯、代表作品である「ごんぎつね」や故郷の愛知県半田市を紹介した。
また、企画展示エリアでも、中央図書館所蔵の南吉作品や関連書約200点を手に取れるように展示した。
さらに、関連イベントとして子ども向けクイズラリー「きみもちょうせん!南吉クイズ」を同時開催し、「南吉の本名は?」等5問全問正解すると、新美南吉童話イメージキャラクター「ごん吉くん」のしおりをプレゼントした。会期終了までに267人が国際児童文学館カウンターへ答合わせに訪れた。
展示に先立ち、9月14日(土)には大会議室にて人形劇「てぶくろを買いに-新美南吉生誕100年記念-」を開催した。昭和4年に設立された長い歴史を誇る「人形劇団プーク」による公演で、90人の参加を得た。募集開始直後、新聞に告知記事が掲載されたこともあり、早々に定員に達し、関心の高さがうかがわれた。プログラムは、第1部人形音楽バラエティ「くるみ割り人形」、第2部人形劇「てぶくろを買いに」であり、参加者は目の前で繰り広げられる人形劇の世界を大いに楽しんでいた。アンケート結果からも「素晴らしい人形劇で感動した」「大人でも楽しめた」など大好評であった。
平成25年1月~12月 大阪府立中央図書館国際児童文学館 活動記録
講座・講演会
5月10日 | 新刊紹介講座「紹介と解説 2012年に出版された子どもの本」(~12日) 共催:一般財団法人大阪国際児童文学振興財団 |
展示
1月5日 | 「原ゆたかの世界」(~3月13日) |
4月2日 | 「花ひらく<カワイイ>展‐大正ロマン・昭和モダンと少女文化‐」(~6月30日) |
7月12日 | 小展示「絵本の国の赤ずきん~グリム童話出版200周年記念」(~9月29日) |
10月11日 | 「ごんぎつねとともに‐新美南吉生誕100年記念‐」(~12月23日) |
イベント
7月13日 | 「赤ずきんちゃんに変身!」コーナー(9月28日までの毎週土曜日) |
8月14日 | 「赤ずきんちゃんのパロディを作ろう!」ワークショップ |
9月14日 | 人形劇「手ぶくろを買いに‐新美南吉生誕100年記念‐」(人形劇団プーク) 共催:一般財団法人大阪国際児童文学振興財団 協賛:株式会社図書館流通センター・TRC販売株式会社 |
12月3日 | 「ごんぎつねとともに‐新美南吉生誕100年記念‐」グループ向けギャラリートーク |