からくりの宇宙とその周縁ロゴ

− なにわ・からくり事始 −
 


《 展示会・講演会ともに終了しました 》


 大阪は竹田座によるからくり芝居発祥の地。「竹田からくりを見なければ、大坂に来た甲斐がない」とまで言われたからくりの地から、当館所蔵資料を案内役として、近世からくり文化をご紹介いたします。


日時: 平成17年10月11日(火)〜10月24日(月)   入場無料
       午前10時〜午後5時
       13日(木)、16日・23日(日)は休館

会場: 大阪府立中之島図書館3階 文芸ホール
       地下鉄御堂筋線・京阪電車「淀屋橋駅」北東300m

   ■ 主な展示資料
『機巧図彙』 『摂津名所図会』 『絵本菊重ね』 など


   〜 関連講演会 〜
   ◆「大阪とからくり ―自動人形からロボットへ」 村上和夫氏 (からくり・技術史研究家)
   ◆「からくり人形の魅力を語る」 峰崎十五氏 (江戸からくり復元師)

         日時: 平成17年10月29日(土)  午後1時〜午後4時30分
         会場: 大阪府立中之島図書館 3階 文芸ホール
         定員: 90名



■■■ 講演会報告 ■■■




  ◇ 村上和夫氏(からくり・技術史研究家)の講演会
      「大阪とからくりー自動人形からロボットへー」 ◇



 村上氏は、サラリーマン時代にオルゴールに興味を持ったことからスタートし、西洋のオートマタ(自動装置)と日本のからくりの比較文化的な違いを研究するようになった人である。
 大阪とからくりは縁が深い。日本のからくり興行の最初は、江戸時代に大阪の道頓堀で始まった、竹田近江による「竹田からくり芝居」であった。その人気は、近世の地誌『摂津名所図会』(秋里籬島著)に「竹田からくりを見ないと大阪に来た甲斐がない」と語られるほどであった。また、大阪が生んだ当時の人気作家、井原西鶴は、日本のロボットのルーツとされる茶運人形についての最古の記録「茶を運ぶ人形の車はたらきて」の句を残している。
 最近の日本におけるエンタテインメントロボットブームのルーツがまさに、江戸時代の大阪に見られるのである。
江戸時代のからくり文化は、古代から続く中国の影響に加えて、戦国時代以降に流入した、西洋の機械時計などの科学技術によって開花したと考えられるが、日本のからくり文化の特徴は、機械と人間の間の“垣根の低さ”であり、機械の足りない部分を人間がごく自然に補うことで、より魅力的な生活のパフォーマンスを実現しようとしたことである。そして江戸末期のからくり師として名をあげた田中久重が、現在の東芝の創業者として称えられるようになったことは、日本の近代化に江戸時代のからくり文化が果たした功績を示す、一つの証と言ってよいであろう。日本と西洋のからくり文化の比較を通して、日本人の技術に対する感性と発想を知ることができた講演であった。


   ◇ 峰崎十五氏(江戸からくり復元師)の様々なからくりを使った講演会
                             「からくり人形の魅力を語る」 ◇



 峰崎氏は大阪在住で、現在日本で数少ない「江戸からくり復元師」として活躍している。元の職業は大阪府警白バイ隊員という経歴の持ち主である。 
 当日はからくりを手動、砂、水、水銀、ぜんまい等動力源ごとに分け、解説を交えながら実演していただいた。
面かぶり「般若」=からくり御所人形(手動)、坊さんが鐘を打つ「元禄鐘打ち人形」(砂)、唐子がくるくる回転する「鞦韆」(砂)、鞦韆=しゅうせんと読み、ブランコのこと。「自動噴水器」(水)は、噴水を楽しんだり、盃を洗う盃洗器として用いられたらしい。一体の人形がとんぼ返りをしながら階段を降りて行く「段返り人形」(水銀)、水銀を入れた2本の棒で連結した2体の人形が相手を飛び越えながら階段を降りる「連理返り」(水銀)、「茶運人形」(ぜんまい)、「七妖品玉人形」(ぜんまい)、田中久重考案の矢を射て的に当てる「弓曳童子」(ぜんまい)などである。峰崎氏が復元したからくりは、オリジナルより約2倍の大きさで我々には見やすいが、製作者にとっては、からくりのバランスを調整する上で海図なき航海のような困難があったという。
 当日は「百人おびえ」のパフォーマンスもあった。「百人おびえ」は「エレキテル」(江戸時代は電池(ボルタ電池)を使い、現在は乾電池を使う。オリジナルは伝・大野弁吉作、峰崎氏復元)の終端のそれぞれの金具の把手を2人が持ち、その間に5、6名が手をつなぎあい電気が伝達するのを体感するもので、当時は100人ほどが手をつないだので「百人おびえ」といった。エレキテルは一般的に治療機器として使われたという。
 峰崎氏は江戸からくりに見られる当時の人の“物つくり”の知恵を再認識し、物を大切にする心を思い起こして欲しいという。今後の活躍を期待したい。



<関連記事> ○産経新聞(大阪朝刊) 2005年10月8日 27頁
   「江戸時代”最先端ロボット技術”紹介−『なにわ・からくり事始』展」
○朝日新聞(大阪市内朝刊) 2005年10月15日 25頁
   タウンTOWNたうん 「特別展示『からくりの宇宙とその周縁−なにわからくり事始』」
○大阪日日新聞 2005年10月19日 19頁
   「からくり文化に触れて−中之島図書館 江戸時代の設計図など展示」
○読売新聞(大阪夕刊) 2005年11月7日 7頁
   間奏曲 「からくり育んだ大阪人の遊び心−ロボットブームの原点!!」