最終更新日:2013年2月9日
資料1-4

平成23年度 大阪府立図書館総合評価(仮評価)
国際児童文学館について(案)


 国際児童文学館は、児童文学・児童文化関係資料約70万点を旧施設から引継ぎ、平成22年5月5日、府立中央図書館内にオープンした。 試行錯誤の2年間が経過し、府立図書館が蓄積してきた児童サービスと連携して図書館全体が協力し、運営はようやく落ち着きを見せてきた。
 国内有数の資料を有する「児童文化の総合資料センター」として、また、府域の「子どもの読書推進センター」としての役割を果たすべく 展開してきたこの間の取組みの成果を検証し、現時点での自己評価を以下にまとめた。


資料の収集・整理・保存
・新刊児童書は網羅的収集(H22年度:資料受入数  購入 7,114点  寄贈 4,814点)
  寄贈割合はH22年度38.8%と落ち込んだが、(財)大阪国際児童文学館と連携協力し、日本児童書出版協会等に積極的に働きかけ、H23年度はやや回復
・古書も積極的に継続して収集し、H23年度からは新収古書一覧をホームページ゙に掲載
・整理方法は旧施設の手法を継承し、H23年度に資料整理マニュアルを作成
・資料保存のため ポリプロピレン製カバーの装着作業を未装着資料に実施
  (H21-22年度 65,000冊  H23年度 光交付金で17万冊装着完了予定)
・蔵書点検 ( H22年度:8,816冊   H23年度:11,790冊 )


資料の利用
  旧レストラン跡を改装した<閲覧室>を設置  地下書庫を電動化して70万点の資料を収容
・閲覧室    面積311㎡(付帯設備含) 座席数21席
・閲覧室資料  最近1年間に出版された絵本・児童書、参考図書等 約12,000冊を配架
・対 象    中学生以上(小学生以下の幼児・児童は保護者の付添い必要)
・入館者数   H22年度 22,897人(ただし、H22.5.5~) 一日平均 84人
・書庫出納   H22年度 33,419冊(旧施設とほぼ同様の利用状況)
・資料の複写  H22年度 34,276枚(すべて有人複写)
・資料の貸出  個人貸出・協力貸出実施せず(美術館等へ展示用貸出は実施:増加傾向)
・調査相談   H22年度:1,295件(文書、電話、メール、口頭)


企画事業
・「新刊紹介講座」(前年1年間に出版された子どもの本の紹介と解説 同一内容で3日実施)
  参加者数(H22年度 272人/23年度 261人)外部講師、専門員、司書で実施
・記念講演会
  H22 年度:金原瑞人さん講演会「12歳からの読書」および金原さんと令丈ヒロ子さんの対談。 参加:300人
  H23年度:講演と弦楽四重奏で楽しむ「宮沢賢治 ファンタジーワールド」 参加:281人
                 (東日本大震災復興支援・国際児童文学館1周年記念行事) ・資料展示&ギャラリートーク(年3-4回) *( )はギャラリートークの参加人数
  H22年度:「なつかしの子どもの本-名著30選」(7人)/「子どもの本に描かれた妖怪・ばけもの・もののけ展」(15人) /「翻訳いま・むかし」(10人)/「遥かなる宇宙-子どもの本が描く夢と冒険」(11人)
  H23年度:「掌のなかの芸術 豆本いまむかし」(30人)/「輝く街頭紙芝居-街頭のドラマ」(7人) /「すきとほつたほんたうのたべもの-『宮沢賢治と子どもの本』展」


館内連携による子どもの読書活動推進の取組み

 国際児童文学館の移転を機に、児童サービスを担うこども資料室はじめ関連部署が連携して新たな事業を展開してきた。
・「子どもの読書活動推進のための支援員派遣事業」(H22:府内40団体(受講者数は延べ1,430人)
・朝の読書活動・調べ学習支援のための「特別貸出用図書セット」の貸出
・公立図書館と学校との合同研修
  H22年度:「学校図書館と公共図書館との連携について」/「楽しい図書館づくり」/「司書教諭の役割について-豊かな学びを支える図書館」
  H23年度:「なんでも学べる図書館づくり-子どもの好奇心が本棚をつくる」/「学校図書館の2つの機能:公共図書館との連携の広がり」 /「楽しい図書館づくり-小学生はもちろん、中学生・高校生にも絵本を」/「熊取町における学校図書館の整備・充実について」/「特別講座」


その他

・中央図書館ホームページに「国際児童文学館のページ」を開設(蔵書検索、利用案内等)
・国際児童文学館情報システム:旧施設の情報システムを引継ぎ、H23年度に図書館本体側の情報システムと統合。 H23-24年末年始にかけてリプレイス実施。24年1月から新システムで運用。
・国際子ども図書館児童書総合目録への所蔵データを継続提供
・閲覧室、エントランスに、利用案内・資料紹介のための情報ディスプレイ設置
・児童文学館進入路周辺の緑地・遊歩道の整備、図書館正面玄関路面の案内表示等サイン・環境整備


自己評価(まとめ)

 資料の整理法や閲覧面については旧施設とほぼ同様の方法を継承している。整理マニュアルの整備や 未装備資料への保護カバー装着など、整理・保存の面において、継続性と安定性が高まったといえる。
 情報システムのリプレイスにより、データベースは別に構築しつつも図書館本体側とのシステム統合が実現し、運用の安定化と整理作業の改善が 図られた。リプレイス時のデータ移行作業は、資料整理方法に関する分析・検証の機会ともなった。継続性を維持しつつ、より標準的で利用しやすい 整理方法の構築、さらに図書館全体としての情報システムの効率的な管理運営の観点から、引継ぎ資料の整理および今後のデータベース構築について 検討していきたい。
 移転を契機として、こども資料室はじめ関連部署が連携して子ども読書活動推進の事業に取り組む中、市町村図書館や学校への支援サービスでは相乗効果が生まれてきた。
 児童文化を象徴する資料群や新刊児童書の網羅的な収集は、子どもの本にかかわるすべての人々にとって大きな財産となる。これらの資料を活用し、府立図書館として、 「児童文化の資料センター」「子どもの読書支援センター」としての機能をより発展させていく必要がある。
 府立図書館、教育委員会地域教育振興課、(財)大阪国際児童文学館は、この間、円滑な運営と今後のあり方について協議を行い、22~24年度の3年間の引継ぎ期間後の 「国際児童文学館のあり方」を明確にするために議論を加速させてきた。
 国際児童文学館を今後とも維持・発展させていくためには、関係諸機関の大きな支援と理解が不可欠である。資料保存と提供を両立させ、専門的な活用を図りつつ、 一層のサービスの向上をめざして、確実な資料収集・保存に努めていきたい。