今となっては旧聞ですが、TVドラマ「半沢直樹」面白かったですね。
「倍返し、いや、10倍返しだ!」なんてセリフが流行りましたが、バレンタインデーに「10倍返しで、いや100倍返しでお願いね(ハート)」なんてことを言い出す女子がいるのではないかと、恐れおののいております(まあ、「0を倍にしても、100倍にしても答えは0です」けど…)。
で「半沢直樹」ですが、最終回のラスト数分、原作を読んでいなかったすべての視聴者が、テレビの前で叫んだでしょう。「なんじゃこりゃあ」って。時代劇的な勧善懲悪の「物語」を期待していた向きには、現実的すぎる結末には納得いかなかったようです。ネットでも賛否の否のほうが多かったようです。でもこれ、半沢直樹世代にとっては初めてじゃないんですよね。
半沢直樹はバブル期ラストの採用ということになっていますが、バブル末期に多くのヲタク(現役、退役をふくめ)たちをさせ熱狂させたのが「新世紀エヴァンゲリオン」でした。これもまた、視聴者の多くが最終回で「なんじゃこりゃあ」大声を上げ、完結編と銘打った映画版でまた「なんじゃこりゃあ(かんべんして)」と叫ぶことになったものでした。
両者に共通するのは、メガバンクのサラリーマン社会であれ、セカンドインパクト後の荒廃した世界であれ、「物語(ファンタジー)」の中にいたはずの主人公が、最後の最後に、冷徹な現実を突きつけられてしまうことです。それは、「嫌な上司に倍返しだ」とか「きれいなお姉さんや生意気な同級生や若くなったお母さんに囲まれ、自分にしかできないことをやって認められるんだ」などと主人公に感情移入していた視聴者に思いっきり「そんな夢みたいなことありえないもんね」と冷や水を浴びせたわけです。
半沢直樹の世代にとっては、エヴァンゲリオンのトラウマ(ファーストインパクト)が癒えたころ、中年になって半沢直樹でセカンドインパクトが来たわけですが、そのことはまた両作品が、トラウマになるほど入り込めるだけの素晴らしい作品であることの証左であったといえるでしょう。
「新世紀エヴァンゲリオン」はその後、「ヱヴァンゲリオン新劇場版」として再物語化されていますが、「半沢直樹」の続編は未定だそうです。続きを知りたい人は当館をご利用ください
「ロスジェネの逆襲」