H20年度 大阪府立中央図書館主催 府民講座・ステージ1

   上田正昭先生講演会

史料でよみとく、難波の宮と日本の文化

 日本の歴史と文化の実像を明らかにする研究を60年余にわたり続けておられる上田正昭先生(京都大学名誉教授、大阪府立中央図書館名誉館長)に、「難波宮」の歴史的意義と日本の文化の成り立ちについて、お話いただきます。本講座により、みなさまが日本・大阪の歴史と文化について関心を深められること、本講座が生涯にわたっての学習活動の一助になることを期待して、開催いたしました。


第1回 7月4日(金)   午後2時~午後3時30分  
テーマ
 「難波宮と東アジア」
  • 難波宮跡の発掘調査が進むにつれて、万葉仮名の和歌が書かれたと思われる木簡が出土するなどの新しい発掘成果が現れている。これらの新しい発掘成果から、難波宮の歴史的意義を読み解き、改めて東アジアとの関係を考察する。

第2回 
7月11日(金) 午後2時~午後3時30分
テーマ 
「歴史に学ぶ、日本の文化の真髄」

  • 「洋魂洋才」が広がりつつある昨今。今一度、「和魂あっての洋才であり漢才である」ということを見つめ直し、日本の文化に対して自信を深めていただきたい。日本の文化がいつから、どのように成立してきたのかを解き明かしつつ、グローバル化が進む世界の中で、アイデンティティを持つ必要性・重要性について考察する。
講師:各回とも 上田正昭 先生(京都大学名誉教授・大阪府立中央図書館名誉館長)
会場:当館ライティーホール

第1回講演風景1第1回講演風景2
第2回講演風景1第2回講演風景2

<受講者のみなさんの感想です>(抜粋)

■第1回
  • 小中学校の歴史や高校の日本史の時間には、難波宮のことはそれほど重視して教わりませんでした。私も、大阪(昔の国名では摂津)の生まれで、また大学では中国史を専攻したこともあり、日本の古代史を考えるときに奈良や京都ばかりでなく、地元の大阪のことも(朝鮮や中国との交流も含めて)もっと注目して学習していきたいと強く感じました。「なにはづ」の歌は、今日を境に大阪市歌としてよく覚えておきます!
  • なにわの文化とは「和魂漢才」ということがよく理解できました。
  • 明治維新後、大阪に都を・・・・・の説が有ったとは夢がふくらむ。律令体制の世に復すということで難波の宮を復活させるという経済基本の原則を考えたのではないか?自然災害の最も少なく交通の便が発達した(海・河川・街道)津であり、西国~大陸、文化交流の路として理解できる。又、古来多くの渡来人が住む地域であり、大和川沿いの南河内一帯にハイテク技術が充満の地帯であったと思う。我々の想像以上に発達した文化・技術の一大拠点で華やいでいたことであろう。河内湖中心の湿地帯であり、白波の逆巻く難波の津で縄文期には一部漁労民のみであったかも?博多の津から西へ権力者が移住してきたのも、難波津の利便性を考え、飛鳥の地へ宮都を建設したのだ。2000年の倭の基を築き、又、近代明治の経済を支え、21~22世紀の難波に期待!
  • レジメがしっかりしていて、分かり易かった。
  • なにわの宮の概要、大変良く解りました。この年(67歳)になって、新しい知識です。何だかもっと知りたくなってきます。この続編を是非お願いしたいものです。今日、大変「得」をした想いがします・・・・感謝!

■第2回
  • 自分を知る、日本を知る、ということで、国際交流に関心を持って参りました。
  • 先生のお話を聴講し、今更ながら日本の歴史を学ぶ重要性に思いが到りました。しかし、先生のお話のように、歴史を読み解くに、十分な力(能力)がなく、まだまだ、先生のようなお方のご指導を賜りたいと思いました。
  • 前回(7/4)講座終了後、上田先生の最新刊『日本人のこころ』を購入して、サインをして貰って、帰りの電車の中で読み始めました。今回のお話の始めにある「歴史に学ぶ」視点がよく分る御著書でした。今後もお元気で可能な限りこの講座を続けていただきたいと思いますので宜しくお願い申し上げます。
  • 歴史は世界・日本を問わず又時代に固執せずまんべんなく好きだが、強いていえば、日本の古代から近世間が一番興味深く、夢とロマンに満ちている感じがする。(もっともその時代に生きてる〈生かされている〉人々にとっては必死に闘っているとは思うが)何か自分のルーツとか先祖にたどりつけるような錯覚におちいる。人生は今この時だけではなく古代から連綿と続いていることをあらためて実感する次第です。
  • 深い学識と高潔な人格に裏打ちされたご講演をはじめて拝聴し、日本人の誇りを取り戻しました。私は今、慶応大学の通信教育で学んでいてリポートの課題を次々書いていますが、「日本美術史」で「平安時代の美術の和風化(日本化)について問われています。色々な彫刻や絵画について考えていて、正に、先生のお話がとても参考になりました。先生にはお元気で更に長生きして、また、ご高説を伺いたく存じます。話は変わりますが、10日程前、出身高校のある国語の「先生を囲む会」があり、京大卒後、阪大名誉教授である都出比呂志さんと同席しました。数年前の大病を克服され、お言葉も大分はっきりしておられますが惜しいことだと思います。古代史で頭はしっかりされているので、学術的に激論を闘わせて欲しいものです。話しがわかりやすく、ユーモアに富んだ話し方についつい引き込まれてしまいました。
  • 日本文化を大切にし、理解することは確かに重要であろう。が、グローバル化が進み、地球環境悪化の進む現代、あまり固執する必要はないと思う。島国で育ち国際推移から遊離した我が国は、太平洋戦争~経済大国発展まで独自の平和に進んで来ている。今後は地球を視点に物事を考え、論ずる若人を育成しなければますます国際的に孤立していくだろう。世界文学・世界政治を学び、22世紀には国の枠をはずしてかかる必要があるかも知れぬ。EUの動きを見れば、明らかであり、もっと国際化に我々は目を向けなければならぬ。学者に批判は有っても、政治実践は難しい、が本居宣長の『玉勝間』-自説にこうでいする必要なし、は立派であり大賛成です。