平成20年度OLA児童奉仕実務研修報告
         大阪市立阿倍野図書館 上嶋優子

1.はじめに

今回の研修は「学校図書館と公共図書館との連携を考える」をテーマに3回連続講座の形式で行われた。机の前で講師の話を聞くだけではなく、事前に出された課題について報告し、それに基づいて話し合うという参加型の研修であった。参加者は8自治体9名であり、少人数ではあったが、熱のこもった意見交換が行われるなど、非常に内容の濃いものであった。

2.事前の課題提出

第1回目の研修を受講する前に、参加者全員に主催者側から課題を出された。自分の自治体の学校図書館を1つ選んで見学し、公共図書館と学校図書館との実際の連携状況について、報告書を出すよう求められたのである。今まで区内の小学校へは、おはなし会で教室に出向いた経験はあったが、図書室にまでお邪魔したことはなく、課題を見た時は、正直、「大変な研修に参加することになった」と慌ててしまった。参加者のほとんどが、小学校の図書室に出向いたのは初めてであり、学校図書館の実情や連携状況を改めて認識する機会になった。

3.第1回研修 平成20年9月25日

学校図書館と公共図書館との進んだ連携の事例として、箕面市立西南小学校の木享子先生と箕面市立西南図書館の鳥越香氏のお話をうかがった。箕面市では、すべての小中学校に司書が配置されている。学校図書館にもコンピュータが配備され、市立図書館側からでも学校図書館の蔵書を検索ができるようになっている。また、市立図書館から小学校へは、週1回、逓送便で配本が行われている。府下の市町村の中でも、抜きん出た連携の強さに、参加者からは感嘆の声がもれた。学校図書館側にも、ただ支援されるに甘んじず、全国的な図書館・情報ネットワークを構成する重要な一員であるという、強い自負を感じた。

4.第2回研修 平成20年10月30日

この日は、学校図書館見学のまとめと、公共図書館と学校図書館との連携状況の報告書をもとに、グループ発表が行われた。参加自治体の規模も様々なら、学校図書館と公共図書館の連携の強さも様々だった。逓送便の有無、学校ボランティアや支援員の違い、学校図書館へのコンピュータ配備の状況など、他市町村の事例を知ることができ、有意義であった。

5.第3回研修 平成20年11月27日

この回の研修の前にも課題の提出を求められた。学校図書館が求めるニーズを想定して、公共図書館側が1、2年内にできること、5年間で実現できることを考えて、実施計画書を作成した。具体的な方策や必要な人員・予算、考えられる成果・障害なども考えて表にする形式で、当日までに参加者全員分の計画書が各人に配布された。その計画書をもとに、順番に発表を行い、ディスカッションを行った。それぞれの計画書について、脇の甘いところには厳しい指摘が入ったり、「このようにしてはどうか」とのアドバイスが入るなど、盛んな意見交換が行われた。

6.おわりに

今回の研修は、特に「考えること」「話し合うこと」「交流すること」が重視された研修だった。特に心に残ったのは、学校ボランティア導入の是非について、参加者から次々と意見が出されたことだった。本来は司書配置が望ましいという理想はあるものの、ボランティアを入れて学校図書館を運営していかねばならないという実情に理解を示す意見がある一方、ボランティアをあてにする施策の危険性を指摘する意見などもあり、公共図書館として、常にボランティア活動に対して、はっきりとしたスタンスを持つことが大切であることに気づかされた。

図書館にかかわる市町村全体としての施策や、教育委員会の方針にも通じ、その情報を他の司書と共有していくことの重要性を痛感した。自分の自治体の状況を見つめ直し、他市町村の図書館の状況も知る事ができたという点で、参加者全員の研修に対する満足度が高かったのが印象的だった。