箕面市における学校図書館と公共図書館との連携
         箕面市立西南図書館 鳥越 香

1.はじめに

箕面市は大阪府の北部に位置する人口約12万7千人の緑豊かな住宅都市です。

箕面市立図書館は、昭和41年に開館しました。その後、昭和61年にはじめて電算システムを導入した東図書館が開館し、これを皮切りに平成6年までの約10年の間に西南図書館をのぞく4館と移動図書館、図書コーナーが次々と建て替え、整備されてきました。少し遅れて平成13年1月に西南図書館が開館し、現在は5つの図書館と図書コーナー、移動図書館等で図書館サービスを実施しています。

2.学校図書館への支援・連携

学校図書館への支援の中心は資料の団体貸出です。箕面市では平成14年度に地域イントラネット基盤施設整備事業(第2次)により電算システムの入替を行い、図書館の蔵書をインターネットで検索、予約等ができるようになりました。学校図書館からの予約も基本的にインターネットで受付しています。所蔵のないものはFAXで受付し、購入、あるいは連携している他市から借り受けして提供しています。所蔵がないものの問い合わせやレファレンス等については地域の図書館が窓口として担当しています。

貸出方法は、長期貸出と短期貸出の2つがあります。長期貸出では、中央図書館・東図書館・らいとぴあ21図書コーナーの書庫資料が対象となります。貸出冊数は400冊で、年度末まで貸出をします。

短期貸出は、各図書館閲覧室の資料で、児童書が基本ですが禁帯出以外全ての資料が対象ですので、雑誌や一般書も貸出しています。貸出冊数は児童数×1冊(100冊未満は切り上げ)で、貸出期間は5週間(ただし、漫画本と予約のある本については2週間)です。  

平成19年度の貸出冊数は小学校図書館へは長期1458冊、短期9992冊で、中学校図書館へは長期327冊、短期5146冊でした。学校図書館への貸出を始めた当初と比べますと、長期貸出は減っていますが短期貸出は増えているといった状態です。

予約、レファレンスから貸出へ、スムーズな資料の提供を支えているのは、定期的に配本車が運行されている点だと思います。平成8年度より小学校へ週1回、平成14年度より中学校へも隔週で公共図書館の職員が担当校へ配本を行ってきました。平成18年度からは配本業務が委託され、現在は小学校、中学校ともに週1回の配本となりました。

その他の支援としては、廃棄する資料の中で学校図書館で使用してはどうかと判断した資料を、希望する学校図書館にお渡しし、再活用してもらっています。

以上が学校図書館への支援ですが、連携して行っていることとして、共通テーマでの研修や冊子「よんだ?よむぞう!」「YOMOYOMO」の作成があります。

「よんだ?よむぞう!」は夏休みに小学校3,4年生向けに発行している読書案内です。この冊子を作成する前は、各々で小学生向けの読書案内を発行していました。ともに読書の啓発を行った方がよいのではないかということから公共図書館から声をかけ、平成10年度より共同で作成することになりました。公共図書館側としては、作成する課程で、子どもの読書環境について、より子どもの目線に近い学校図書館司書からいろいろ話を聞くことができれば、という思いもありました。3,4年生を対象としている点については、この時期が読書をする子としない子にわかれる時期だということで、普段は読書をしない子にも読みやすい本を選書して紹介することにしました。特に小学校3年生は1学期に図書館訪問で全児童が図書館に来館しているので、さらに夏休みに本の案内をして図書館をPRしたいという思いもありました。

「YOMOYOMO」は、中学生向けの読書案内です。中学生向けの読書案内がありませんでしたので、共同作成について学校図書館司書からの提案があり、平成11年度より年に一度発行することとなりました。

3.司書連携学習会

このような支援、連携はお互いの職場を見学したり、要望について話し合うなどする中で少しずつ進めてきました。相互理解を深め、実績を積み上げる動因となったのが、司書連携学習会です。平成5年11月に司書の会としてスタートし、その後司書連携学習会と名前を変え、現在では隔月ごとに中央図書館で開催しています。

取り上げるテーマは、意見を出し合いながらその都度決めてきました。当初の議題は日常業務に関わる検討事項等が多くありましたが、業務体勢が整備されるに従って「ヤングアダルトおすすめ本の紹介」、「環境問題のツール作り」、「学校で人気のある本の紹介」、「学校内での資料の使われ方」など資料について研究する内容も加わってきました。

こうした話し合いの中から、資料の整理の仕方、提供の仕方、選書の視点等の違いに改めて気づいたり、学校の情報を得たりなどして、日常の業務や選書に生かしています。

4.課題

学校図書館への司書の配置、貸出、予約、レファレンス、物流…学校図書館への支援や連携は、資料の貸出に重点をおいて協議しながら体制を整えてきて、現在ではある程度の形ができてきたのではないかと思います。その一方でここ2年ほど、一緒にやれる研修や両方がプラスになるものにはどのようなものがあるかといったことを模索しています。

体制が整い一段落ついた今、これからどのような連携が考えられるでしょうか。以下に日常業務や今回の研修を通して考えたことなどをもとに、考えられる可能性をいくつかあげてみました。

一つめは、現在作成している読書案内の再検証や、お互いに司書能力を高める研修を引き続き行う、といったことが考えられます。この点は「『箕面市子ども読書活動推進計画』実施計画」の中でも触れられています。

二つめは、双方での展示の工夫です。例えば「よんだ?よむぞう!」ですが、夏休み前に学校で宣伝し、夏休み中に公共図書館で展示することで、学校図書館から公共図書館への流れを作れるのではないかと思います。現在も展示を行っていますが、各自の努力によるものが大きくなっています。できればキャンペーンのような形で全館をあげての取り組みにするとよいのではないかと思います。

三つめは子ども向け地域資料の収集・作成です。地域のことを子どもが調べに来た時、子どもでもわかりやすいような資料−例えば絵や写真が多く載っていたり漢字にルビがふられているもの−は残念ながらとても少ないです。学校図書館には、地域に関する調べ学習を行った際に教師と生徒が作成した資料や、生徒の家庭から提供された資料が残されていたりします。学校図書館と情報を共有することで、子ども向けの地域資料を収集するきっかけになるのではないか、もしくはさらに進めてともに作成するということも考えてもいいのではないか、と思います。

四つめは図書館活動のPRや様々な働きかけをともに行うということです。全市立小中学校に学校図書館司書が配置されていることは、全国的にみても先進的な取り組みです。学校図書館と公共図書館は、協力しあいながらそれぞれの立場から図書館活動を行っています。しかし今までお互いの活動について、ともにPRするということは行ってこなかったように思います。

残念ながら近年の財政難により、双方とも毎年資料費が減少しています。図書館を利用していない市民のかたにも図書館に興味を持ってもらうこと、図書館活動の意義を理解してもらえるよう、こうした働きかけはより一層大切なこととなるでしょう。

                                                                        

今、公共図書館も学校図書館も変革の時にあります。子どもたちが自ら考え、調べ、解決していく力を養えるよう、学ぶ場をより豊かなものとするにはどうしたらよいのか、また、図書館利用者としてともに子どもを育てるにはどうしたらいいのか、そういったことを念頭におきながら、自らの進むべき方針を考える時期にきていると思います。これまでの歩みをふりかえり、これからできることを考え直すことで、ぜひ新たな「連携」の段階へ進んでいきたいと思います。


【箕面市概要】

【箕面の学校図書館施策】

           
1989.7(平成元年)「学校図書館運営検討委員会」設置(教育委員会)
1990.9(平成2年)『箕面市学校図書館の充実にむけて』刊行 (学校図書館運営検討委員会)
1992.4(平成4年) 学校図書館司書 1名配置
1993.3(平成5年)『学校図書館活性化マニュアル』刊行
1993.11(平成5年)箕面市立図書館司書と学校司書との交流会始まる
1996.11(平成8年)『箕面市立図書館による学校図書館へのサービスについて(建議)』 箕面市立図書館協議会
2002.7(平成14年)地域イントラネット基盤整備(〜2003.3)
 学校図書館 コンピュータによる貸出業務開始
 市立図書館 インターネット検索・予約開始

【学校司書任用条件】

【研修の保障】

  1. 司書連絡会(月1回)
  2. 市教育研究会 図書館部会(月1回)
  3. 教育センター 図書館教育研修(年1回)
  4. 公共図書館司書との連携学習会(隔月)

【西南小学校内での学校司書の位置づけ】

  1. 校務分掌
    • 研究推進部−総合学習
    • 情報教育部−図書館教育
  2. 委員会−図書委員会
  3. 出席する会議・研究会
    • 職員会議
    • 校務分掌会議
    • 校内研究会
    • 子どもに関わる諸々の会議・研修