箕面市における学校図書館と公共図書館との連携
―学校図書館からの報告―
  箕面市立西南小学校 木享子

1.「学校図書館のはたらき」とは何かの模索と公共図書館に期待したこと

学校図書館法では学校図書館を次のように定義しています。

「(前略)図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによって、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生 徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。」(波線は筆者加筆)

箕面市は平成元年に学校図書館施策を開始し、平成2年には「運営」「蔵書」「設備・備品」に関する提言書『箕面市学校図書館の充実に向けて』を出しました。これにより徐々に各校の学校図書館の整備はすすみました。また、私は司書配置2年目に公共図書館から学校に異動になりましたので、それまでの児童サービス経験がベースにあり、そのイメージをもとに整備を始めました。

しかし学校図書館法を知り、同時にいろいろな研修で学ぶ中で、読書支援に加えて「教育課程の展開に寄与する」学校図書館のはたらきについて考えるようになりました。それとともに公共図書館との連携のあり方の考えも変っていったように思います。  

赴任一年目は古く傷んだ本を廃棄して、分類別に配架し、予約・リクエスト制度を取り入れました。図書館が変わったことで、子どもたちは喜々としてやってきました。しかし、一番の悩みは資料が少ないことでした。箕面市は、国の施策「蔵書充実5ヵ年計画」を若干先駆けて、平成5年4月(〜平成11年度)から図書費を増額しました。私が仕事を始めた年から増額になったわけですが、どの分野も不十分でしたので、ある程度基本的な資料を整えるのにも数年を要しました。特に調べ学習に関連する資料は、タイトル数も少ない自分の学校の図書館だけでは十分な提供をすることはできませんでした。  

それで当時、公共図書館に支援をしてほしいと切実に思い、学校図書館を会場にして交流会をもちました。公共図書館司書の方々はあまりの本の古さ、痛みのひどさに驚き、書庫の本を多量に長期で貸し出すという前向きな対応をしてくれました。

そのとき、ある公共図書館司書の方が、「学校図書館もそのうち自立しなければね」と励ましてくれました。これは私にとって、「学校図書館が図書館として機能していくとはどういうことなのか」を考えるよい機会となりました。

公共図書館も単独館だけでは利用者の資料要求に十分に応えることはできません。市内の他館や、他市の図書館や類縁機関とのネットワークシステムによって機能しているわけです。それならば、公共図書館より規模の小さな学校図書館が、単独で図書館としての機能が果たせるわけもなく、当然他の学校図書館や地域の公共図書館等とのネットワークシステムによって機能を発揮すべきなのだ。それが本当の意味の自立につながるのではないかと思い至りました。  

それからもう一つ、生涯学習の視点からも公共図書館とのつながりは、大切なことだと思いました。このことに関しては、箕面市図書館協議会は『箕面市立図書館による学校図書館へのサービスについて(建議)』(平成8年)で「生涯において初めて出会う図書館が学校図書館であり、その学校図書館が未整備な現状を考えると、市立図書館の学校図書館に対する支援は児童サービスの一環としてだけではなく、学校教育への協力の意味からも欠かせないサービスである。」と明言しました。これらの動きもあり、私たち学校司書は市立図書館司書と連携学習会をとおして、共に情報交流や研修をおこないながら理解を深めていきました。

2.学校図書館ネットワークシステム

平成14年に地域イントラネット整備事業により、学校図書館にコンピュータが設置され、学校間の蔵書検索、自館の蔵書管理、貸出返却、予約処理等が可能になりました。また、物流も「幼・小・中学校支援チーム」(市職員)により毎日あります。

学校間配本システムの充実で、調べ学習で集めた本のタイトル数はあまり変わらなくても複本で集まるようになり、学習がしやすくなりました。しかし、それで市立図書館からの資料提供の必要がなくなった訳ではありません。

例えば、「米」についての学習でも、「米つくり」「害虫駆除」「米の種類」「米の歴史」など、いろいろな視点から調べます。先生から調べる内容についての情報をもらうと、関連本のチェックをします。すると絶版で購入できない資料や、害虫などの本のように1冊しか所蔵していないのであと2、3冊は集めたい関連本などがでてきます。これらの資料は公共図書館に依頼します。

また、教師が授業を計画する上で必要な資料は市の教育センターや公共図書館から借りることが多いです。探している本が府立図書館で所蔵している場合もありますが、学校図書館には貸出をしていないので情報提供のみに終わっています。箕面の公共図書館を介して府立図書館の本も学校図書館が借りることができるようなシステムができることを切実に願います。

このように課題はありますが、学校間と公共図書館との両方のネットワークシステムがあって、多種多様な資料を使っての学習が可能になります。

ところで、司書の学校での位置づけですが、市教委の意向もあり、校内では司書も教職員の一員として学校組織(校務分掌)の「図書館教育」担当に位置づけられています。これは図書館が教育活動全般を支援するためには重要なことです。この位置づけがあるから、教職員の図書館研修や授業研究、図書館利用教育のカリキュラムの検討など、学校全体で図書館利用の認識を高めるための働きかけを担当教諭と共にできるのです。

しかし、これもネットワークに支えられた「機能する」学校図書館が現場にあるからこそです。

3. 市立図書館とのかかわり これからの課題

読書教育の研究をしていた1年の先生からおすすめ本のリスト作成を依頼されたときに、保護者に向けて「市立図書館を利用してください」と一文入れました。それを校区内にある市立西南図書館にも提供しました。西南図書館はそれらの本をさりげなく展示し、本が少なくなると補充してくれました。私は蔵書が豊富にある公共図書館だからこそのサービスに嬉しくなりましたが、西南図書館側も親子で展示コーナーの本を借りていく様子に学校の取り組みを実感されたとのことでした。このことがあって、なるべく学校や学校図書館の取り組みをお知らせするようにしています。

私は長いこと、資料提供のサービスを受けているだけなら一方的に支援を受けるだけではないか、と悩んできました。学校(図書館)と関わったことで公共図書館側も公共図書館としてのサービスが深まるものになるようなかかわりを学校司書としては目指したいと思っています。

4.おわりに

図書館は生涯学習に欠かせない施設です。そのためにも、教職員が図書館のよき利用者になり、授業に図書館を積極的に活用することを期待します。学校図書館の充実度は各地さまざまですが、依頼された資料をただ提供するだけで終わるならば、図書館の持つ本来の「学び」のすばらしさは伝わらないのではないでしょうか。教師とのつながりがキーワードだと思います。