<事例発表1>宝塚市立西図書館の「福袋」と「ぬいぐるみのお泊り会」について
宝塚市立西図書館 亀井京子

●「福袋」について

図書館で「福袋」を作る事になったきっかけは、2010年12月20日頃に、テレビの「デパートの福袋が年末に前倒しで販売されます。」という報道を見たことでした。当館は通年本の展示コーナーを設けているので常に展示のテーマを探しているところに、「福袋」が目に飛び込んできて、そのままですが図書館で作ってみたら楽しいのでは?と思い提案してみました。するとすぐに「おもしろそうだからやってみたら」という話になりました。

本をあまり長い期間棚から抜いているのはよろしくない、ということで、年末3日間で選書しました。名前が「福袋」ですから、どんなに良い内容のものでも、悲しいおはなしは入れないように留意しました。

【福袋】画像

第1回目の実施は、2010年1月5日(火)~8日(金)で、「司書が選んだ福袋!先着100名様」という題で総数140個、初日の貸し出し数は70個でした。第2回目は、2011年1月6日(木)~9日(日)で総数211個で初日の貸し出し数は90個でした。

私を含む児童書担当の2人で選書しました。対象年齢は、0、1~2、3~4、5~6歳と小学校は各学年毎としました。中身は1~5冊で、3冊のものが最多です。袋代のコストを抑えるため、保存年限の過ぎた英字新聞で包みました。「英字新聞が格好よい」というご意見も多くいただきましたが、これは現在中央図書館に勤める職員のアイデアです。

表には、{中身の一言ヒント}{中身の冊数}{対象年齢}を貼り、裏には中身の本のバーコードを印刷した紙を貼り、貸し出し時に回収しました。一言ヒントの例としては、「ありえない・・・」「ぜんぶわかるかな?」「空がすきな人へ」などでした。

「福袋」を展示、貸し出しする時には以下のことについて利用者に表示する必要があります。

①「福袋」も貸し出しします、ということ。(「福袋」が本の詰め合わせのプレゼントだと思う方がおられました)

②返すときは他の図書館の本と同じように、本だけカウンターにもって来て下さい、ということ。(返却の時にも新聞で包んで返却された方がおられました)

利用者の反応は、好意的なものばかりでした。展示台に最初に近づいてきてくれたのは、大人の方々でした。大人だけで来館されていた方は残念そうに「子どもむきか」といって立ち去られまし た。お子さんとご一緒の方は、お子さんに選ぶように促しておられました。全て包まれているので はじめ「?」という感じで見ておられますが、本が包まれていると分かると皆笑顔になって選びはじめてくれました。

ひとりで4個かかえて借りてくれたり、小学校内の口コミで借りにきてくれたり、来館前に自宅で予約してきた本が選んだ「福袋」の中に入っているお子さんもいました。展示終了後に、展示台のところでお母さんに「あの新聞のは?」と聞いてお母さんが「あれはまた来年」と応えている会話もありました。お子さんだけでなく、お孫さんに借りていかれる方もおられました。2,3ヶ月経っても利用者の方から「あの企画は良かった」というお褒めの言葉もたくさんいただきました。

実際に「福袋」を作った担当者の感想は、一言ヒントが本当に一言なので、読み物は特にですが、同じような内容の本が集まって、それが借りてくれた人にとって良かったのかどうか?自分では選ばないような本と出合えたのかどうか?とか利用者に感想を聞いてみたいのはやまやまですが、それはしません。また包みを開ける時の表情も見てみたいですが、それもかないません。

でも、福袋の包みを抱えてうれしそうに帰っていく利用者の顔を見ると「また来年も作ろう!」とやる気が出ます。新聞で包んでいるだけなので、貸し出し後早速開けてみて本を選ぶ人もいるかと思いましたが、私の知る限りそういうことはなかったです。

行事実施後、毎日新聞(2010年1月7日)、産経新聞(同年1月8日)、朝日新聞(同年1月8日、2011年1月7日)NHKラジオ「関西ラジオワイド」(2011年1月)、国立国会図書館カレントアウェアネスE1007、No.164 2010.01.20と、様々に取り上げてくださいましたが、このきっかけを作ってくださったのは、徳田前西図書館館長です。「福袋」の展示の様子を携帯電話で写真に撮って、本庁で宣伝してくださったところ、記者クラブの方が興味を持って記事にしてくださったのがはじまりでした。

図書館内だけでは単に「おもしろ企画」で終ったであろう一展示が想像もしていなかった程話題になり、そのことが利用者にも笑顔をもたらしたので、メディアの影響力の大きさを実感した結果となりました。新聞に載った後でわかったので申し訳ないことですが、図書館の「福袋」は、浦安市立図書館が先行して実施されていました。

●「ぬいぐるみのお泊り会」について

【ぬいぐるみ1】画像

まず、きっかけは、2010年9月2日の国立国会図書館のカレントアウェアネスの記事です。アメリカの各図書館で実施して好評だという内容でした。写真も添付してありとても楽しそうに見えました。

現在の西図書館、坊館長から「2010年は国民読書年だから何か行事を行なわないか」といわれて、最初はもう少しこの企画をあたためてから実施しようと思っていたのですが、第1回目は2010年12月11日~12日にかけて行い、参加者数は62名でした。第2回目は子ども読書の日の2011年4月23日~24日で、参加者数は39名、第3回目は、同年12月10日~11日で、参加者数は45名でした。対象を単に「子ども」としたところ、参加者の年齢は1~11歳まででした。

第1回目の実施の時には、10月に行事実施を決めて、12月に実施だったので、本当に準備期間は短かったのですが、「ぬいぐるみのお泊り会」という名前に力があったので、ぬいぐるみにもダミーの図書館カードを作ろう、というアイデアをいただき、裏は「図書館にお泊りした証明書」にしました。ぬいぐるみが夜に読んで気に入った絵本を利用者に紹介して貸し出しするようにしては?というアイデアを、広報課の方からいただき、楽しそうなので実行しました。

広報課の方からは、「これはおもしろそうだから市長の定例記者会見で出してみたら?」とも提案され、そうしたところ、行事実施前に神戸新聞(2010年12月4日)、産経新聞(同年12月8日)、読売新聞(同年12月10日)の3紙に載り、これは西図書館の職員だけでは対応しかねるかもしれない、ということで、急きょ中央図書館に行事実施日に手を貸して欲しいと依頼し、たくさんの職員に助けられて無事終了しました。

他には、山陰中央新報(2011年1月11日)、山陰放送ラジオ(同年5月)、国立国会図書館カレントアウェアネスE1127、No.185 2011.12.16に掲載されましたが、特に国立国会図書館は、職員の方がはるばる当日に取材に来てくださって、こちらは何のおかまいもできなかったのですが、見事な記事にまとめてくださいました。

行事の手順は、まずお子さんとぬいぐるみと番号札の写真を撮り、申し込み用紙に貼ります。それからダミーのカードをぬいぐるみにつけて、お子さんには、ぬいぐるみと一緒に「おはなし会」を聴いてもらいます。その後ぬいぐるみを「おはなしのへや」に寝かしつけて、帰宅してもらいます。

【ぬいぐるみ2】画像

その後職員がぬいぐるみの冒険をお手伝いしながら写真を撮ります。翌朝、写真を写真屋さんからもらって仕分けます。お迎えの時には、ぬいぐるみ、ぬいぐるみの冒険の様子の写真3~5枚、ぬいぐるみが前夜読んで気に入った絵本1冊、おはなし会のプログラム、ぬいぐるみのダミーの利用券、「またとしょかんにあそびにきてね」という手書きのお手紙、図書館カレンダーを渡しました。3回実施しましたが、無事全員お迎えに来てもらえました。

利用者の方の反応についてお話しますと、まずおはなし会の後、ぬいぐるみを寝かしつける時の様子がとてもかわいらしかったです。さらっと帰っていくお子さんもいるのですが、「(ぬいぐるみが)絶対泣く!」と言いながら帰っていったり、寝ているぬいぐるみに添い寝して、頭をなでながら何かを心の中で語りかけてなかなか離れがたそうにしているお子さんもいました。

お迎えの時にも、皆ぬいぐるみを見たら笑顔になって、写真を見ると、どこで撮影されたのかを館内で楽しそうに探し回っていました。保護者の方からと思われる、「ぬいぐるみのお泊り会は本当に楽しかった。またの実施を楽しみにしています」という主旨の感想をしおりの裏に書いたものをいただきもしました。

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このように、楽しく新しい試みを利用者は柔軟に受け入れてくれて、一緒に楽しんでくれます。このような行事は利用者を図書館に惹きつけるきっかけとなり得ます。図書館には様々な機能がありますが、まずは来館していただかないと利用者にはそれも理解してはもらえません。

また、当館では一職員である私の一言に全職員がアイデアを出してくれたり、協力してくれたりしました。これは今もそうです。西図書館は児童サービスに重点を置く図書館として1994年に開館しましたが、それだけでここまでの協力が得られるとも思えません。全職員に利用者に図書館をもっと利用してもらいたい、楽しんでもらいたい、という想いがあるのだと思います。でも結果、私1人で考えるよりも素晴らしい行事になったと思いますので、これからもこんな感じで新しい行事などをどんどん行なっていきたいと思います。