平成23年11月19日(土)、「講演と弦楽四重奏で楽しむ 宮沢賢治ファンタジー・ワールド」を国際児童文学館開館1周年記念として大阪府立中央図書館ライティホールで開催した。
第1部は、マンガ家のますむらひろしさんによる講演「銀河鉄道の夜の不思議さ」、第2部は、日本センチュリー交響楽団のメンバーによる演奏「弦楽四重奏で楽しむ賢治ファンタジー」、第3部は当館職員がますむらひろしさんと対談する「ますむらひろしさんに聞く」。
イベントの募集開始直後から申し込みが多数あり早々に定員に到達。締切後も問い合わせが相次ぐなど、参加者の関心の高さがうかがえた。そして迎えた当日、あいにくの大雨にもかかわらず、多くの参加者を得て大盛況となった。
ますむらひろしさんは、山形県米沢市出身のマンガ家で、「銀河鉄道の夜」を初めとする多数の宮沢賢治の作品をマンガ化している。また、代表作『アタゴオル物語』は、宮沢賢治が仙台をエスペラント風にもじって「センダアド」と呼んだことにちなんで名づけられた空想世界で、登場人物のネコが活躍する話である。
今回の講演では、まず、ますむらさんがどのようにして「銀河鉄道の夜」をマンガ化するに至ったかという経緯について話された。ますむらさんは40年ほど前に初めて「銀河鉄道の夜」を読み、よく分からないと感じ、二度目に読んだ時も依然として宮沢賢治が何を書きたかったのか分からないと感じたが、その後、宮沢賢治研究者として著名な入沢康夫さん、天沢退二郎さんの対談に出会い、感銘を受ける。
「銀河鉄道の夜」に魅了され始めたますむらさんは、「列車に乗った窓から見える夜空の風景が恐ろしいけれど美しい、なぜ賢治はこんな風景を書けたのか」と思うようになり「いつかこの不思議な話を映像化してみたい」と変化していった心境を話された。
続いて、作中に出てくる「天気輪の丘」や「三角標」の謎について、写真や図を用い、ご自身の解釈を謎解きのように披露。主人公たちが座っている座席が、ベンチシートかロングシートかという問題についても長年考え続けておられるが、結論はまだ出ていないと語られた。文章で書かれた物話を映像化する視点が、マンガ家のますむらさんならではと感じられた。
一つ一つ言葉を選んで丁寧に話される姿勢に、ますむらさんの温かな人柄が感じられる講演会であった。
日本センチュリー交響楽団の4人による弦楽四重奏。賢治作曲の「星めぐりの歌」などが演奏され、参加者は賢治の世界を音楽で楽しんだ。
当館職員がますむらさんに質問するという形式で対談が行われた。『週刊少年ジャンプ』に掲載された貴重なデビュー作や、大きな影響を受けたマンガ誌『ガロ』に掲載されていた鈴木翁二さんのマンガについて、国際児童文学館の所蔵資料を見ながらますむらさんが解説。また、水木しげるさんのアシスタントに応募し合格したが、住み込みが条件と言われたのでやめたエピソードを語ってくださり、会場は大いに沸いた。
「作品の登場人物になぜネコが多いのか」という質問には、「ネコは自然の声の代理だと思っている」と答えるなど、ますむらさんの経歴や人となり、世界観がよく分かる対談であった。
最後に、国際児童文学館について「子どもの頃愛読していた『鉄人28号』や『伊賀の影丸』など貴重な資料が多数ある。大阪にいたら、ぜひ利用したい」というコメントを頂いた。
[付記]
このイベントでは、東日本大震災復興支援として募金を行い、被災した子どもたちに本を送る「いっしょだよ 募金」(主催-財団法人大阪国際児童文学館ほか)に寄付させていただきました。
<講座・講演会> | |
4月22日 | 紹介と解説 2010年に出版された子どもの本(~24日) |
6月19日 | ギャラリートーク&ワークショップ「豆本をみる!つくる!」 |
8月6日 | ギャラリートーク「輝く街頭紙芝居-街角のドラマ-」 |
11月19日 | 講演と弦楽四重奏で楽しむ 宮沢賢治ファンタジー・ワールド |
<資料展示> | |
4月5日 | 「掌のなかの芸術 豆本 いま むかし」(~7月3日) |
7月12日 | 「輝く街頭紙芝居-街角のドラマ-」(~10月2日) |
7月26日 | エントランスギャラリーにおいて、街頭紙芝居の複製を展示 (~8月7日) |
10月14日 | 「すきとほつた ほんたうのたべもの-『宮沢賢治と子どもの本』展-」(~12月25日) |
<ホームページ> | |
6月3日 | 新収古書一覧」を掲載 |
11月 3日 | 「宮沢賢治ファンタジー・ワールド プレ企画」掲載 |